アグリテックで変化する農家の労働体系と収入

アグリテックで変化する農家の労働体系と収入

アグリテックとは、農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。

アグリテックは農業が抱えている課題を解決していくことができます。例えば就労者が減っている現代において、農業の効率化をはかったり、熟練農家の知識を後世に伝えるためのノウハウづくりに役立ちます。

 

 

アグリテックで起こりうる変化

アグリテックで変化する農家の労働体系と収入|画像1

 

代表劇な変化としてあげられるのは「農業の効率化」です。就農者不足を解消する技術として注目されています。ロボットやIoT機器が農作業を代わりにやることで、人件費を削減することができ、かつ効率的に収穫量を増やすことができると期待されています。

またビッグデータなどを活用した「ノウハウ伝承」にも期待が高まります。従来の農業では、農業従事者の経験と勘が活かされてきました。そのため、経験を積むことこそがより良い農作物生産につながるとされてきた傾向にあります。しかしノウハウを可視化・分析することで、長年の経験なしに、より良い農作物生産を叶えることができると期待されています。個人の技術に頼ることなく、ノウハウを広めることができれば、今まで農業に携わってこなかった若い世代も、農業に取り組みやすくなることでしょう。

 

 

アグリテックで変化する農家の労働体系

アグリテックで変化する農家の労働体系と収入|画像2

 

アグリテックを活用することで生じた労働体系の変化について、事例を通じてご紹介します。

青森県弘前市でリンゴ農園を経営する森山聡彦(もりやまとしひこ)さんは、リンゴの生産プロセスを可視化するためのツール「ADAM(アダム)」の開発に携わっています。「ADAM」はクラウドシステムのひとつで、リンゴ生産作業を記録することができます。リンゴの木に識別タグをつけ、そのタグに印刷されているQRコードを読むことで、作業工程を記録することができるのです。これにより、作業工程やコストを正確に把握することができます。

「ADAM」を活用し作業コストを記録したところ、リンゴの販売価格で作業コストを割り戻した時、労働によって生み出されている価値が最低賃金以下だったと言います。リンゴ栽培の手間に対して利益が少ないと感じていたものが可視化されたのです。「ADAM」によって判明した価値のない労働には「袋掛け」が挙げられています。「袋掛け」は、リンゴの色味の鮮やかさや保存期間をキープするのに役立ちます。その結果販売価格を向上させることにつながっていたのですが、作業コストも上がっていたことが判明しました。販売価格が上がっても、作業コストが上がることで、利益は下がっていたのです。

「ADAM」は価値のない労働を増やさないために必要なクラウドシステムとなりました。

また北海道では、トラクターの自動操舵(そうだ)装置とその運転を支援するGPS(衛星利用測位システム)ガイダンスシステムの2017年度出荷台数が過去最多になったとあります。
このシステムを活用すると、人手不足が深刻化する中でも作業負担が軽減し、効率的な作業・労働の省力化につながると言われています。出荷台数が過去最多の要因には、利用者が増え、導入ハードルが下がったことが挙げられています。農作業に対する疲労軽減や、経験が不足している初心者でもラクに作業に向き合えるという点で利点があります。

アグリテックで農家の収入はどう変化するか

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アグリテックの活用で、収入にも変化が生じると言われています。
例えば農業生産法人有限会社トップリバーは「儲かる農業」を掲げ、アグリテックを活用しています。データ活用によって、農業経営の見える化をはかり、「農場ごとの収支状況」「前年同期との売上比較」などの収益推移を把握できるようにしました。それにより、利益を生み出す経営感覚を持った生産者の育成を続けていると言います。実際、収益などの数値は見える化することで目標や目的がはっきり見えてきます。ビッグデータ等の活用により、農業”経営”に関する意識は高まることでしょう。

またアグリテックを活用することで、高付加価値の製品を生み出すことでも収入に変化が生じます。門川町高糖度トマト部会は、糖度が7度以上という甘いトマトを生産・販売しています。
ここでは高付加価値トマトの生産に、苗1本ごとになる実の個数や糖度の割合などのデータの見える化をはかっています。品質ごとの収量を予測することで、売上の安定や販売先確保につなげていると言います。高付加価値トマトを効率よく育てることができれば、農業経営を支える収益のひとつとして期待が高まります。

 

 

アグリテック事例

今回の事例の他にも、様々なアグリテックが世に普及し始めています。
例えば「みどりクラウド」は、スマートフォンで「圃場の気温」「圃場の湿度」「日射量」「CO2濃度」「土壌水分」などをモニタリングできるシステムです。クラウドに情報を蓄積することができ、他の農家さんとデータを共有することができるため、このシステムを利用すればするほど情報が蓄積し、生育に適した環境データが揃っていきます。

「NEC 農業技術学習支援システム」は農家さんのノウハウを可視化することで、新規就農者の農業への取り組みを支援するシステムです。タブレット端末で学習できるため、ノウハウを効率よく学びながら農業に向き合うことができますね。

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