土壌診断では何を見る?土壌診断の目的や土の採り方、pH・ECなど

土壌診断では何を見る?土壌診断の目的や土の採り方、pH・ECなど

作物の生育が悪いとき、肥料が足りないように思えるときもあるかもしれませんが、土壌中の養分が不足しているとは限りません。たとえば、長年の施肥によって、リン酸やカリなどが必要以上に蓄積している圃場もあるからです。

そこで役立つのが土壌診断です。土壌診断では、土壌のpHやEC、養分量などを測定し、その結果を施肥や土壌改良に生かします。

 

 

そもそも土壌診断とは

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土壌診断とは、圃場から採取した土を分析し、土壌の性質や養分の蓄積状況を調べることです。

生井兵治・相馬暁・上松信義編著『農学基礎セミナー 新版 農業の基礎』(農山漁村文化協会、2003年)では、「現在の施肥や土壌管理について、まず土壌診断によって土壌養分の蓄積状況(肥沃度)を判定し、その結果に応じて肥料や土壌改良資材の施用量を決める」と説明されています。

よって土壌診断は、養分が少ない圃場に肥料を補うことだけではなく、すでに十分な養分が蓄積している場合には、施肥量を減らす判断にも利用します。

農研機構の資料によると、長年にわたって土づくりや施肥を続けてきた水田のなかには、リン酸やカリウムがすでに十分蓄積している圃場があります。そのため、土壌診断で養分量を確認し、一定の基準を満たしている場合には、リン酸肥料やカリ肥料を減らせるとする指針が示されています。

適切な減肥は、肥料費の削減だけでなく、養分の過剰蓄積や圃場外への流出を抑えることにもつながります。

土壌診断の前に重要な「土の採り方」

分析結果を正しく利用するには、採土方法が重要です。同じ圃場内でも、土壌の状態は均一ではありません。肥料を多く施した場所や、水がたまりやすい場所、作物の生育が悪い場所などでは、養分量や水分状態が異なる可能性があります。

そのため、一般的には圃場内の複数地点から土を採り、それらをよく混ぜて分析用の試料とします。

圃場全体の状態を調べる場合は、肥料が局所的に集中した場所や出入口、水たまりなど、圃場を代表しない場所を避けて採土し、生育不良地点の原因を調べたい場合は、正常に生育している場所とは混ぜず、別々に採取して比較します。毎年の変化を比較する場合には、採取する場所、深さ、時期などの条件をできるだけそろえることも大切です。

採土条件が違えば、数値の変化が土壌管理によるものなのか、採り方の違いによるものなのか判断しにくくなります。

 

 

主要な土壌診断の指標

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pH

pHは、土壌が酸性側にあるか、アルカリ性側にあるかを示す指標です。

多くの作物には、それぞれ生育に適したpHの範囲があります。pHが低すぎる(土壌の酸性が強くなる)と、土壌中のアルミニウムが植物に影響を与えやすい形で溶け出すことがあります。このアルミニウムは根の先端に集まり、根の細胞が伸びたり分裂したりする働きを妨げます。その結果、根が十分に伸びず、水や養分を吸収できる範囲が狭くなるため、作物の生育が抑えられることがあります。一方、pHが高すぎる場合にも、鉄やマンガンなどの微量要素を利用しにくくなることがあります。

pHが低い場合は、石灰質資材による酸性矯正を検討します。ただし、必要な資材量は現在のpHだけでは決まりません。土壌の種類や土性、腐植含量などによって、pHの変化しやすさが異なるためです。また、作物ごとに適正範囲が異なるため、単純に「pHを高く(低く)すればよい」と考えないことも重要です。

EC

ECは電気伝導度のことで、土壌中に水に溶けた塩類がどの程度存在するかを知る手がかりになります。

一般に、肥料成分などの塩類が多いほど、ECは高くなります。ECが高い圃場では、前作までに施した肥料が多く残っている可能性があるため、次作の施肥量を慎重に検討する必要があります。

