ドイツ紀行4-ドレスデンのホテルで

ドイツ紀行4-ドレスデンのホテルで

(Dresden Neustadt駅)

(ドレスデン城)

10/3(金)、ベルリン中央駅10:55発のDBでドレスデンに向かった。約2時間の列車の旅だった。チケットは出発20分前に買った。指定席は売り切れていて自由席を買って空いている席にすわったのだが、出発して次の駅で乗ってきた客がチケット見せた。その客は私が座っていた席の指定席をもっていたので、私はその客に席を譲り、他の空いている席を探したが、満席で席はなく、立つしかなかった。私は、一瞬、前もって指定席を購入しておけばよかったと後悔したが、座れなかった人たちは通路に座っているので私もそのまねをして乗降口に座った。この席は居心地がよかった。座ったところから車窓を通して外の景色が見えたからだ。さらに、座った先がステップになっていて足が楽で快適だった。のちに知ったことだが、10月3日は「ドイツ統一の日」の祝日で3日は金曜日だったから、4日(土)と5日(日)が3連休となっており、多くのドイツ人は旅に出たらしい。ドレスデンからベルリンに戻った日も5日だったので帰りも座れなかった。

チケットはDresden Hauptbahnhofまで買っていたが、ネットで検索すると、2つ前のDresden Neustadt駅で下車した方が予約したBest Western Plus Hotel Dresden Cityに近いことがわかり、予定を変更してDresden Neustadt駅で下車した。ドレスデンはエルベ川の谷間に位置するザクセン州の州都である。第2次世界大戦では徹底した爆撃にあい市内中心部はほぼ灰燼に帰したが、王妃の宮殿(Taschenbergpalais)は再建され、現在、高級ホテルに生まれ変わっている。また、破壊された聖母教会の再建には世界中から182億円もの寄付が集まり2005年に再建された。

ホテルにチェックイン後、エルベ川に架かっているアルベルト橋を渡り、川沿いの道を進み旧市街地に向かったのだが、橋の途中でスマホの地図で道を確認していると、ドイツ人の女性が声をかけてきて、親切にも市街地への行き方を教えてくれた。教えてくれた道を進み、尖塔がある市街地に着き、重厚な建物が広場を囲むように立ち並ぶ中をゆっくりと散策した。途中、観光客が少ない路地を選びながら歩いた。まるで中世の時代の中にいるような気がした。くるくると路地を周ると記憶に残る広場に出た。少し、喉と小腹が空いたので、エルベ川に戻り、川沿いにあるドイツ料理Radeberger Spezialausschankに入りビールと名物のカリーヴルスト(カレー味のソーセージ)を注文した。この店のビールとカリーヴルストは旨かった。翌日は、ツヴィンガー宮殿、聖母教会、マルチンルター像などを見学し、昨日入ったRadeberger Spezialausschankで食事をしてホテルに戻った。

ホテルの前でタバコを吸った。私はタバコを普段は吸わないが、ホテルの前でたばこを吸っているドイツ人が多かったので、面白い話がきけるのではないかと考えたからだ。
一人の大柄なドイツ人らしい男が煙草を吸っていた。
「どこから来たの?」と聞いたら、「ドイツ」だと真顔で答えた。私は「どの国から」と聞いたつもりだったのだが、彼の「ドイツ」との真顔の表情から、なぜか間違った質問をしたような変な気持ちになった。
「ドイツのどこ」と聞くと、
「カッセルから来た、ワイフと一緒だ」
カッセルはドレスデンの西350㎞のところにある街だ。
「そうですね、ドイツ統一の日で3連休ですから」
「そうだ。キャラバンできた。仲間とバーベキューをやったんだ」
「キャラバン?」と聞くと、
ホテルの前の駐車場のキャンピングカーを指さした。
おそらく、何人かの仲間とキャンピングカーで旅行しているのだと思った。彼は英語がほとんど分からなかったが、不思議なことに、何とか上のようなことが分かった。
「明日、カッセルに戻り、明後日から仕事だ」
と言った。
 当たり前のことだけれど、このドイツ人も3連休だったので、妻と友人たちと1泊2日のドライブ旅行に出かけたのに違いなかった。明日は、西に350㎞走り夕方に自宅に戻り、明後日から仕事に復帰するのに違いなった。私は国が変わっても人間は、朝起きて、仕事に行き、働き、家に戻る、休みが続けば旅に出ると言う生活の中で暮らしていることを再認識し、このドイツ人に親しみを感じた。
部屋に戻るために、一緒のエレベータにのったら、彼から握手された。しっかした手だった。
「Have a Nice day」と彼は言った。彼は旅先で日本人の私と気持ちが繋がったのが嬉しかったに違いなかった。同じ感覚だった。私は「You too」と答えた。それで別れた。

(ドレスデン城夜景)

(深夜のトラム)

部屋に戻ったら、フト、「ドレスデンの夜景はビューティフルだ」と言った彼のことばを思い出し、ホテルの近くのエルベ川に向った。橋の上から、川の反対側のツヴィンガー宮殿やドレスデン城あたりの夜景が見えた。橋の下の川辺には若者たちがビールを飲みながら集まっていた。酒が回り騒いでいた。ドイツ人の若者も日本人の若者たちと同じだと思った。若者たちから目を離した。トラムが淡い光の中を通り過ぎて行った。

 

【プロフィール】
稲田宗一郎(いなだ そういちろう)
千葉県生まれ。小説『夕焼け雲』が2015年内田康夫ミステリー大賞、および、小説『したたかな奴』が第15回湯河原文学賞に入選し、小説家としての活動を始める。2016年ルーラル小説『撤退田圃』、2017年ポリティカル小説『したたかな奴』を月刊誌へ連載。小説『錯覚の権力者たちー狙われた農協』、『浮島のオアシス』、『A Stairway to a Dream』、『やさしさの行方』、『防人の詩』他多数発表。2020年から「林に棲む」のエッセイを稲田宗一郎公式HP(http://www.inadasoichiro.com/)で開始する。

 

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