大雨の前後、農作物を守るには?被害を抑えるための管理方法

大雨の前後、農作物を守るには?被害を抑えるための管理方法

昨今、日本各地で数年に1度しか起こらないような激しい短時間の大雨が観測・記録されています。大雨による被害はさまざまですが、農業分野においては、作物の浸水・冠水、土壌中の酸素不足による根傷み、肥料や農薬の流出、病害の増加、農業施設の浸水など、これまた数多くの影響があります。

被害を抑えるには、大雨が降る前に排水経路や施設を点検し、雨がやんだ後は安全を確保したうえで、できるだけ早く停滞水を取り除くことが重要です。

本記事では、大雨前後に共通して行いたい対策について紹介していきます。

 

 

人命を最優先に

大雨の前後、農作物を守るには?被害を抑えるための管理方法|画像1

 

雨がやんだ後、できるだけ早く停滞水を取り除くことが重要、と前述しましたが、大雨の最中や直後に見回りを行ってはいけません。大雨が予想されると、排水路や施設の状態が気になり、ほ場を確認したくなるかもしれませんが、大雨の最中に見回りを行うと、増水した河川や農業用水路への転落、土砂崩れ、道路の冠水などに巻き込まれる危険があります。

ほ場や農業用施設の見回りは、大雨がおさまり、安全が確認されてから行います。雨がやんだ後も、河川や水路の水位が高い場合や、畦畔・法面が崩れやすくなっている場合は、危険な場所に近づいてはいけません。

災害級の大雨が降る中では、農作物や農業機械を守ることよりも、作業者自身の安全を優先することが大前提です。

 

 

大雨前の対策とは

大雨の前後、農作物を守るには?被害を抑えるための管理方法|画像2

 

ほ場周辺と内部の排水対策が、大雨前の対策の基本です。排水溝に雑草、落ち葉、土砂などが詰まっていると、雨水が流れにくくなり、ほ場内に水がたまりやすくなります。排水溝や排水口を確認し、必要に応じて清掃や掘り直しを行います。

過去に浸水・冠水したことがあるほ場や、周囲より低い場所は重点的に点検します。ほ場内の水を外へ出すだけでなく、道路や隣接する水田などから水が流れ込まないか確認することも大切です。

農業機械や器具、肥料、農薬、資材などは、浸水や流出のおそれがない格納庫や高い場所へ移動します。ただし、前述した通り、すでに雨や風が強まっている場合は移動作業を行わず、安全確保を優先してください。

大雨によって薬剤が流される可能性があるため、降雨直前の農薬散布は原則として避けます。防除が必要な場合は、天気予報と薬剤の使用条件を確認し、散布後に必要な時間を確保できるか検討します。

 

 

大雨後の対策とは

大雨の前後、農作物を守るには?被害を抑えるための管理方法|画像3

 

ほ場が浸水・冠水した場合は、安全を確認してから排水溝を手直しし、必要に応じて明きょや排水ポンプを使って停滞水を排出します。

湛水時間を短くすることはとても重要です。土壌中には水だけでなく空気も含まれていますが、土の隙間が水で満たされてしまうと根に届く酸素が不足してしまいます。そうなると根の呼吸や養分吸収が妨げられ、生育不良や根腐れにつながります。そのため、できる限り迅速に停滞水を排出する必要があります。

ただし、中耕や補修などの作業は、土壌水分と地盤の状態を確認してから行ってください。その理由は、水が引いた直後のほ場は土が軟らかいため、農業機械が沈んでしまったり、土壌を強く締め固めたりするおそれがあるからです。

そのほか、マルチ栽培ではマルチが土壌からの水分蒸発を妨げる場合があります。過湿が続くときは、マルチを一時的に除去する、畝肩部分をめくるなどして乾燥と通気を促します。

泥の除去と病害の確認

浸水した作物では、葉や茎に泥が付着することがあります。泥が乾いて固まると、光合成や気孔を通したガス交換を妨げるほか、病原菌を含んだ泥水が傷口に付着している可能性もあります。可能であれば、泥が乾く前にきれいな水で洗い流します。

強い雨や流入物によって茎葉が傷ついた場合は、傷口から病原菌が侵入しやすくなります。また、大雨後は湿度が高く、病害が広がりやすい環境です。病斑や腐敗などがないか観察し、地域の防除情報を確認したうえで対応します。

肥料は生育を確認してから補う

大雨が続くと、肥料成分がほ場外へ流出したり、土壌中の深い位置へ移動したりすることがあります。一方、根傷みが激しい状態では、肥料を施しても十分に吸収できません。過剰な追肥は、かえって根に負担をかける可能性があります。

まずは葉色、新葉の伸び、しおれ、根の状態などを確認します。草勢の低下が見られる場合は、作物の生育段階や地域の施肥基準に応じて、少量の追肥、液肥、葉面散布などを検討します。

 

 

作物別大雨対策

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水稲

水稲は冠水時間を短くし、その後の生育を観察します。

水稲が冠水した場合は、できるだけ早く排水し、少なくとも葉先が水面から出る状態を目指します。排水後は、水田内の古い水を新しい用水と入れ替え、その後は生育段階に応じて浅水管理や間断かん水へ移行します。