特に、雨水による養分の流亡が少ない施設栽培では、土壌中に塩類が蓄積しやすくなります。濃度が高くなりすぎると、根が水を吸収しにくくなり、発芽不良や根傷み、生育抑制などにつながる場合があります。

ただし、ECからわかるのは塩類全体のおおよその量です。ECが高いからといって、窒素、カリ、石灰などのうち、どの成分が多いかまでは判断できません。他の分析項目と併せて確認します。

窒素

窒素は、葉や茎の生育に大きく関わる養分です。不足すると葉色が薄くなり、生育が停滞しやすくなります。一方、多すぎると茎葉ばかりが旺盛に育ち、軟弱化や倒伏、病害の増加、着果や成熟の遅れなどにつながる場合があります。

土壌中の窒素を考える際には、測定時点で存在する硝酸態窒素やアンモニウム態窒素だけでなく、土壌有機物などから栽培期間中に無機化して供給される窒素も考慮する必要があります(ただし、重視する窒素の形態や診断方法は、畑、水田、施設などの栽培条件によって異なります)。

堆肥や緑肥、作物残さに含まれる窒素は、施用後すぐにすべて利用されるわけではありません。微生物による分解に伴って徐々に無機化し、作物が吸収できる形になります。そのため、前作の施肥量、堆肥の種類や施用量、作物残さの還元状況なども、窒素施肥を判断するための重要な情報です。

有効態リン酸

土壌診断で測定する有効態リン酸は、土壌中に存在するリン酸のうち、作物が比較的利用しやすい部分を評価したものです。

リン酸は、比較的土壌に蓄積しやすい養分であり、根の発達や花芽形成、結実などに関わります。しかし、土壌中では鉄やアルミニウムなどと結びつき、作物が吸収しにくい状態になることがあります。特に黒ボク土ではリン酸が固定されやすいため、土壌のリン酸固定力を示すリン酸吸収係数なども考慮して施用量を決めます。

CEC

CECは陽イオン交換容量と呼ばれ、土壌がカルシウム、マグネシウム、カリウムなどの陽イオンを保持できる容量を示します。

CECが小さい土壌では、カルシウム、マグネシウム、カリウム、アンモニウムなどの陽イオンを保持できる量が少ないため、これらを一度に多く施すと、作物に利用されないまま流亡する可能性があります。

一方、粘土や腐植が多くCECが大きい土壌では、比較的多くの陽イオンを保持できます。ただし、硝酸態窒素などの「陰イオン」の保持されやすさは、CECだけでは判断できません。

腐植や土壌の物理性も確認する

作物の生育を左右するのは化学性だけではありません。農林水産省が掲載する土壌診断の手引きでは、pH、EC、交換性塩基、CEC、リン酸、窒素に加え、腐植、土壌の透水性や保水性も診断項目として取り上げられています。

腐植は、土壌中の動植物由来の有機物が分解・変化したものです。養分を保持する力や団粒構造の形成、保水性などに関係します。

(ただし、腐植が多いからといって、すべての養分が十分にあるとは限りません。また、堆肥を施用する場合は、有機物の補給効果だけでなく、堆肥に含まれる窒素、リン酸、カリなども考慮します。)

また、土壌が硬く締まっている、作土が浅い、水が抜けないといった状態では、土壌中に養分があっても根が十分に伸びず、吸収できないことがあるため、生育不良の原因を調べる場合は、排水性、土の硬さ、根の状態なども確認する必要があります。

 

 

まとめ

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土壌診断結果には、一般に適正値や基準値が示されます。しかし、すべての作物に共通する一つの適正値があるわけではありません。必要な養分量や適したpHは、作物、作型、土壌の種類、露地・施設の違いなどによって変わります。

また、土壌診断は採土した時点の土壌状態を示すものです。分析値が適正でも、低温や乾燥、過湿、根傷み、病害などによって養分吸収が妨げられている場合があります。

診断表だけを見るのではなく、作物の生育、葉色、根の状態、収量、施肥履歴などと併せて判断することが大切です。

 

参考文献:生井兵治・相馬暁・上松信義編著『農学基礎セミナー 新版 農業の基礎』農山漁村文化協会、2003年

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