日本の主食用米の消費量は、人口減少や食生活の多様化によって年々減少傾向にあります。総務省などの統計によれば、国民1人当たりの年間米消費量は1962年の118.3kgをピークに長期的に減少しており、近年は約50kg前後とピーク時の半分程度にまで落ちています。かつて主食の中心にあった米は、パンや麺類、肉や乳製品といった多様な食材に押され、日常食の中で存在感を失いつつあります。
近年、米価は長期的に変動しており、2019–2021年には価格下落が経営を圧迫した時期がありました。2023年以降は異常気象や需給逼迫の影響により価格が急騰する局面も起きていますが、コスト削減や大規模化による効率化だけでは収益を安定させるのは難しくなってきたといえます。
こうした背景から、注目を集めるのが「複合経営」です。これは米を生産物の基盤としつつも、他の作物や加工・輸出といった多様な収益源を組み合わせる方法です。
複合経営の実例

福井県では、農地の大規模化と効率化が進む一方、稲作だけに依存しない取り組みも拡大しています。たとえば坂井市の農園では稲作に加え、閑散期にはネギ・ブロッコリー等の栽培も行っています。
一方、北海道では輸出市場を意識。東川町では大規模化計画を進め、JAひがしかわは『ひがしかわライスターミナル』を設立し輸出対応の精米・長期貯蔵設備を導入しています。ここには輸出に特化した精米工場や長期保管施設が整備され、鮮度を維持したまま海外市場へ安定供給できる体制が整っています。
多角化がもたらす効果
米価に依存せず、複数の収益源を組み合わせることで経営リスクを分散できます。特に高収益野菜や輸出用米、加工食品との組み合わせが効果的です。
また、複合経営は単に農家の収益を安定させるだけではありません。稲作の閑散期に他作物の生産や加工業務を組み込むことで、年間を通じた雇用の安定につながります。地域雇用を通年で維持できれば、労働者に安定した働き方を提供できるだけでなく、担い手不足の解消にも結びつきます。
多角化に伴う課題
とはいえ、多角化には課題もあります。
まず、作業スケジュールが複雑化します。稲作と他作物の生産時期が重なってしまうと、かえって作業負担が増加してしまうので、適切な作付計画と労働力配置が不可欠です。新たな販路を開拓するなどの労力も増えます。
それから、農家単独で多角化を進めるのは難しく、地域や組織との協働が成否を分けます。北海道の輸出用精米工場の事例のように、公共投資や協同組織の支援が重要です。行政や農協の指導、商社のネットワークを活用することは大きな支えとなります。
農業経営の持続性を高める道の一つとして

主食用米の消費が減少する中、米を基盤に持ちながらも、野菜・果樹・加工食品・輸出などを組み合わせることで、収益安定が期待されます。新規就農者や中規模農家にとっても、この戦略は挑戦可能な道です。規模拡大を前提とせずとも、閑散期の活用や新たな販路開拓から始められるためです。今後の「米+〇〇」生産体制にも注目です。
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