よりよく作物を育てるために。耕転のコツ

よりよく作物を育てるために。耕転のコツ

耕転作業とは「作物を栽培するために土壌を耕起し、反転、攪拌、砕土を行なう作業」のことです(出典:耕転作業 – ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA)。

農作業において基本的な作業のひとつですが、ただ土を細かく砕けばよい、深く耕せばよい、というものではありません。耕転は、土の中の水・空気・根の通り道を整え、堆肥や石灰などの土づくり資材を作土に混ぜ、次の作物が育ちやすい環境をつくるためのものともいえます。一方で、そのタイミングや耕し方を誤ると、土壌消毒の効果を失わせたり、かえって根が伸びにくい状態をつくってしまったりすることがあります。

 

 

耕転の3つの役割

よりよく作物を育てるために。耕転のコツ|画像1

 

作物の根は、土の中で水分と養分を吸収するだけでなく、呼吸もしています。そのため、土が硬く締まりすぎていたり、水はけが悪く酸素が少なかったりすると、根の伸長や働きが弱くなります。

耕転には、主に3つの役割があります。

1つ目は、硬くなった作土をほぐし、根が伸びる空間をつくることです。

機械作業が多い圃場では、土が踏み固められ、下層に硬い層ができることがあります。こうした状態では、根が深く張れず、乾燥や過湿の影響を受けやすくなります。この状態を耕転で解消します。

2つ目は、堆肥、石灰、土壌改良資材などを土と混ぜることです。三要素肥料は表面施用でもある程度効きますが、土とよく混和してこそ効果を発揮する資材もあります。

3つ目は、播種や定植に適した土の状態をつくることです。種が小さい作物では、土が粗すぎると発芽がそろいにくくなります。一方で、果菜類では、土を細かくしすぎないほうが根張りや草姿の面で有利に働くことがあります。耕転によって、作物に合った土の状態をつくることができます。

 

 

耕転のコツ

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作物によって土の細かさを使い分ける

露地に直まきする根菜類や、小さな苗を機械定植する葉菜類では、比較的細かく砕かれた土のほうが発芽や活着が安定しやすくなります。種子と土が密着しやすく、苗の根も初期に水分を得やすいためです。

一方、トマト、キュウリ、ナス、スイカ、メロンなどの果菜類では、大小の土塊が混ざった「ゴロ土」の状態が向く場合があります。白木己歳『深掘り 野菜づくり読本』(農文協、2023年)では、果菜の畑は、乾いた状態ではなく、土に湿りをもたせて耕転することが重要だと説明されています。湿った土を耕すと、均一に細かい土ではなく、不均一な土塊を含む状態になりやすいからです。

果菜類では、定植してしばらくは水をやや控えめにし、締まりのある草姿に育てることが重視されます。ゴロ土のある土では、水が一気に根へ吸われにくく、かつ完全に乾ききるわけでもありません。そのため、かん水を控える効果を出しながら、強い萎れを避けやすくなります。

また、土塊や隙間のある土では、根が直線的に伸びるだけでなく、土塊に沿って曲がりながら伸びます。この刺激が側根やひげ根の発生につながり、結果として根の量や活性を高める方向に働くと考えられます。

耕すタイミングは水分状態で決める

乾きすぎた土をロータリーなどで耕すと、土が細かくなりすぎることがあります。先述したように、果菜類において細かい土では水を吸いやすく、初期生育が旺盛になりすぎる場合があります。

反対に、水分が多すぎる状態で耕すと、土をほぐすというより「練る」ことになります。練られた土は乾くと硬く締まってしまい、通気性や透水性などの土壌の物理性が悪化します。

作物に合わせた土づくりを行う際は、耕転前に土の湿り具合を確認することも重要です。

深く耕しすぎない

深耕は、硬く締まった下層をほぐし、根域を広げ、排水性を改善する技術です。

ただし、毎回深く耕せばよいわけではありません。深く耕すことで、下層のやせた土や未消毒の土、雑草種子を表面近くに上げてしまうことがあります。

深耕が必要なのは、以下の問題がある場合です。

  • 根が下に伸びにくい
  • 雨後に水が抜けない
  • 作土が浅い
  • 根菜類で形状不良が出やすい

反対に、すでに作土が確保され、排水もよく、作物の根張りに問題がない圃場では、必要以上に深くかき混ぜることよりも、その土壌を維持することを優先したほうがよい場合もあります。

土壌消毒後は、むやみにかき混ぜない

土壌消毒を行った圃場では、耕転の扱いに特に注意が必要です。

土壌消毒は、土壌病害虫の密度や活動を一時的に下げ、作物が優位に育つ期間をつくるものです。太陽熱消毒や土壌還元消毒などでは、処理後に土を大きくかき混ぜると、未消毒の下層土や雑草種子、病原菌を含む土が表面に上がり、効果が落ちることがあります。

 

 

まとめ

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耕転の目的は、土をきれいに細かくならすことではありません。作物によって、細かい土が好ましい場合や、土塊を残すほうが好ましい場合、耕すタイミングや深さの違いなどがありますが、その目的は、作物の根が健全に広がるための環境を整えることです。

当たり前のようにやっている工程かと思いますが、奥の深い作業でもあります。耕転の一番のコツは、作物を育てるために、いま、この土をどう整えるべきか、と考えることともいえます。

 

参考文献:白木己歳「深掘り 野菜づくり読本 農業技術者のこだわり指南」(農文協、2023年)

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