作物を栽培する前には、トラクターや耕うん機などを使って圃場の土を整えます。このとき行われる代表的な作業が「耕起」「砕土」です。これらは一連の作業として続けて行われることが多く、使用する農業機械によっては複数の作業を同時に進められるため、それぞれの違いが分かりにくいかもしれません。
耕起・砕土の違いとは?

耕起・砕土は、いずれも作物を栽培するために圃場を準備する作業です。
簡単に整理すると、耕起は土を掘り起こす作業、砕土は掘り起こした土の塊を細かくする作業です。なお、「整地」は地表面の凹凸をならして播種や定植ができる状態に仕上げる作業です。
耕起から砕土、整地までをまとめて「耕うん」と呼ぶこともあります。
耕起とは
耕起とは、すきやプラウ、ロータリー、くわなどを使い、圃場の土を掘り起こす作業です。土を上下に反転させる作業は、反転耕や天地返しなどと呼ばれます。
耕起では、硬くなった作土をほぐし、土の中に空気が入りやすい状態をつくります。また、前作の残さや雑草、堆肥、石灰質資材、肥料などを土中へ混ぜ込む目的でも行われます。
土壌中に大きな孔隙ができれば、排水性や通気性が改善する場合があります。古い情報にはなりますが、農研機構のある研究では、水田でチゼルプラウによる荒起こしを行うと、耕起された部分で土塊間の隙間が大きくなり、通気性や排水性が向上することで、ロータリー耕起や未耕起よりも土壌水分が早く低下したと報告されています。
ただし、耕起を行えば、どのような圃場でも必ず土壌環境が改善するわけではありません。土壌が過湿な状態で作業すると、土を練り固めたり、農業機械の走行によって作土の下に硬い層をつくったりする可能性があります。
また、耕起は土壌構造や土壌生物の環境を変化させる面もあります。そのため、土壌をできるだけ動かさない不耕起栽培や、必要な部分だけを耕す部分耕・省耕起栽培も行われています。耕起の有無によって作物の根の張り方や養分吸収、収量への影響が異なることも報告されており、作物や作期、土壌条件に応じた選択が必要です。
砕土とは
砕土とは、耕起によってできた大きな土の塊を、ロータリーやハローなどを使って細かく砕く作業です。
耕起した直後の圃場には、大きさの異なる土塊が残ります。大きな土塊が多いまま播種すると、種子を一定の深さに落としにくくなり、覆土の厚さにもばらつきが生じます。また、発芽した芽や根が土塊に阻まれ、出芽が不安定になることもあります。
砕土の程度を表す指標には「砕土率」があります。例えば、一定の大きさ以下の土塊が、土全体にどの程度含まれているかによって示されます(作物や播種機、土壌条件によって必要な値は異なります)。
農林水産省東北農政局がまとめた大豆作の事例では、土壌水分が高い状態で耕起した圃場で砕土が悪くなり、苗立ちや土壌処理除草剤の効果が十分に得られなかったとされています。(同資料では、作業可能な圃場条件を見極め、無理に耕起しないことが教訓として示されています。)
一方で、土を細かくすればするほどよいわけではありません。土を過度に細かくすると、雨によって細かな土粒子が移動し、地表面に硬い膜状の層であるクラストができることがあります。クラストが形成されると、芽が地表に出にくくなるほか、雨水が浸透しにくくなり、通気性が低下する場合があります。
整地とは
耕起・砕土と合わせて「耕うん」と呼ばれることもある「整地」とは、耕起・砕土後の圃場表面をならし、播種や定植を行いやすい状態に仕上げる作業です。レーザーレベラーやハロー、ローラーなどが使用されます。
圃場に高低差や大きな凹凸が残っていると、播種機の位置が上下し、種子を落とす深さが一定になりません。浅く播かれた種子は乾燥しやすく、深く播かれた種子は地表まで芽を伸ばすために時間がかかります。播種深度をそろえ、出芽を均一にするためには、平らな播種床をつくることが重要です。
また、均平な圃場では、播種機や移植機を安定して走行させやすくなります。水田や大区画圃場では、均平性が水管理にも影響します。圃場内に高低差があると、低い場所に水がたまり、高い場所には水が届きにくくなるためです。
まとめ

耕起・砕土・整地に共通する大きな目的は、作物の種子や苗が生育しやすく、農業機械による作業を行いやすい圃場をつくることです。
耕起は土を掘り起こす作業、砕土は土の塊を細かくする作業、整地は圃場表面をならして播種や定植ができる状態に仕上げる作業です。
ただし、適切な作業方法は圃場ごとに異なります。粘土質の土壌と砂質の土壌では砕け方や乾き方が異なり、同じ土壌でも水分状態によって仕上がりが変わります。特に土壌水分が高いときの耕うんは、土を練り固める原因になるため、機械が走行できるかだけでなく、土が適度にほぐれる状態かを確認することが大切です。
また、耕起・砕土・整地を行ってから播種までに長い時間が空くと、降雨によって圃場が再び過湿になったり、細かくした土が硬化したりすることがある点に注意が必要です。農林水産省の資料では、圃場全体を先に耕起したため、その後の降雨によって播種が遅れた事例が紹介されています。同資料では、圃場を複数の区域に分け、それぞれの区域で耕起後すみやかに播種する方法が改善策として示されています。
参考文献:生井兵治・相馬暁・上松信義編著「農学基礎セミナー 新版 農業の基礎」(農山漁村文化協会、2003年)
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