近年、イネカメムシの発生は気候変動や生態系の変化により予測が困難になっています。
イネカメムシの発生が読めなくなっている?!


イネカメムシは1950年代までイネの主要な害虫でした。60年代から化学農薬の普及などを理由に被害が激減。しかし近年、再び数を増やしています。2010年以降、茨城県や三重県、滋賀県等で次々と発⽣・被害が報告され、2020年以降は関東から九州にかけて再び被害が深刻化しています。2024年には37都府県でイネカメムシが確認されています。
農研機構によると、地球温暖化の影響でイネカメムシ類の越冬死亡率が低下し、発生量が増加傾向にあります。また、イネカメムシは高温状況下で他の斑点米カメムシよりも発育が早く進むとされています。
なお、近年のイネカメムシの増加については、圃場の規模拡大や作期分散によりイネカメムシが好む餌(出穂直後の穂)が常に存在することもあげられます。加えて、イネカメムシは雑木林などで成虫として越冬し、出穂期になると直接水田へ飛来しますが、水田周辺の耕作放棄地や中干し期間の短縮が、イネカメムシの越冬場所や繁殖環境を拡大させる温床となっています。雑草の管理不足が初期発生源となるケースもあります。
気候変動やそれ以外の背景もあって、暖地では年2回以上発生するケースも増える傾向にあるとの報告もあります。こうした変化はイネカメムシ被害の予測を難しくし、防除時期の大幅なずれを引き起こします。
防除に伴うリスク
イネカメムシの農薬防除において、以下の薬剤が有効とされています。
エトフェンプロックス、ジノテフラン、エチプロールが有効。また、スルホキサフロル水和剤(エクシードフロアブル)も有効との情報あり
引用元:https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/nousan/suiden/kouon/attach/pdf/250120-2.pdf
ただし、同資料にもある通り、一部地域で発生したイネカメムシにおいて、エチプロール水和剤(キラップ)への感受性の低下が見られており、防除に用いる薬剤が特定系統に偏ると、抵抗性の進展や効力低下が懸念されます。
耕種的防除のススメ


そこで耕種的防除が推奨されています。
たとえば、上記農研機構の資料で取り上げられているのは「ゾーニング」というもの。出穂期が他の圃場に比べて早くなったり、遅くなったりしてズレると、他の圃場と出穂期がズレた圃場にイネカメムシの集中加害が起こるリスクがあります。そこで出穂期をなるべく周辺圃場と揃えることが推奨されています。この方法は集中加害を避けるだけでなく、出穂期以降の薬剤防除の効果を上げることにもつながります(防除作業の効率化や広範囲を一斉に防除することでイネカメムシが周辺環境から飛び込んでくるのを防ぐことにつながる)。
イネカメムシ対策にはこんなものも
また、技術の開発や普及が進む「スマート農業」関連技術の中にもイネカメムシ対策があります。たとえば株式会社ミライ菜園が提供するAIによる病害虫予測アプリに、イネカメムシをはじめとする病害虫防除を目的として、水稲の病害虫予測機能が追加されました。
前述した通り、イネカメムシの感受性低下といった懸念もありますが、防除策として薬剤を用いるのは有効とされています。そんな中、ドローンが薬剤散布の省力化に一役買っています。
ドローンによる農薬散布は、動力噴霧器を用いた薬剤散布よりも短い時間で散布できます。また、農薬を散布する面積の大きさにもよりますが、無人ヘリによる作業委託料金よりも低コストで行える場合があったり、農薬代や減価償却費はかかるものの無防除の場合よりも収量増加の効果があるとされています(参照元:新規需要米栽培でのドローンによるカメムシ類防除は減収を軽減する)。
参照サイト
- 不足のコメ狙うイネカメムシ 静かに潜んで夏に増加
- 近年問題となっているイネ カメムシの防除対策
- 斑点米カメムシ類の被害及び防除法(特に近年問題となっているイネカメムシを中心に)
- ここまでわかった! イネカメムシの謎生態
- 深刻化するイネカメムシ被害を受け、防除DXアプリ「TENRYO」が「コメ」のAI病害虫予測に新対応 | 株式会社ミライ菜園のプレスリリース
- 新規需要米栽培でのドローンによるカメムシ類防除は減収を軽減する
- ドローンでカメムシからコメ守る…農薬散布に活用、埼玉県が広域的な防除を後押し






























