害虫の発生予測に使える「積算温度」の活用法

害虫の発生予測に使える「積算温度」の活用法

農業経営において、害虫防除のタイミングを誤ることは大きなリスクとなります。たとえば発生のピークを過ぎてから薬剤を散布しても効果が薄く、収穫量や品質の低下につながります。また、必要以上に散布してしまうことはコスト増や環境負荷を招きます。

そんな病害虫の発生タイミングをある程度予測するのに役立つのが「積算温度」の利用です。積算温度を利用することで、害虫の発生時期を事前に予測し、防除作業を効率的に行うことができます。

 

 

積算温度とは

害虫の発生予測に使える「積算温度」の活用法|画像1

 

積算温度とは、ある基準温度を超えた気温を日ごとに加算した値を指します。作物の場合、可食部が成熟するには一定の日数がかかりますが、実際には日数というよりも毎日の気温の積み重ねが重要です。そのため、晴れの日が続けば、日数は少なくとも各作物の成熟に必要な温度の合計に達すれば、成熟するとされています。

なお、本記事で取り上げる害虫など、昆虫の場合は積算温度における“ある基準温度”は「発育零点」です。これは昆虫などの変温動物において、発育が停止する最低の温度のことを指します。多くの昆虫は一定の積算温度に達すると発育段階が進みます。そのことから、各発育段階の発育零点と積算温度が調べられていれば、発生時期を予測することができます。

害虫の発生予測で用いられる積算温度は「有効積算温度」と呼ばれ、日平均温度から基準温度(発育零点)を差し引いた値の積算値です。余談ですが、発育零点を考慮せずに加算した値は「単純積算温度」と呼ばれます。

発生時期の予測は、卵から成虫までの期間、卵期間、幼虫期間、さなぎ期間など、それぞれの発育段階で発育零点と有効積算温度が調べられていれば、それぞれの発育段階で行うことができる。

引用元:害虫の発育と有効積算温度の法則|害虫防除の常識

 

 

積算温度で予測できる害虫の例

害虫の発生予測に使える「積算温度」の活用法|画像2

 

以下は主要な害虫と発生予測の目安です。ただし、地域や年次で差があります。下記の表はあくまで参考値とし、農林水産省や各都道府県が公開するデータを確認してください。

害虫名 発育零点 必要積算温度(目安) 対象作物 発生時期の目安
アブラムシ類 約5〜10℃ 約120〜150℃ 野菜・果樹 春先〜秋まで断続的
コナガ 約8.5℃ 約250〜280℃ キャベツ・アブラナ科 春〜秋に多発
オオタバコガ 卵:約8.4度


幼虫・蛹:約13~14度

約400〜500℃ トマト・ピーマン等 夏期中心
カメムシ類 約12℃ 約400〜450℃ 稲・果樹 初夏〜秋

 

 

防除計画への落とし込み方

害虫の発生予測に使える「積算温度」の活用法|画像3

 

積算温度を活用した防除計画では、まず対象害虫の発育零点と必要積算温度を把握します。その上で日々の気温データを蓄積し、閾値に達する時期を予測します。たとえば、コナガの場合は発育零点は約8.5℃で必要積算温度約2250〜280℃が目安です。春先から積算を開始し、この値に近づいた段階で防除適期を迎えると判断します。

防除適期をカレンダーに落とし込み、散布計画を逆算して立てることで、無駄のない効果的な防除が可能になります。

注意点

積算温度は有効な指標ですが、万能ではありません。突発的な気温変動や長雨などの異常気象が予測を狂わせる可能性があります。また、害虫の発生には湿度や周囲の圃場環境も大きく影響します。そのため、積算温度の数値だけに頼らず、圃場観察やフェロモントラップなど他のモニタリング手法と併用することが重要です。

実際の害虫防除では、積算温度だけでなく複合的に対策に講じる必要がありますが、とはいえ積算温度の利用は、害虫防除の精度を高めるうえで低コストかつ実用的な手法といえます。
来シーズンから始める第一歩としては、スマートフォンのアプリや自治体の予察情報を利用し、主要害虫の発育零点を把握することがおすすめです。

 

参照サイト

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