農薬は年々更新される登録情報や、作物ごとの使用条件に基づいて使う必要があります。ラベルに記載された情報を正確に読み取り、安全かつ適切な使用が求められます。本記事では、農薬登録制度の基本からラベルの読み方などについてご紹介していきます。
農薬登録制度とは?
農薬は「農薬取締法」に基づいて、国が登録を認めたものしか販売・使用できません。この制度は、作物の安全性だけでなく、使用者・環境・消費者すべてを守るために設けられています。
登録にあたっては、以下のような審査基準が課されます。
- 作物残留基準への適合
- 人畜・環境への安全性
- 病害虫への効果
- 使用回数や希釈倍率の妥当性
登録された農薬には、農林水産省の「農薬登録番号」が付与され、市販の農薬ラベルや容器に必ず記載されています。
登録外使用は違法行為
登録されていない作物・病害虫への使用や、希釈倍率・回数の違反は「農薬取締法違反」となります。違反者には罰則が科されるほか、農作物が出荷停止や回収となるケースもあり、経営に重大な影響を及ぼします。
ラベルから読み取るべき情報について
農薬のパッケージには、使用上の重要情報が詰まっています。ラベルを見る際に必ず確認すべきポイントは以下のとおりです。
ラベル記載項目 |
内容 |
農薬登録番号 |
登録された農薬であることを示す(例:第○○○○○号) |
適用作物 |
使用が許可されている作物(例:キャベツ、だいこん) |
適用病害虫 |
効果がある病害虫(例:菌核病、アブラムシ類) |
希釈倍率 |
使用時に水で薄める倍率(例:1,000倍液) |
使用時期 |
収穫何日前まで使用できるか(例:収穫前21日) |
使用回数 |
1作期に使用できる回数(例:年3回以内) |
使用方法 |
散布、土壌混和、種子処理などの方法 |
安全使用上の注意 |
作業時の保護具着用、周辺への飛散防止など |
これらは農薬を正しく、安全に使うため、使用前に必ず確認すべき基本情報です。
使用時の注意点と違反リスク
農薬を安全に使うには、ラベルの内容を守るだけでなく、現場での取り扱いにも注意が必要です。特に以下のような点は、違反・事故に直結しやすいので注意してください。
- 希釈倍率・回数の間違い:
希釈が不十分(濃すぎる)だと、薬害や残留リスクが高まり、出荷停止や作物廃棄につながる可能性があります。 - 適用外作物への使用:
登録されていない作物に使うと、たとえ効果があっても違法行為になります。 - 残留農薬の問題:
使用時期を守らずに収穫すると、基準値を超える残留農薬が検出され、市場流通の停止や信用失墜につながります。
農薬を安全に使用するために
以下のようなコツを押さえることで、リスクを最小限に抑えることができます。
① 適用作物をリストで管理
育てている作物と、それに登録された農薬の一覧を作っておくと、誤使用を防げます。都道府県の病害虫防除所のWebサイトでは、地域別の適用農薬リストが公開されています。
② 希釈液はその都度作る
希釈液は長期保存せず、その日のうちに使い切ることが基本です。混合は原則避け、やむを得ない場合は混用適性をラベルで確認します。
③ 使用履歴を記録する
農薬散布日・使用量・対象作物・天候などを記録しておくと、万一のトラブル時に説明責任を果たせるだけでなく、生産工程管理(GAP)にも活用できます。
実際に起きた違反事例と罰則
農薬違反によるトラブルは全国で発生しています。事例としては、登録外農薬の使用による出荷停止や、希釈ミスによる薬害、収穫前の農薬使用による残留超過による回収命令などが一般的に報告されています。
農薬取締法違反には、懲役や罰金といった重い罰則が科されることがあります。具体的には、違反内容に応じて3年以下の懲役または100万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)などが法律で定められています。罰則は法令の改正などにより変わることがあるため、最新の法令を確認することが重要です。
農薬は便利で効果的な農業資材ですが、使い方次第でリスクにもなることを忘れてはなりません。農薬の登録制度は、安全・安心な食の流通を支える基盤です。ラベルを正しく読み取り、記録を残し、適切なタイミング・方法で使用することが、消費者の信頼を守り、持続可能な農業経営につながります。
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