ICM、IPM、IBMの違いとは。それぞれの目的や特徴について。

ICM、IPM、IBMの違いとは。それぞれの目的や特徴について。

環境保全型農業に関連する用語として、ICM、IPM、IBMといった言葉を目にすることがあります。これらはそれぞれ以下の言葉を略したものです。

  • ICM 総合的作物管理(Integrated Crop Management)
  • IPM 総合的病害虫・雑草管理(Integrated Pest Management)
  • IBM 総合的生物多様性管理(Intergrated Biodiversity Management)

C、P、Mとそれぞれ異なる単語が当てはめられていますが、一体どのような違いがあるのでしょうか。

 

 

IPMについて

ICM、IPM、IBMの違いとは。それぞれの目的や特徴について。|画像1

 

まずはIPM、総合的病害虫・雑草管理(Integrated Pest Management)について。

IPMは、ICM、IBMに比べると、検索したり文献を調べたりする際に、用語自体の認知度が高い印象があります。

国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations、FAO)の定義では、IPMは「農作物に対する有害生物制御に利用可能なすべての防除技術を、経済性を考慮しつつ検討し、対策に適した手段を総合的に講じるもの」とされています。

IPMの目的は、病虫害・雑草による被害を軽減することであり、人や環境へのリスクを軽減させること(最小限に抑えること)です。IPMは、農業を取り巻く生態系に顕著な変化を引き起こす可能性を少なくするために、生態系を管理することで、病虫害を長期的に予防することに重点を置いています。

そのために、IPMはさまざまなアプローチで病虫害・雑草を予防します。

たとえば、病気や害虫に強い植物を選んだり、害虫が圃場やハウス内に侵入しないよう物理的に防除したりすることもIPMのアプローチの1つです。IPMの捉え方として注意したいのが、「化学的防除」もまたIPMの手段の1つである、ということです。IPMは農薬を使用しないことではありません。農薬が必要な場合には、農薬を使用することもあります。

ただし、積極的に農薬の使用を推奨するものでもありません。IPMでは、単に今いる害虫を駆除するのではなく、害虫とその繁殖に影響を与える環境要因に注目します。害虫について、どのような害虫が存在するのか、どのような被害をもたらすのか、害虫が許容できるものなのか、防除が必要となるほど問題になる可能性があるのか、といったモニタリングを行い、管理の必要性を判断します。

IPMでは「物理的防除」や「化学的防除」の他、「生物的防除」や害虫の定着や生存などを減少させる「文化的防除(Cultural controls)」といった方法(たとえば、水が多すぎることで根の病気や雑草が増えるのであれば、灌漑方法を変えて害の発生を抑えるなど)など、複数の防除策を組み合わせて対策を行います。

 

 

IBMについて

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IBM、総合的生物多様性管理(Intergrated Biodiversity Management )は1965年にFAOが農業におけるIPMの理念を発表したあと新たに提唱された用語です。IBMは圃場周辺の生態系の生物多様性への影響を低減することを目標としており、IBMにおける害虫防除策は主に土着天敵の利用を中心としています。IPMが行う防除アプローチのうち、生物学的防除(状況によっては文化的防除ともいえる)に絞ったアプローチといえます。

 

 

ICMについて

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IPMが病害虫・雑草による被害を軽減することを目的とするならば、ICM、総合的作物管理(Integrated Crop Management)は高品質で多収量な農作物の生産を目的としています。品質と収量の向上を目的としたICMには、土壌管理や作付管理の他、品種開発や野生動植物と景観の保全・保護や作物残渣の管理など、さまざまな栽培管理技術が含まれています。

そして、病虫害・雑草管理(IBM)もまたICMに含まれる栽培管理技術の1つです。すなわち、IPMはICMに含まれる管理技術の1つといえます。

 

 

ICM、IPM、IBMに共通すること

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名称こそ微妙に違えど、いずれも農業の持続可能性を高める大きな役割を担います。

FAOは、持続可能な農業におけるIPMの役割として以下のことをあげています。

持続可能な害虫防除の適用

IPMは、農業を取り巻く生態系に顕著な変化を及ぼさないために、天敵昆虫による害虫の捕食など、生態系そのものの働きを基盤としています。そのため、IPMの実践は作物への害虫被害を軽減する効果を得られるだけでなく、受粉など他の生態系の働きを保護する役割も発揮します。

残留農薬の削減

農薬を使用する場合もあるIPMですが、必要な場合にのみ使用することや、人や非標的植物、環境への害を最小限に抑える使用法により、農薬の使用量を削減することで、残留農薬の削減につながり、食品や水の安全に貢献するものといえます。

そのほか、生態系の向上や収穫前後の作物ロスの削減が農業の生産性と食糧供給量の増加に貢献することなども示しています。

安定的な生産、安定的な防除効果を得るためには、問題が発生する度、農薬などを用いて対策をとるのではなく、作物の栽培体系を一連のものとして捉え、問題の要因を見つけ出したり、その要因を発生させないよう土壌管理を行ったりするといった方法をとることが、農業の持続可能性を高める上では重要なのではないでしょうか。

 

参照サイト

  1. What Is Integrated Pest Management (IPM)? / UC Statewide IPM Program (UC IPM)
  2. Integrated Pest Management (IPM) | Pest and Pesticide Management | Food and Agriculture Organization of the United Nations
  3. IPMとは何か。農薬に頼りすぎない害虫防除法について。IBMについても紹介。
  4. 宮崎県における ICM の推進

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