サツマイモの品質を守る「キュアリング処理」徹底解説|効果・手順・ポイント

サツマイモの品質を守る「キュアリング処理」徹底解説|効果・手順・ポイント

日本の焼き芋はアジアで人気が高まっています。焼き芋の原料となるサツマイモは、収穫後に付いた表面の小さな傷から劣化が進みやすい作物です。そのため、輸送や貯蔵前に「キュアリング処理」を行うことで傷口をふさぎます。この工程は、糖化を促進して甘みを引き出すこともできます。

本記事では、あらためて「キュアリング」とは何か、また輸出中にサツマイモが劣化しやすい理由やサツマイモの品質保持に最適な条件とは何か、ご紹介していきます。

 

 

キュアリングとは何か

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「キュアリング(curing)」とは、いも(塊根)を適切な高温・高湿度条件下に置くことで、傷口や皮下にコルク層(傷を治す組織)を形成させ、腐敗を防止し、長期の貯蔵・輸送に耐える品質を確保する処理のことです。

多くの研究では、収穫後約4〜7日、温度は概ね26〜30°C、相対湿度は80〜90%程度の条件下にサツマイモを置くことが一般的です。こうすることで、表面の傷がかさぶた状に“コルク化”して、雑菌の侵入を防ぎ、腐りにくくします。

キュアリングという言葉の由来も“cure=傷を治す”“治癒する”という意味に由来し、まさに「収穫後の傷を治し、貯蔵を助ける」ための処理だと言えます。

また、多くの商業施設では、ヒートポンプや冷房機を装備したキュアリング貯蔵施設を用い、温度・湿度・換気を制御しながら実施されています。

 

 

なぜ品質保持に効果があるのか(生理学的メカニズム)

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次に、なぜこの処理が品質保持に効果的なのかを見ていきます。キュアリングがサツマイモの品質を保つメカニズムは、大きく3つの側面から説明できます。

  • 傷害部位の修復
  • 皮(被覆層)の強化・厚化
  • 味・風味・食味の改善など

傷害部位(切り傷・擦り傷・皮むけなど)の修復

収穫作業時に、サツマイモの塊根は多くの傷を受けています。傷があると、そこから土壌中の腐敗菌や病原菌が侵入しやすく、水分も損失しやすくなります。キュアリングは、収穫時に生じた傷の治癒を早めます。具体的には、キュアリングにより一連の生理反応が進みます。

  1. 傷害を受けた細胞表面の乾燥
  2. 下位細胞層で細胞壁が厚化
  3. 新しい「傷用被覆層」の形成

この新たな被覆層は以下のような効果を発揮します。

  • 傷口からの水分蒸散の減少
  • 傷口からの微生物侵入の抑制および、腐敗リスクの低減

皮(被覆層)の強化・厚化

キュアリング処理中、サツマイモの皮細胞は代謝的に活発となり、被覆層が強化されます。キュアリングによりサツマイモの皮が引き締まることで、皮むけや擦り傷が減り、外観品質の維持や、傷ついた表面から水分が損失するのを減らしたり、同じく傷ついた表面から貯蔵根内部の品質が劣化(変色・しわ・乾縮)するのを防いだり、といった効果が期待できます。

味・風味・食味の改善など

キュアリング中に、サツマイモの根ではデンプンが糖に変換される作用が進みます。この変化によって、収穫直後よりもキュアリング後の方が「甘み」や「焼き芋」としての食味が良くなります。

まとめると、キュアリングは

  • 傷を治す
  • 被覆層を整える
  • 味を向上させる
  • 貯蔵中の劣化を抑える

という多層的なメカニズムにより、サツマイモの品質保持・貯蔵性向上に大きく寄与しています。

 

 

キュアリング貯蔵のポイント

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キュアリング処理およびその後の貯蔵におけるポイントを整理します。

キュアリング処理の条件

温度:標準的には26〜30°C(多くは 28〜30°C)が目安です。
湿度(相対湿度 RH):80〜90%程度が望ましいとされます。湿度が低すぎると被覆層の形成が進まず、水分蒸散・病害リスクが上がります。
期間:一般的には 4〜7日 が多く紹介されています。文献によっては「4-14日」あるいは「1〜2週間」程度という家庭用における目安もあります。
換気・通気:キュアリング処理中も根は呼吸代謝を行っています。酸素不足、二酸化炭素の蓄積、熱・湿気の滞留を避けるためには、適度な換気・空気流通が重要です。

キュアリング処理後の貯蔵条件

キュアリングが終わった後は、いわば“通常の”貯蔵に移行させることが重要です。条件の目安は以下の通りです。

温度:13〜16 ℃程度。
湿度(RH):80〜90%程度。
低温障害(冷害)の回避:一般におおむね10〜13°C 以下に長時間さらされると冷害(内部褐変、風味低下、硬化やしわなど)のリスクが高まります。品種や貯蔵期間によって閾値は異なるため、貯蔵は目安として13〜16°C 前後を維持するのが安全です。

実践上の注意点

温度・湿度が適切でない場合には、皮が十分に強化されず、貯蔵時の劣化(病害・蒸散・しわ)が起きやすくなります。

キュアリング期間が長すぎたり、温度が高すぎたり、湿度が過度だったり、換気が悪いと、発芽促進・内部劣化・水分損失などのリスクが上がるため、条件設定・モニタリングが欠かせません。

 

 

現場でできる簡易キュアリングの工夫と注意点

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小規模農業・家庭栽培・直売所向けにも「簡易キュアリング」の実践法があります。

簡易的なキュアリングの手順

まずは、収穫直後の取り扱いについて。掘り上げたサツマイモは、できるだけ傷をつけないよう丁寧に扱います。土付きのまま箱やコンテナへ入れ、直射日光や風雨などから守ります。洗浄は可能なら貯蔵の直前に行うか、出荷直前に行うのが望ましいです。根の表面を濡らしたまま長く放置すると腐敗が進む恐れがあります。乾燥させてから貯蔵する、または乾いたブラッシングで土を落とすなど、被覆層の形成を妨げない扱いを心がけてください。

次にキュアリング環境の準備です。

温度目安:28〜30 ℃程度。家庭では発泡スチロール箱+電気ヒーターや灯油ヒーター+湿度調整で代用可能。※
湿度目安:80〜90%以上。湿らした布を敷く、底に水を張る、箱に蓋をして蒸気を逃がさず保湿するなど簡易工夫が有効。
換気:箱やコンテナの蓋を完全密閉せず、少し隙間を設けて空気流通を確保。根の呼吸・熱・二酸化炭素濃度上昇に配慮。
期間:約4〜10日を目安に。ただし、​​家庭では温度・湿度の管理が難しいことが多いため、温度が目標より低めの場合はキュアリング期間を延ばす(例:2週間近く)など調整が可能です。ただし「温度が高すぎる」「換気不足」「過湿」が続くと逆効果になるため、温湿度計での監視と適宜の換気は必須です。

※簡易的なキュアリングは可能ですが、温度・湿度・換気を適切にコントロールしないと逆に品質劣化を招くことがあるため注意が必要です。常に温湿度を測定し、過度な加熱や密閉による CO₂ 貯留や過湿を避けてください。

キュアリングが終わったら、温度を13〜16 ℃程度まで落とし、相対湿度80〜90%環境で貯蔵します。可能であれば暗所・風通しのいい倉庫・納屋・大きなコンテナ等を利用してください。傷んだ根・発芽した根は速やかに取り除きます。

なお、冷蔵庫(5〜10 ℃)など温度が低すぎる場所での貯蔵は、冷害のリスクがあるため注意が必要です。

 

参照元ウェブサイト

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