持続的な農業経営のために!農家が知っておきたい節税対策①

持続的な農業経営のために!農家が知っておきたい節税対策①

本記事では、農家が知っておきたい節税対策についてご紹介していきます。農業を営む人に限らず有効な節税対策もあり、目新しさが感じられない人がいるかもしれませんが、自分の農業経営を見直すきっかけとして、本記事を活用していただけると幸いです。

 

 

基本的な節税対策。控除を利用する

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まず外せない節税対策が「控除」の利用です。

青色申告特別控除制度

もうすでに利用されている方がほとんどかと思います。青色申告で確定申告を行うと受けられる控除制度で、一定の要件を満たすと最高65万円の控除を受けることができます。

控除額は、2018年の税制改正により、2020年度の確定申告から65万円の控除額が55万円に変更されていますが、基礎控除の額が38万円から48万円となったため、これら2つを足した控除額は今までと変わっていません。

ただし、控除を利用して納税の負担を少しでも抑えたい場合には、ぜひ「電子申告」と「電子帳簿保存制度」を利用してください。

電子申告について

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「e-Tax(イータックス)※での電子申告」「電子帳簿保存」を行えば、青色申告特別控除額は65万円、すなわち従来の確定申告(紙媒体による提出)より10万円多く控除が利用できます。

※e-Tax(イータックス)は“申告などの国税に関する各種の手続について、インターネットを利用して電子的に手続が行えるシステム(引用元:青色申告特別控除額が変わります! – 国税庁)”です。

引き続き65万円の青色申告特別控除を受けるためには「電子申告」を行う必要があります。電子申告は、確定申告書・青色申告決算書等のデータを、ご自身のパソコンなどからe-Taxで提出(送信)する方法です。

はじめて電子申告を行う際は、慣れない作業に少し難しさを感じるかもしれません。しかし
提出する確定申告書・青色申告決算書等のデータは、オンラインで利用できる帳簿・会計ソフトなどを活用していれば、これらの書類を比較的手間なく作成してくれる機能がついているはずですから、提出するデータの作成自体はそこまで難しくないはずです。また国税庁ホームページにある「確定申告書等作成コーナー」でデータを作成し、それをe-Taxで提出(送信)することも可能です。

ただ、e-Taxでの電子申告を行うためには以下のものを揃えておく必要があります。

  • 推奨環境を満たすパソコンやスマートフォンなどの電子機器
  • 上記に加え、インターネットに接続できる環境
  • マイナンバーカード
  • 利用者識別番号、暗証番号が記載された通知書
  • 電子証明書

“利用者識別番号”や“暗証番号が記載された通知書”などの詳細は【e-Tax】国税電子申告・納税システムの公式サイトの「よくある質問(Q&A)」よりe‐Taxソフトを利用するために、準備しなければならないものはどのようなものがありますか。に記載されていますので、ご確認ください。

ここで最も注意してほしいのが、「パソコンなどの電子機器が“推奨環境”を満たしているかどうか」です。ここの確認を怠ると、申請がスムーズにいかないことがあります。

これは筆者の事例ですが、筆者のパソコンはMacBookのため、“Mac OS 利用者向け”と書かれたマニュアルに従って操作する必要があります。そして、これは筆者が普段あまり意識せず使っているからなのですが、ブラウザ(WEBサイトを閲覧するために使うソフト)にも指定があります。筆者は普段、Mac OSの標準ブラウザである「Safari」ではなく「Google Chrome」を使用しているのですが、MacBookを使ってe-Taxで確定申告を行う場合には「Safari」から作業を行う必要があります。確定申告は「年に一度」なこともあり、毎年1度は利用するブラウザを間違えてエラーを起こしています……。

先でも述べましたが、確定申告が「年に一度」のこともあり、電子申告の作業になかなか慣れないかもしれません。ですが、【e-Tax】国税電子申告・納税システムの公式サイトを見る限り、スマートフォンを用いて比較的手軽に申告できるシステムの開発も進んでいるようですから、控除をフルに活用するためにも、「習うより慣れよ」の精神で、電子申告を続けていきたいですね!

該当者がいる場合は活用したい「青色事業専従者給与」

簡単に説明すると、一緒に仕事をしてくれる(手伝ってくれる)配偶者や家族に支払う給与が経費として認められる、というもの。

「青色事業専従者給与」が可能になる要件には、まずこの給与が「青色事業専従者」に支払われたものであることが挙げられます。

青色事業専従者とは

以下の要件に該当する人を指します。

  • 青色申告を行う人と生計をともにしている配偶者やその他親族
  • その年の12月31日現在で15歳以上である
  • その年を通じて半年以上、青色申告を行う人の事業に携わっている

ここでは簡潔にまとめていますが、詳細はNo.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁をご覧ください。上記URLの本文に記載されている“生計を一にする”と“専ら従事している”の意味については、以下の記事が参考になります。

“生計を一にする”について
No.1180 扶養控除|国税庁 (「生計を一にする」意義について記載あり)

“専ら従事している”について
青色事業専従者給与で否認されないために<3分で読める税金の話>|ZEIKEN Online News|税務研究会 (「事業に専ら従事する」に認められないケースについて記載あり)
青色事業専従者給与の「専ら従事」の要件について – 論 説 (条文や裁判例から、その位置付けについて記載あり)

「青色事業専従者給与」として認められる要件

上記で挙げた

  • 給与が「青色事業専従者」に支払われたものである

のほか、

  • 「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること
  • 届出書に記載されている方法で支払われていること
  • 届出書に記載されている金額の範囲内で支払われていること
  • 青色事業専従者給与の額は、その労働の対価として認められる金額であること

が求められます。

後半の3つは、当たり前のことですが「家族への給与が必要経費になるからといって度を越した経費形状は認めませんよ」ということですね。

農家が知っておきたい節税対策②では、引き続き、控除を利用した節税対策についてご紹介します。

 

参考文献

  1. 農業者への税制支援(一覧表):農林水産省
  2. 【e-Tax 】国税電子申告・納税システム(イータックス)
  3. 青色申告特別控除額が変わります! – 国税庁
  4. 日本農業新聞 連載記事「節税への近道〜持続的経営のために〜」相続税申告相談プラザ
  5. 連載【専門家監修】農業経営の節税・補助金活用ポイント|マイナビ農業

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