農業者ができるクマ対策。あらためて知りたい被害防止策&安全行動マニュアル

農業者ができるクマ対策。あらためて知りたい被害防止策&安全行動マニュアル

近年、ツキノワグマやヒグマをはじめとするクマ類(以下、クマ)の出没が増加しています。環境省によれば、令和5年度(2023年度)の1月末までに報告されたクマによる人身被害は218人(うち死亡6名)にのぼり、月別の統計のある平成18年度以降で最多の件数となりました。なお、令和5年度はクマによる被害が秋(9月以降)以降に顕著に増加した、とあります。

なお、クマによる農作物被害件数の全国的なデータは公開されていないものの、多くの地域で農地や果樹園、養蜂場などへの被害が深刻化しています。たとえば陸奥新報の記事によると、青森県では令和5年度のクマによる被害額が前年度の8倍に達したことが報じられています。

クマによる被害が増加した背景の詳細は地域ごとに異なりますが、以下のような理由があげられます。

  • 狩猟者の減少により捕獲圧(捕獲により野生鳥獣の個体数に与える影響)が低下し、個体数が増加した
  • 人口減少や高齢化による耕作放棄地の増加に伴い、クマが食物を採取しやすくなった
  • 気候変動などの影響でクマの生息域が拡大、出没場所が変化した

 

 

農業者ができる被害防止策

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クマの行動特性と出没しやすい時期を知る

クマは、主に春や秋に活発な行動が見られます。特に秋は、冬眠に備えて大量の食料を蓄える必要があり、それに加え、ドングリなどの木の実が不作な場合には、餌を求めて行動範囲を広げます。この際、人里に出没するリスクが高まります。

また、クマは日中に活動する昼行性ですが、活発に行動する時間帯は朝や夕方の薄暗い時間帯です。そのため、クマは本来人との接触を避ける傾向にあるとはいえ、農作業中の遭遇リスクも高まります。

電気柵の設置と運用

環境省が公表する対策マニュアルによると、有効な電気柵は3~4段張り構成が推奨されています(底部は地面から20cm以下、第2段以降は20cm間隔で設置することが効果的とされている)。さらに、地面を掘って侵入してくる場合に備え、手前に複線を張ることで防御強度が高まります 。

常時電流を流し続けることや、メンテナンスとしてこまめに電圧チェックを実施すること、草刈りや漏電防止措置などが重要です。

環境管理の徹底

放置果樹や収穫残渣はクマを誘引することになるので、徹底的な除去が求められます。同時に、堆肥やゴミを適切に管理・隔離することで、餌場を減らす工夫が求められます。

加えて、草刈りや周辺の整備によって見通しをよくし、クマの接近を抑制することも重要です

 

 

出没時の安全行動マニュアル

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可能であれば作業は複数人で行ってください。ラジオや鈴など音の出るもので人の存在を知らせる工夫をし、万が一に備えて、クマが向かってきた時に噴射するクマ撃退スプレーなどの対策グッズを装備しておきます。

通報体制の確保も重要です。地元猟友会や役場、防災無線などへ早期通報できる連絡手段は必ず用意してください。

万が一、クマと遭遇してしまった場合、50m以内に接近した場合には、落ち着いて距離を取り、大声や急な動きで驚かせないよう慎重に行動します。また、背中を見せることで追ってくるケースがあるため、対面を保ちながらゆっくり後ずさりをして退避してください。

熊被害の防止は「予防8割・遭遇時2割」の意識が重要

電気柵の設置、誘引物の除去といった対策に加え、地域と連携することで安全性と効果が大きく高まります。

今すぐできるクマ対策の第一歩は……

  • 倉庫・保管場所の見直し(見通しを確保する・誘引物を除去する)
  • 電気柵の点検・設置有無の確認
  • 通報体制・連絡先の整理(猟友会・自治体)

クマによる被害はいつ訪れるか分かりません。日頃からの備えと連携が、農地の安全を守る最大の力となります。

 

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