「二期作」の可能性。二期作の利点と主食用米以外の二期作について

「二期作」の可能性。二期作の利点と主食用米以外の二期作について

近年、温暖化を逆手にとった「再生二期作」が注目を集めています。一度刈り取った稲から再び穂をつけて収穫するこの方法は、コメ不足や価格高騰を背景に実施面積が拡大しつつあります。

 

 

再生二期作とは

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「再生二期作」とは、一度刈り取った稲株をそのまま残し、再び芽を出させて二度目の収穫を行う栽培法です。

通常の二期作のように苗を植え直す必要がなく、省力化やコスト削減につながるのが特徴です。もともと東南アジアでは一般的で、中国では研究が先行してきましたが、日本では減反政策の影響で普及が進まず、技術も発展途上にあります。

しかし、近年の温暖化により稲の生育期間が長く確保できるようになり、さらにコメ不足や米価高騰を背景に、国内でも注目が再び高まっています。

農研機構の調査では、2025年には再生二期作の実施面積が前年の約30ヘクタールから倍増の60ヘクタール超に拡大する見通しです。農水省も食料・農業・農村基本計画に位置付け、実証や導入を支援する方針を示しています。

農家の高齢化や人手不足が深刻化する中、再生二期作は効率的な増産を可能にする手段として期待され、今後のコメ生産のあり方を大きく変える可能性を秘めています。

 

 

二期作の利点と留意点

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二期作は単純に収穫回数が増えるため、農地の生産性を倍増させる可能性があります。また、二期作を導入することで、農機や人員の稼働が年間を通じて均等化します。オフシーズンが短縮され、機械の稼働効率が向上するほか、雇用の安定にもつなげられます。

ただし、二期作の成否は、地域の気温や降水量、土壌条件に大きく左右されます。そのため中山間地や冷涼地では、生育期間の確保が難しい場合があります。

とはいえ、近年はICTやセンシング技術の発展により、二期作のリスク管理が容易になっています。農業気象AI「パディウォッチ」やウェザーニューズ社の予測サービスは、天候変動の早期把握や適期作業の判断を支援します。これらサービスを活用することにより、播種・収穫のタイミングを最適化することができ、品質と収量の安定化につながります。

 

 

二期作は米だけじゃない!

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前述した通り、通常の「二期作」では苗を植え直す必要がありますが、二期作が行われるのは主食用米だけではありません。たとえば宮城県農業・園芸総合研究所の研究によると、露地栽培の枝豆において、極早生品種を活用することで二期作が可能であることが示されています。

具体的には、極早生品種(「初だるま」や「神風香」といった品種)を用いて、4月中旬に播種。すると、7月中旬から下旬に初回の収穫が可能となります。その後、7月下旬から8月上旬に再度播種することで、9月下旬から10月中旬にかけて二回目の収穫が期待できます。

この二期作により、8月の出荷集中を避け、7月から10月にかけての継続的な供給が可能となり、出荷調整の負担軽減が期待されます。

ただし、試験結果によると、播種が遅れると収量が低下する傾向が見られています。極早生品種を活用した枝豆の二期作は、効率的な生産と安定供給の実現に期待できますが、播種適期を守ることが重要といえます。

 

 

まとめ

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二期作は、温暖化やコメ不足といった背景から再び注目されていますが、その価値は単なる増産にとどまらず、経営効率化やリスク分散にも役立ちます。地域の気候や土壌条件に応じた作型設計は必要になりますが、ICTやセンシング技術を活用することで適期作業の判断がしやすくなり、播種・収穫のタイミングがはかりやすくなるはずです。

気候変動による温暖化の影響が顕著になる中、持続可能な農業の選択肢として、二期作・再生二期作は今後ますます重要性を増していくのではないでしょうか。

 

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