新規就農者や兼業農家におすすめ!?山椒栽培のメリット・デメリット、収益を上げるポイント

新規就農者や兼業農家におすすめ!?山椒栽培のメリット・デメリット、収益を上げるポイント

古来より日本で親しまれてきた「山椒」は、近年「和製スパイス」として海外からも注目を集めています。そんな山椒は需要が高まる一方で、国内では供給不足が続いており、価格が上昇しています。

本記事ではこのような背景から注目される山椒栽培についてご紹介していきます。

 

 

山椒とは

新規就農者や兼業農家におすすめ!?山椒栽培のメリット・デメリット、収益を上げるポイント|画像1

 

山椒は独特の爽やかな香りとしびれるような辛味が特徴で、和食をはじめとする多くの料理に香辛料として利用されてきました。

ミカン科サンショウ属の落葉低木である山椒は雌雄異株で、雌木と雄木に分かれています。一般的に「実山椒」と呼ばれるのは雌木で、果実が収穫できます。一方、「花山椒」と呼ばれる雄木は果実はつきませんが、春に咲く香り高い花が高級食材として流通しています。

山椒の原産地は東アジアで、日本では北海道南部から九州にかけての山地に自生しており、水はけのよい傾斜地などに見られます。

捨てるところのない植物

山椒は非常に用途が広く、「木の芽」として若葉を利用したり、「花山椒」として花を食材に使ったり、さらには「実山椒」として果実を生果や乾果として活用します。幹もすりこぎや箸、杖などに加工され、まさに“捨てるところのない植物”といえます。

そんな山椒の収穫は年を通して行われ、春には若芽や花、初夏には青い未熟果(生果)、夏には熟して乾燥させた乾果が収穫されます。生果は佃煮や漬物に、乾果は香辛料や漢方薬として用いられています。七味唐辛子の原材料の一つとしてもよく知られています。

栽培の特長と適地

そんな山椒は温暖な気候を好むため、地域によっては露地栽培が難しい場合もあります。

しかし気候風土が適している地域では、生産が盛んに行われています。たとえば京都府京丹波町和知地区では田植えの作業が終わる5月下旬から6月中旬の間に収穫できるため、米作りの合間を活用した効率的な作業スケジュールが組まれています。

また、栗や他の果樹と比べても剪定や施肥の手間が少ないとされています。

栽培のコツと留意点

まず、前提条件として山椒は雌雄異株であるため、実を収穫するには雌木と雄木の混植が必要です。

また山椒の経済的な寿命はおおよそ20年とされており、苗木から栽培して収穫できるまでには6年ほどかかります。具体的には、種まきから苗作りまでに1年、移植後1年、さらに接ぎ木をしてから1年、その後4年でようやく収穫可能な高さに育ちます。接ぎ木後の木の寿命は15年ほどが平均で、長寿命化を図るには間隔を広げて植える必要があります。

気象条件により起こる生理的障害

山椒は霜に弱いため、寒冷紗などを使った防寒対策が必要です。環境の変化に敏感な植物でもあるので、乾湿害や凍害、寒害にも注意が必要です。

山椒は乾燥と真夏の強い日差しにも弱いです。強い直射日光を浴びると実が硬くなり、粒が小さくなってしまうので注意してください。乾燥や高温対策には敷きワラや適時の潅水などで土壌の湿度を適切に保つことが有効です。

剪定について

山椒は根が浅くデリケートな性質を持つため、剪定によるダメージが懸念されてきました。しかし、近年では生育促進の手段として注目されており、枝葉と根のバランスを整えることで、木の寿命や実の品質を保つことが可能になります。

剪定は冬の12月下旬から2月下旬に行い、主枝の2〜3割を根元から10〜15cm程度の位置で切るのが基本です。ただし、剪定を行うと当年の収量は2〜3割減少するため、毎年新たに苗木を5本ほど植えるなど、長期的な更新管理が必要です。

栽培上の留意点

前述した通り、山椒は収穫までに時間がかかります。苗木を植えてから実を本格的に収穫できるようになるまでに時間がかかり、その間はほとんど収益が見込めないため、初期投資と長期的な視点を持った経営が必要です。

加えて、収穫の手間が大きい点にも注意が必要です。というのも、実の収穫適期は約10日間と短く、短い期間にすべてを収穫しなければなりません。地域によってはこの短い収穫期が田植えと重なる地域もあります。

なお、実山椒の場合、1房あたりわずか1グラムほどの重さしかなく、1人で1時間に収穫できるのは1〜2キロ程度です。

 

 

山椒栽培で稼ぐなら

新規就農者や兼業農家におすすめ!?山椒栽培のメリット・デメリット、収益を上げるポイント|画像2

 

需要の高まりから注目を集める山椒ですが、前述したように、収穫に時間がかかったり、労力を必要としたりといった留意点もあります。

利益を上げるためには「6次産業化」が推奨されます。山椒の栽培だけでなく、その後の加工と販売も手がけ、付加価値をつけて収益の最大化を図ります。たとえば収穫した実山椒を佃煮や粉山椒として販売すれば、短い期間の収穫時期に依存せず、年間を通じた安定した収入源の確保につながります。

 

参照サイト

農作物カテゴリの最新記事