注目されている「完全無人」農業ロボットについて

注目されている「完全無人」農業ロボットについて

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日本の農業が抱えている課題には、農業従事者の高齢化や後継者不足、労働力の不足などが挙げられます。そんな課題を解決する糸口の一つとして注目されているのが「完全無人」の農業ロボットの存在です。

昨今、「スマート農業」が注目されています。これはロボットやAI、IoT技術を駆使した新たな農業のことです。ロボットやAI等の力を借りることで、農作業の省力化や効率力アップが期待されているのです。

そこで本記事では、「スマート農業」で注目されている技術の一つである「完全無人」農業ロボットに着目し、すでに農業界に登場している技術や今後の展望について紹介していきます。

 

 

注目されている「完全無人」農業ロボット

<クボタ「農機自動運転」技術>

農機大手のクボタでは、「農機自動運転」技術が開発されています。中でも自動運転トラクタは、2017年6月にはモニター販売がなされており、2018年には一般販売をスタートすることになっています。

クボタの自動運転技術は、まず人がトラクタに乗り込み、手動運転で圃場を回ることから始まります。GPS(全地球測位システム)を駆使した技術で、人が運転したルートを「圃場マップ」として記録。そのマップをベースに自動で走行するのです。現段階では、リモコン操作によって運転・停止を操作する必要がありますが、走行ルートに沿った運転、耕す作業などは自動で行われます。

2018年から一般販売とされていますが、研究開発はまだまだ続いています。今後はより多い台数が走行できるような技術開発がなされていくようです。というのも、天候や気温変化に左右されやすい田植えや収穫作業では、同一日に作業が集中することが多いため、同時に複数台動かすことができれば、より効率的な作業が見込めるのです。

<ヤンマーの無人走行トラクター>

農機大手ヤンマーは、無人運転ロボットトラクターを開発しました。
農林水産省が定義する「農業機械の安全確保の自動化レベル」の「レベル2(使用者の監視下での無人走行)」に相当する無人トラクターです。自動運転のモードには直進方向に進む「直進モード」とハンドル操作も自動で行うことができる「オートモード」の2つがあり、作業人数や作業内容に合わせ、柔軟な対応が可能です。現時点では、有人トラクターで無人トラクターを監視しながらの操作となります。安全確保のためのセンサーなども装備されています。

 

 

手軽に活用できる「自律走行」ロボット

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先では農機大手2社が開発する「完全無人」農業ロボットを紹介しましたが、トラクターは大型農機ですし、価格も高いです。中山間地で農業を営む人や小規模農業を営む人にとっては、少々扱いづらいかもしれません。そこでここからは、小型の「自律走行」ロボットを紹介していきます。

<アグビー>

その見た目は「台車」ですが、農作業をする人がその台車を使って物を運ぶのではなく、アグビーが農作業する人の後ろを追従し、荷物運びや積み下ろしをサポートするというもの。加えて、畑の状態や収穫量の計測も同時に行ってくれるので、作業を行う農家は収穫など、自身が集中したい仕事にだけ意識を向けることができます。農作業のサポートをしつつ、畑の健康状態を可視化し、農業計画の効率化もはかることができる、小型の「自律走行」ロボットです。

<ロボット草刈機「MR-300」>

WADOが開発した小型ロボットは、自動で草刈りを行うロボットです。リモートコントロール等は不要で、充電を繰り返しながら草刈りをしてくれます。3輪駆動で高い走破性をもち、凹凸のある荒れた地面や勾配をもろともせずに走ります。超音波センサーで障害物を検知するので、障害物があると減速し、回避するようになっています。エンジンを使わないため、二酸化炭素排出量も0で、環境にも優しいのが特徴です。MR-300の管理や一部の操作はスマートフォンで行うことができます。

<受粉ロボット>

アメリカで開発されているのは、イチゴ類の受粉を自動化できるロボットです。米ウエストバージニア大学の研究チームが開発に取り組むこのロボットは、温室内を自律走行し、画像データを使ってイチゴ類の花の位置や大きさ、状態を検知します。そして受粉期が到来しているイチゴ類だけを把握し、ロボットアームで受粉作業を行います。

<除草ロボット>

スイスで開発されたのは、自律走行型の除草ロボットです。圃場を自律走行し、カメラと画像認識技術を用いて雑草を検知します。ロボットアームの先端には、除草剤を散布するためのスプレー先のようなものがあり、検知した雑草にピンポイントで散布します。ロボットに必要なエネルギーは、ロボットに設置されたソーラーパネルによる太陽光発電で賄われるため、環境に優しい仕様となっています。

 

 

「完全無人」農業ロボットの現状、今後の展望

農業従事者の高齢化や後継者不足により、年々就農者の数は減少傾向にあります。スマート農業は、労働力不足の解消や生産効率をアップさせるのに重要な役割を担うことでしょう。
現時点では、農業機械の自動化は発展途上と言えます。現時点では、農林水産省が定めている「農業機械の安全確保の自動化レベル」において、使用者の監視下でしか自動走行させることができません。予期せぬトラブルや事故が起きたとき、どのように対処すべきか、誰が責任を負うのかなど、自動走行そのものにまだまだ課題が残されているからでしょう。
しかし、人以外の労働力によって、農業がより効率のよい産業になることは期待できます。今後の技術革新に注目です。

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