コンピューターで野菜栽培、植物工場のメリット・デメリット

コンピューターで野菜栽培、植物工場のメリット・デメリット

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近年注目を集めている「植物工場」。

植物が生育するための環境をシステムによって制御し、土ではなく培養液を用いることで、土壌がなくても農作物を育てることができます。
また植物栽培に必要となる光も、太陽光だけでなく、蛍光灯やLEDといった人工光源による栽培も可能です。そのため十分な農地を確保できない都市部でも野菜を栽培することができ、かつレストランなど流通先の近くに展開することで、流通コストを抑えることができる利点もあります。

 

研究が進む植物工場

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2017年秋に千葉県・幕張メッセで行われた「次世代農業EXPO」でも植物工場の設備は様々な会社で展開されており、より良い収量や効率を求めて研究が続けられています。
実は植物工場は、1980年中頃からすでにブームが始まっていました。

1980年代中頃では、筑波科学万博での回転レタス生産工場などが植物工場の筆頭として知られていました。1990年代にはキューピーが工場野菜の製造に着手しています。
国が力を入れて研究に励み始めたのは2009年以降のこととされています。
昔から、植物工場の着想は生まれており、徐々に発展を遂げていたことがわかります。

現在、植物工場に課されている主な課題は、「植物工場の設備・機材のコストダウン」です。太陽光を利用せず、人工光源のみで完全にシステムで制御する植物工場は、確かに農産物の製造においては気候などの影響を受けない点では利点があるのですが、どうしても照明設備にコストがかかります。現在は照明設備の低価格化や、照明効率の向上、光源の性能向上などが、今後の研究に期待されています。

農林水産省は今後の植物工場の普及・拡大に当たり、“工場”とはいえあくまでも「農業」であることを前提とした上で、非農地への植物工場の設立による食料自給力の強化、季節や気候に左右されない植物工場による安定的な生産、高度な技術革新を目的としています。

 

メリット・デメリット

非農地での食料生産を可能にする植物工場には、具体的に以下のようなメリットが挙げられます。

・天候に依存しないため、計画的に農作物を安定供給できる
・栽培棚を垂直に設置することで、床面積あたりの生産能力を増やすことができる
・システムで生育を管理することが可能なため、品質を一定化することができる
・無農薬栽培で育てることができ、収穫時の雑菌量を農作地で栽培した時の約100分の1に抑えられる
・人工光源を調整することにより、特定の栄養成分を増加させることができる
・人工光源を調整することにより、植物の生長速度を早め、栽培期間を短縮できる
・栽培に必要な水の量をコントロール可能なため、農作地やハウス栽培の約50分の1の量で済む
・生産地が限定されず、輸送コストや輸送にかかる手間などを減らすことができる

デメリット

・初期コストが必要になる
植物工場のデメリットはこれに尽きます。そして現段階では、このことが植物工場の発展を阻む要因になっているとも言えるのです。
まず植物工場を設備するための建物にかかる費用が必要になります。またLEDなど人工光源や温度・湿度の調整のために必要な空調など設備にかかる費用が必要です。
現時点で植物工場の設置に伴う機材の費用は高く、システムで全てを制御する植物工場とビニールハウスによる水耕栽培を比較すると、設備コストだけで約17倍もの差が生まれると言われています。ビニールハウスなら1800万円程度で済むところが、植物工場だと3億円かかるのです。

日本での活用は今後どうなるのか

日本でも現時点では、“赤字”状態が続く植物工場は多いと聞きます。
しかし「国際次世代農業EXPO」で植物工場の設備を展開していたパナソニックは、「環境制御」「設備設計」「工場運営」の3つ、「農業の工業化」に必須のノウハウをバランスよく適用することができれば、赤字になることはないと説明していました。

植物工場のデメリットが生まれる原因には、

・栽培効率の低さ
・商品品質の低さ
・ランニングコストの高さ

が挙げられていますが、バランス良く適用されたノウハウを用意すれば、黒字化を目指すことも難しくはないとのこと。もちろん「レタス栽培を行うのであれば、約200kg/日の栽培が必要になり、小さく安定的に稼ぐことができる業界ではない」ということも指摘しています。
また植物工場のメリットでもある販売経路が整っていないと、せっかく工場で安定供給が可能になったところで、売上がなければ意味がないということも指摘しています。

現時点ではデメリットが先に目に入ってしまうように思える植物工場ですが、日本の農業が抱えている問題、農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地などを解決する糸口にはなるのではないでしょうか。

例えばすでにあらゆる場所で「人手不足」という問題が挙げられています。人手が足りず、作業が滞る場面が見られることでしょう。そんな時、すでに開発の進んでいる“全自動”の植物工場があれば、人手不足に悩まされることなく、安定的に食物が供給されます。活用されていない非農地に植物工場が立つ景色も、決して遠くはないのではないでしょうか。

 

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