病害虫による被害を防ぐ「耕種的防除」の一環として有効な手法とされているものに、「間作(かんさく)」と「輪作(りんさく)」があります。
本記事では、間作・輪作の基本的な考え方について紹介していきます。
間作・輪作とは?


| 概要 | 例 | |
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間作 |
同じ畑で、同時期に異なる作物を混植すること |
トウモロコシと枝豆を同じ畝に植える |
| 輪作 | 同じ畑で、年や作期ごとに異なる作物を順番に栽培すること |
1年目にキャベツ、2年目に大豆、3年目にタマネギ |
間作とは、同じ畑の中で複数の作物を同時期に栽培すること。一方、輪作は、年ごとや季節ごとに違う作物を順番に栽培していく方法を指します。
一方で、「連作」とは同じ畑で同じ作物を続けて栽培することです。しかし同じ場所で同じ作物を長年栽培し続けると、生育が悪くなったり、枯れてしまったりする「連作障害」を招く可能性が高まります。
連作障害の原因は主に以下の3つです。
- 病害虫の増殖
- 土壌養分の偏り
- 土壌微生物の多様性の乱れ
ある作物だけを連続して栽培すると、同じ種類の病原菌や害虫が土中に蓄積されやすくなり、このことが連作障害につながります。たとえば「根こぶ病」はアブラナ科の連作で発生リスクが高まります。
また、同じ作物を連続して栽培することで、同じ栄養素が繰り返し吸収され、特定の成分が不足することで土壌養分が偏ることも連作障害の原因です。土壌微生物の多様性についても同様で、土壌微生物に偏りが見られると、土壌環境の悪化につながります。
間作や輪作を適切に取り入れることは、連作障害の防止や病害虫の抑制につながるほか、土壌環境の維持・改善にもつながります。
作物の組み合わせと輪作年限の目安
輪作を成功させるには、単に別の作物を植えるのではなく、異なる科の作物をローテーションすることが重要です。以下は代表的な科と主な作物、輪作年限(同じ作物を再び作付けできるまでの年数)の目安をまとめたものです。
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科名 |
主な作物 |
推奨輪作年限※ |
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アブラナ科 |
キャベツ、ハクサイ、ダイコン |
3~4年 |
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ナス科 |
ナス、トマト、ジャガイモ |
3~5年 |
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マメ科 |
エダマメ、ダイズ、インゲン |
1~2年 |
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ヒユ科 |
ホウレンソウ |
2~3年 |
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ウリ科 |
キュウリ、カボチャ、スイカ |
3~4年 |
※前述したように、輪作年限はあくまでも目安です。推奨年限は土壌の病害密度・地域(気候・土壌)・圃場の排水性・前作の被害状況により変わります。上の数値は多くの普及資料で示される一般的な目安ですが、導入時は都道府県や品目別の普及指導、土壌検査結果に基づいて調整してください。
たとえば、キャベツ(アブラナ科)のあとにエダマメ(マメ科)を作付けすることは、土壌病害の連鎖を断ち切ることにつながるのに加え、マメ科作物の根粒菌が土壌に窒素を供給するといった効果も得られます。
間作・輪作の事例


間作の事例
たとえば「キャベツとブロッコリー」や「トウモロコシと枝豆」などがあげられます。
キャベツとブロッコリーは混作または間作することで、害虫の被害を軽減し、可販株率(収穫対象となる野菜のうち、販売可能な状態の株の割合)の向上につながることが研究報告として示されています。
トウモロコシ(またはトウモロコシ類)とマメ科作物を一緒に栽培する混植・間作は、被覆による雑草抑制や相互の資源利用の違いで雑草密度を下げることが多く報告されています。このような背景から「トウモロコシと枝豆」は相性のよい作物の組み合わせとして知られています※。
※ただし、雑草を化学的に抑える物質を強く出すのはムクナや一部の被覆用マメ科種であり、一般的な食用の枝豆(大豆品種)が同様の化学抑制を発揮するとは限りません。具体的な品種や栽培法に基づく検証が必要とされているのが現状です。種別・栽培様式・株間などで結果が変わることに注意してください。
また、ユウガオやキュウリの株元にネギを植えると、ネギの根に共生する細菌がつる割病や萎ちょう病の原因となる病原菌の発生を抑え、これら病気の発症を防ぐ、といった事例もあります。
ネギが病原菌を直接殺すというよりは、ネギが土壌の微生物環境を変えて病気を抑えるといった形です。ネギ類の根から出る成分が土壌微生物叢を変化させることで、ネギ根圏に増える拮抗性(=病原菌を抑える)細菌群が土壌に集積、優勢となり、病原菌抑制につながります。
そのほか、天敵昆虫を増やし、害虫の発生を抑える効果が期待できるとして、露地野菜の畝間にオオムギを播種する事例もあります。
畝間にオオムギ(麦類)や開花植物を播くことは、代替餌や蜜・花粉を提供することでヒラタアブや寄生蜂などの天敵を圃場に誘引・維持し、害虫発生を抑える効果が報告されています。ただし、実施に当たっては品種・播種時期・周囲作物との兼ね合いで効果の程度が変わるため、導入前の小区試験や普及資料に基づく計画が推奨されます。
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輪作の事例
群馬県のあるキャベツ農家では、長年の連作により根こぶ病やネコブセンチュウが多発していました。そこで導入されたのが、ソルゴーとの輪作です。ソルゴーはイネ科の作物で、センチュウの増殖を抑える効果があるとされています。
キャベツの収穫後にソルゴーを栽培し、緑肥としてすき込むことで土壌環境が改善され、3年目には病害の発生が激減(この事例では「3年で激減」とありますが、これは試験条件や前作の状態に依存する点に注意が必要です)。農薬の使用量も抑えられ、結果的に生産コストが減少しました。また、ソルゴーは夏場の雑草抑制にも効果があり、除草作業の手間も軽減されました。
県や研究機関の試験・指導事例では、ソルゴー等の緑肥(ソルゴー・ソルガム類)を輪作・すき込みに用いると、土壌構造が改善され、特定の線虫や土壌病害が減少した例が報告されています。
参照サイト
- 持続可能な農業生産の実現に向けて
- 環境と調和のとれた持続的な 農業生産をめざして
- 持続的農業の実現へ ~新たな時代を切り開く技術革新をめざす~
- 持続可能な農業への移行を加速させる7つの方法 | 世界経済フォーラム
- 連・輪作畑土壌の微生物作用
- 輪作で持続可能な畑づくり
- ~適正な輪作体系の維持・確立と基本技術の励行を~
- ネギ属植物や雑草との間・混作による作物病害の防除
- 混作や間作など作付構成の多様化を利用した野菜の有機栽培に関する研究
- 混作や間作を利用したキャベツ、ブロッコリーの有機栽培
- コンパニオンプランツの活用術
- オオムギ間作・開花植物による 露地野菜の害虫防除技術
- 群馬県キャベツIPM実践指標
- 緑肥利用マニュアル
- Weed Control in Maize Using Mucuna and Canavalia as Intercrops in the Northern Guinea Savanna Zone of Ghana
- Harnessing the potential of Mucuna cover cropping: a comprehensive review of its agronomic and environmental benefit






























