かつては副産物的に扱われてきた枝物ですが、今静かに注目を集めています。本記事では、枝物の販路拡大の可能性や生産現場が抱える課題など、枝物市場の現状についてご紹介していきます。
枝物需要の今
枝物とは、開花前の枝や実付きの枝などを切り出し、観賞用や装飾用として販売する植物資材です。レンギョウやドウダンツツジ、ユキヤナギなどが代表例ですが、最近ではユーカリやブルーベリーの枝なども注目されています。
生産現場が抱える課題
需要の高まりに伴い、生産量が増えることが期待される一方、以下の課題も浮き彫りになっています。
- 品質のばらつき
- 労働力不足
- 市場の情報不足
まず、枝物は枝の曲がりや葉の付き方など、見た目の美しさが商品価値に直結します。そのため、栽培時から剪定・誘引に細かな注意が必要で労力がかかります。労力がかかる一方、農業の高齢化により労働力は不足しています。適期に切り出し、適切に出荷するには作業の集中が避けられず、対応が難しい場面もあります。そして、枝物は花き市場の中でも特殊な立ち位置にあるため、市場の価格動向や需要先の情報をつかみにくいという課題もあります。
これらの課題に対して、自治体やJAによる技術指導や販路開拓支援、剪定講習会などの取り組みが行われています。
なお、市場では以下のようなポイントが重視されます。
- 直線的で張りのある枝ぶり
- 葉や蕾の状態が良好
- 切り口の処理が丁寧で清潔である
- 長さや太さに一定の規格がある
販路拡大の可能性
枝物は保存性が高く、空輸・船便のどちらにも対応しやすいという強みがあります。なお、枝物単体の明確なデータは確認されていませんが、農林水産省の「花きの輸出拡大戦略」において、切り花一般の統計として見ると韓国・台湾・香港など近距離圏への輸出が拡大しており、今後はヨーロッパ市場への展開も視野に入れられています。
販路拡大の可能性をより高めるためのヒントとしては、以下のような方法が考えられます。
- 花き卸業者や専門輸出業者との連携
- 農産物直売所でのディスプレイ強化と提案型販売
- SNSでの発信とオンライン直販の活用
- 地元のインテリアショップや飲食店との提携
特に都市部では、観葉植物やドライフラワーと組み合わせた提案型販売が好評です。単なる「花材」ではなく、「空間を演出するアイテム」としてブランディングすることで、価格競争に巻き込まれにくくなります。
枝物栽培で収益を確保するには
枝物栽培は省スペースでも可能なうえ、周年栽培や副業的な導入も比較的しやすいため、新規就農者や兼業農家にとっても魅力的です。ただし、収益化を図るためには以下のようなポイントが重要です。
- 用途別に品種を分けて導入する(例:春の枝物、紅葉系、実物系など)
- 作業工程の省力化を考慮した樹形管理を行う
- 市場のトレンドに合わせた改植や剪定計画を立てる
- 出荷タイミングと物流手段を確保する
ただし、冒頭でも述べたように、枝物は「見た目の美しさ」が商品価値に直結します。生産には丁寧な管理や品質維持の技術が求められ、市場動向を読み解くマーケティング視点も必要です。個人農家や小規模生産者が持続的に収益を上げていくためには、グループ化や情報共有の仕組みづくりも重要となるはずです。
とはいえ、販路や栽培方法を見直し、技術と戦略を両立させれば、枝物は高収益作物になり得ます。枝物栽培の将来性が期待されます。
参照サイト:[論説]拡大する枝物市場 露地栽培で商機つかめ