日本と世界の先進国の食糧事情の特徴・違い

日本と世界の先進国の食糧事情の特徴・違い

食糧事情に関する話題といえば、日本の食料自給率の低さが思い浮かぶのではないでしょうか。そして低い食料自給率にも関わらず、食料廃棄量が多いことでも有名です。食料

廃棄量は、食料供給量の約1/4とも言われています。そんな日本の食糧事情を世界の先進国と比較してみました。

 

 

世界の食糧事情

【日本と世界の先進国の食糧事情の特徴・違い|画像1】

 

まずは世界の食糧事情について、先進国に限らずお伝えしていきます。世界の飢餓人口は8億2100万人と言われています。9人に1人が飢餓に苦しんでいるような状態です。

世界全体で食糧生産量を見ると、毎年約25億tもの穀物が生産されています。決して食糧が不足しているわけではありません。生産される穀物が世界の人々に平等に分配されたら、1人当たり年間340kg以上穀物が食べられる計算になります(日本人が実際に食べている穀物量は年間159kgです)。

しかしそれらの食物は平等に分配されていません。その理由には、

  • 地球温暖化による影響
  • 食料価格の高騰
  • 農作物の不作

等が挙げられます。

農業で生計を立てている人の割合が高い開発途上国では、天候不順や自然災害によって農業に悪影響が及ぶと、生活が成り立たなくなってしまいます。地球温暖化による農作物の不作が世界各地で報告されていますが、温暖化の原因である二酸化炭素排出量が多いのは、そのほとんどが先進国や新興国によるものです。開発途上国は排出量が少ないにも関わらず、地球温暖化の影響によって安定的な生活を送ることが困難になってしまうのです。また金融危機により利益が出せないと判断した投機家たちが穀物に目をつけたことから発生した「食料価格の高騰」も、食料を求める人たちの暴動を巻き起こすなど、食糧事情を不安定化させる原因のひとつとなりました。

 

 

日本の食糧事情

【日本と世界の先進国の食糧事情の特徴・違い|画像2】

 

日本は世界第1位の農産物純輸入国です。輸出額が輸入額に比べ少ないのが特徴です。食料消費の観点では畜産物や油脂類の消費が増加しています。そして畜産物の飼料や油脂類の原料の多くを輸入に頼っているのが現状です。

米の消費は減少傾向にあります。消費量の減少と農業従事者の高齢化等の問題があいまって、耕作放棄地が増加したり宅地に転用されたりと、農地面積も減少しています。

日本の食料自給率は、カロリーベースでは横ばい傾向、生産額ベースでは減少傾向で推移しています。

 

 

先進諸国の食糧事情

【日本と世界の先進国の食糧事情の特徴・違い|画像3】

 

中国

中国は世界最大の人口大国です。中国は世界最大の人口を養うのに必要な食糧を、基本的には自国生産でまかなっている国でもあります。世界全体で見た中国の生産量の比率は高く、世界の主要食糧であるコメ、小麦、トウモロコシの合計生産量は、およそ21〜23%を占めるほどです。

基本的には自国生産で食糧生産をまかなえている中国ですが、1980年代からの高度経済成長に伴い、食生活には変化が起きています。食生活が変化したことで畜水産物生産量が拡大しました。それにより、畜水産物を育てるための飼料穀物(トウモロコシ)の需要が拡大しています。飼料のうち、タンパク質飼料は輸入に大きく依存していることが挙げられます。

また食糧生産経営の生産効率の低さ、収益性の低さを指摘する声もあり、今後生産量が増加すればするほど、生産経営を圧迫するのではないかと懸念されています。

 

アメリカ

世界の飢餓人口は約8億人と紹介しましたが、アメリカ国内でさえ4700万人が食糧援助を必要としています。「シカゴ国際問題評議会」に出席した専門家は、人口増加によって畜産物等の食品需要が高まる一方で、気候変動等の影響により作物収穫量が減少することを予測しています。この予測は決してアメリカに限った話ではありませんが、食料価格を比較的低い水準を維持しているアメリカですら、4700万人が食糧援助を受けているのですから、無視することはできない問題と言えるでしょう。

 

オランダ

国土面積が九州とほぼ同じ大きさのオランダは、国土面積の約44%が農用地です。狭い国土ではありますが、施設園芸をうまく駆使し、花き・野菜等の生産、畜産業などで高い収益をあげています。特に注目すべきはIT技術の導入です。農作物の生産量、エネルギー使用量、従業員の労働状況など、あらゆる観点をIT技術で管理し、うまく回しています。農産物の輸出額はアメリカに次いで世界第2位、輸入額は輸出額の約3分の2に相当しています。

 

 

食糧事情に対する取り組み

【日本と世界の先進国の食糧事情の特徴・違い|画像4】

 

日本と世界の先進諸国の食糧事情を比べてみると、同じような問題を抱えているように感じます。しかし日本においては、輸入に大きく依存しているにもかかわらず、食糧廃棄量が食品供給量の約1/4というのがやはり気になります。

そんな中、約8億人いる世界の飢餓人口を減らす手立てになりそうな取り組みがあらゆる企業で行われています。食糧危機・フードロス問題に取り組む会社が多々あるのです。

例えば「TABETE」は、外食業などで廃棄されそうな食べ物を格安価格で販売するシェアリングサービスです。登録している外食業などは廃棄量を減らす取り組みができますし、ユーザーは格安で食品を手に入れながら、外食業同様、廃棄量を減らす取り組みに参加できます。また「トレタ」は、予約や顧客管理システムにより効率良い飲食店経営ができます。

シェアリングエコノミーが浸透してきた昨今、このような取り組みによって、少しずつ食糧事情が解決していくといいですね。

 

参考文献

  1. 世界の食料事情
  2. 知ってる?日本の食料事情~日本の食料自給率・食料自給力と食料安全保障~
  3. 中国:中国の食糧問題
  4. 迫り来る食糧危機、対策は見い出せるか ナショナル・ジオグラフィック
  5. オランダの農林水産業概況 農林水産省
  6. 農産物輸出額世界第2位のオランダ、農業支えるテクノロジー企業もトップクラスに
  7. 食糧危機・フードロス問題に取り組むスタートアップ8社を紹介、生産や流通の可視化で廃棄の課題解決@THE BRIDGE X Lab. Night

コラムカテゴリの最新記事