かつて養蚕業を支えてきた桑畑は、産業構造の変化とともに各地で姿を消してきました。一方で現在、健康志向の高まりや機能性飲料市場の拡大を背景に、桑を原料とする「桑茶」が新たな農業ビジネスとして注目を集めています。
桑葉には食物繊維やポリフェノールなどが含まれ、ノンカフェイン飲料としての需要も高いことから、日常的な健康飲料としての市場が形成されつつあります。
また、単なる農産物の出荷にとどまらず、「作物+加工+物語」を組み合わせて収益を生む6次産業化の流れの中で、桑茶は比較的小規模から始めやすい作物として評価されています。遊休農地の活用や地域資源の再評価という観点からも、桑茶は現代農業における一つの有力な選択肢といえます。
農業ビジネスの一案としての「桑茶」


桑は多年生作物であり、一度定植すれば数年から十数年にわたって収穫が可能です。品種や管理方法にもよりますが、年に複数回の葉の収穫ができ、果樹と比べると初期投資や管理負荷が比較的低い点が特徴です。桑は環境適応性が高く、傾斜地や中山間地域でも栽培可能とされています。遊休桑園の活用や地域での産業化が期待される旨も公的機関資料で述べられています(ただし適地性は品種・仕立て・管理で変わる点に注意が必要です)。
さらに、桑葉は乾燥・焙煎といった比較的シンプルな工程で茶葉として加工でき、保存性にも優れています。生葉出荷に比べ、乾燥加工を行うことで付加価値が高まり、在庫管理もしやすくなります。
他作物と比較した場合、桑茶は単価そのものが極端に高いわけではありませんが、「養蚕の歴史」「地域の記憶」「健康志向」といったストーリーを付加しやすい点が強みです。このストーリー性が、直販やECとの相性を高め、農業ビジネスとしての成立を後押ししています。
桑茶生産のモデルケース
ある地域では、かつて養蚕が盛んだった集落に残された桑畑を地域資源として再評価し、桑茶の生産に取り組む動きが始まりました。高齢化により放置されていた桑を剪定し直し、まずは小規模に乾燥葉の生産からスタート。初期段階では加工を外部業者に委託し、農家自身は栽培と選別に集中しました。
販路は地元直売所から始め、次第に観光施設やイベント出店へと拡大。商品の背景として「かつての養蚕文化」や「地域の再生」という物語を丁寧に伝えたことで、価格競争に巻き込まれにくい販売が実現しました。
別の事例モデルでは、家族経営規模の農家がEC販売を中心に桑茶を展開しています。こちらでは小型乾燥機を導入し、加工を内製化。初期投資は必要でしたが、加工賃を抑えられること、試作や改良を柔軟に行えることがメリットとなりました。
いずれのケースでも「いきなり大規模化しない」「販売先を限定して始める」という慎重な事業設計が共通しています。
売れる商品にするための工夫


生葉出荷か乾燥加工まで行うか
桑茶ビジネスにおける最初の分岐点は、生葉出荷にとどめるか、乾燥加工まで行うかという判断です。生葉出荷は初期投資が少ない反面、販路が限定され、価格決定権を持ちにくい傾向があります。一方、乾燥加工まで行えば、商品としての自由度が高まり、直販やEC展開が可能になります。
有機・無農薬表示について
有機・無農薬表示は、「健康志向」等のストーリー性を付加するうえで有効といえます。しかし、「有機JAS認証」を取得する場合にはコストと手間が発生します。必ずしも認証取得が必須ではなく、「栽培期間中農薬不使用」といった表示で十分な場合もあり、ターゲット顧客を明確にした上で判断することが求められます。
なお、桑は栽培されてきた歴史が長く技術資料も蓄積しているうえ、比較的病害虫に強い作物ではありますが、地域や管理条件によっては病害虫対策が必要になります。有機・特別栽培等を検討する場合は、実際の防除計画と記録を前提に判断することが重要です。
売り出し方について
桑茶を商品として成立させるには、味や品質だけでなく、パッケージやネーミングの工夫が欠かせません。シンプルで自然志向を感じさせるデザインや、地域名を前面に出したネーミングは、購入動機の形成に寄与します。
また、「誰に、いつ、どう飲んでもらうか」を具体的に設計することも重要です。例えば、カフェインを避けたい高齢者や妊娠期の女性、就寝前のリラックスタイムといった利用シーンを想定することで、訴求ポイントが明確になります。
桑茶は観光施設や直売所との相性が良く、試飲提供によって味を体験してもらえる点も強みです。EC販売では、生産背景や栽培風景を伝えるコンテンツを充実させることで、価格以上の価値を感じてもらいやすくなります。
まとめ


桑茶は、多年生で管理しやすく、小規模からでも始められる点で、個人経営や家族経営の農家に向いた作物です。加工や販売を段階的に拡張できるため、失敗リスクを抑えながら事業を育てることができます。
向いているのは、遊休農地を活用したい農家、直販や6次産業化に関心のある農業者、そして地域資源を物語として伝えたい人といえます。まずは試験的な栽培と小ロット販売から始め、反応を見ながら規模や加工工程を調整することが大切です。
参照元ウェブサイト






























