農業の天敵カラスから作物を守るために【後編】カラスに効く鳥害対策とは

農業の天敵カラスから作物を守るために【後編】カラスに効く鳥害対策とは

カラス対策に重要な「カラスの生態」は前編をご覧ください。

 

 

カラスに効く鳥害対策

農業の天敵カラスから作物を守るために【後編】カラスに効く鳥害対策とは|画像1

 

カラスは頭がいいため、効果的に感じられた対策グッズであっても、時間が経てばすぐに慣れてしまいます。そのため「慣れさせにくくする」ことを念頭に置き、さまざまな対策法を用意する必要があります。

まずやるべきこと

餌付けしているつもりがなくても、カラスにエサを与えている可能性があります。前編でもご紹介しましたが、カラスにはエサのこだわりがないため、なんでも食べます。ほ場の周辺にカラスのエサになりそうなものが放置されているとカラスが定着しやすくなってしまいます。

被害対象作物以外にも目を向け、ほ場の周辺環境に生ごみや飼料作物などが放置されていないか確認し、カラスのエサになりそうなものはなくしていきましょう。

物理的防除を行う

「防鳥網」で農作物を覆うのは効果的な被害防止策のひとつです。露地栽培の規模が大規模な場合には現実的ではありませんが、小規模栽培の場合には

  • 防鳥網でほ場の周囲を囲う
  • 防鳥網を作物に直接かける

などの方法が挙げられます。

防鳥網を使う際には、対象となる鳥に合わせて網目を選ぶことがポイントです。本記事の場合にはカラスが対象です。カラス対策には75mm目の網がおすすめです。またカラスはくちばしが鋭く、力が強いため、簡単に破られない丈夫な網を用意する必要があります。

防鳥網は効果的な被害防止策のひとつではありますが、鳥の侵入を防ぐためにすき間を作らない、たるませないように設置する必要があり、設置だけでなく撤収にも手間がかかります。ほ場や作物を覆うことで農作業がしにくいという難点もあります。

侵入路をつぶす

そこでカラスの生態を利用して、侵入路をつぶす方法をご紹介します。

カラスは農作物を狙う際、ほ場周辺の電線や木に止まり、ほ場の様子をよく観察してから侵入します。カラスにとって見張り台とも言える場所の周辺に対策グッズを置いたり、その場所から見えるように「テグスを張る」のが効果的な方法として知られています。

特に「極細黒テグス」によるカラス除けが効果的だと言われています

カラスは視覚が良いため、目にはっきりと見える糸状のものは避けやすいそうです。防鳥テープや釣り糸、黒色ではないテグスでもカラス除けの効果はありますが、避けられると分かれば段々と慣れていってしまいます。またカラスの羽が傷つくのを嫌がる習性を利用し、狭い間隔で張るとより効果的ですが、間隔が狭すぎると農作業に支障が及ぶことも。

しかし極細黒テグスは光の具合で見えたり見えなかったりするため、視覚の良いカラスにとっては警戒心を解きにくいようです。

極細黒テグスを使えば、狭い間隔で張る必要もなくなります。というのも、カラスは頭がいい分、想像力を働かせて「他の場所にも張り巡らされているのでは」と考えるらしいのです。テグスを張る間隔を広くとり、部分的に張らない場所をつくっても、近づきにくくなると言われています。

カラスの記憶力を利用して、ワザとカラスをほ場に誘いこみ、張っておいたテグスにぶつからせるという方法もあります。

畑にカラスのエサになりそうなものを置き、その上にカラスの目に見えにくい極細黒テグスを張ります。テグスにぶつかるという危険な目に遭ったカラスは、その場所に近寄らなくなります。

前編でもご紹介したのですが、カラスは仲間同士でコミュニケーションを取ります。そのため、この方法で一羽でもテグスにぶつかれば、他のカラスに危険な場所を知らせるため、他のカラスがテグスにぶつかっていなくても近づきにくくなるようです。

テグスの活用法はまだあります!先でも述べたように、カラスは狙った場所を観察してから侵入します。もしビニールハウスの上部などに止まって観察している姿を見つけたら、その場所にテグスを張り、止まりにくくしましょう。もちろん、テグスではなく市販の対策グッズでも構いません。観察場所をつぶすことも、カラス予防に効果的です。

追い払い用具を使う

追い払い用具を使う際には、さまざまな用具を用意し、その種類や配置場所、組み合わせなどを変えて、慣れさせないようにしましょう。追い払い用具の出しっぱなしは厳禁、過信も厳禁です。

カラスの視覚を突く用具には、

  • CD
  • 目玉模様
  • 防鳥テープ
  • かかし
  • カラスの死体(模型含む)

などが挙げられます。

なお「カラスはキラキラしたものを警戒する」と聞いたことがある人もいるかと思いますが、それは自然界にないキラキラした素材に警戒心を抱くからです。ただ、何度も申し上げる通り、カラスは頭がいいため、ずっと同じ場所にあると慣れてしまいます。「キラキラしたものを警戒する」と考え、そのまま放置してしまうと効果がなくなるため、場所や組み合わせを変えて、慣れさせないよう常に心がけましょう

カラスは瞬間的に鳴る音に敏感なため、

  • ロケット花火
  • 音が出るおもちゃ
  • 天敵(猛禽類)の鳴き声

なども追い払い用具として効果的です。

なお大きな音である必要はありません。一定の間隔で鳴る音、一定の大きさで鳴る音には慣れてしまうので、音量より、不規則に鳴ることを重視しましょう

 

参考文献

  1. 集落ぐるみで取り組む鳥獣害対策 岡山県
  2. 『現代農業 2018年05月号』, 2018年5月1日, 一般社団法人 農山漁村文化協会
  3. 白山市 農作物への鳥獣害対策
  4. 鳥獣害研究室−鳥害対策

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