深水状態が長く続くと、稲が軟弱に伸びるほか、スクミリンゴガイによる被害が増える可能性があります。除草剤散布時などを除き、必要以上に深い水を維持しないことが大切です。

除草剤の散布後に大雨で水があふれた場合は、成分が流出して効果が低下している可能性があります。すぐに再散布するのではなく、雑草の発生状況と葉齢を確認した後、登録のある中・後期除草剤などによる対応を検討します。

浸水・冠水後は稲体が弱り、いもち病などが発生しやすくなることがあります。また、一時的に葉色が濃くなる場合もあるため、通常どおりに穂肥を施すのではなく、生育と葉色を確認して施用量を調整してください。

大豆

大豆は湿害を防ぐ排水対策が重要です。

大豆は、特に出芽期などに過湿の影響を受けやすい作物です。大雨前には、ほ場周囲の排水溝とほ場内の明きょを排水口へつなぎ、雨水が速やかに流れる状態をつくります。

播種前に雨が続いた場合は、土壌が過湿のまま無理に耕起・播種すると、土を練り返し、出芽しにくい環境をつくるおそれがあります。排水を進め、機械作業が可能な土壌水分になってから播種します。地域や作型によっては、畝立て播種や一工程播種も湿害軽減に役立ちます。

冠水した場合は、排水溝の手直しやポンプによって早期排水を図ります。排水後の中耕・培土や追肥については、生育段階、冠水時間、根傷みの程度によって必要性が異なるため、都道府県やJAの技術情報を確認して判断してください。

野菜・花き

野菜・花きは過湿、泥、強日射に注意します。

露地野菜や花きでは、排水後に葉や茎へ付着した泥を洗い流し、病害や草勢低下の有無を確認します。土が乾き始めてから軽く中耕すると、土壌表面の固まりをほぐし、通気性の回復を促すことができます。

土が流されて根が露出している場合は土を戻し、反対に株元が土砂で埋まっている場合は、作物を傷つけないよう土砂を除去します。倒伏した株は、根を切らないよう注意しながら早めに起こします。

果菜類では、雨や高湿度によって受粉・受精がうまく進まず、着果不良が起こることがあります。交配中の作物は着果状況を確認し、必要に応じて再交配などを検討します。

また、曇雨天が続いた直後に急に晴れると、強い日射によってしおれや日焼け、葉焼けが起こる場合があります。スイカなどでは果実をワラ等で覆い、施設栽培や花きでは遮光と換気を調整します。

果樹

果樹は排水と病害、樹勢低下に注意します。

果樹園に水がたまると、根の活力が低下し、樹勢低下や枯死につながることがあります。排水溝の土砂やごみを取り除き、必要に応じて浅い溝を設け、表面水を園外へ流します。根が露出した場合は、乾燥する前に覆土します。

大雨後は、ブドウのべと病、カキの炭疽病、ナシの黒星病など、作物ごとにさまざまな病害が問題になります。発生状況や防除暦を確認し、必要な防除を行います。ただし、傾斜地では作業道が崩れたり滑りやすくなったりするため、スピードスプレーヤなどの使用は路面の安全確認後に行います。

根傷みや早期落葉が激しい場合は、摘果によって果実数を減らし、樹への負担を軽くする方法もあります。また、長雨後に急激な高温や乾燥が訪れると、葉焼け、落葉、果実の日焼けなどが起こりやすくなるため、敷きワラやかん水などで土壌水分の急変を抑えます。

施設園芸

浸水と停電に備えが必要です。

施設園芸では、ハウス周囲に排水溝を設け、外部から雨水が流れ込まないようにします。排水ポンプ、防水壁、土のうなどを準備している場合は、大雨前に正常に使えるか点検してください。

流出するおそれのある資材は片づけ、オイルタンクは元栓を閉めて固定します。養液栽培など、停電によってかん水や環境制御が止まる施設では、自家発電機や非常用電源の作動を確認しておくことも重要です。

浸水による漏電やショートを防ぐため、不要な電源は切り、回路や配電設備の防水状態を確認します。浸水した電気設備は、自己判断ですぐに通電せず、専門業者などによる安全確認を受けてから再使用します。

大雨後は、施設内の排水を進めるとともに、速やかに換気して温度と湿度を調整します。骨組み、被覆資材、暖房設備、環境制御装置なども点検し、損傷があれば安全を確保したうえで補修します。

 

 

大雨対策は「排水・観察・安全」が基本

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大雨前後の管理では、まず作業者の安全を確保し、そのうえで排水を急ぐことが基本です。排水後は、泥の付着、茎葉や根の傷み、病害、肥料流亡、施設の破損などを確認してください。

ただし、冠水時間や生育段階、土質、作物の種類によって被害の現れ方は異なります。ほ場の状態を観察し、地域の農業改良普及センター、JA、自治体などが発表する最新の技術情報も確認しながら対応してください。

 

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