”物理的防除”で、化学農薬を使わずに農作物を病害虫から守るススメ

”物理的防除”で、化学農薬を使わずに農作物を病害虫から守るススメ

”物理的防除”で、化学農薬を使わずに農作物を病害虫から守るススメ│画像1
農作物を育てていくうえで、病害虫が全く発生しない作物は存在しないと考えています。それぐらい病害虫の発生はごく自然なことであり、農業従事者にとって厄介な出来事であると考えます。しかし作物を購入する消費者の間では、食の安心・安全志向が高まり、病害虫を駆除・防除するための農薬の存在があまり好ましくないような見方をされています。
そこでそのような消費者の思いを汲み取りつつ、病害虫から農作物を守る“物理的防除”の方法について、今一度見直してみませんか?

病害虫発生の要因を知ろう

まずそもそも、なぜ病害虫が発生してしまうのか、なぜ農作物は病害虫に弱いのかを知る必要があります。この理由は明確で、「生物多様性がなくなってしまったこと」「農作物の自衛力が弱いこと」「農作物の栄養価が高いこと」、この3つが挙げられます。

自然界の植物を安定的に収穫できるように、人の手が加えられたものこそが農業のはじまりとも言えます。元々食物連鎖の底辺に位置する植物は、今私達が病害虫と呼んでいる虫や微生物に食べられてしまうことはごく当たり前のことなんですよね。しかし人の手が加えられたことによって、生態系のバランスが崩れ、自衛のための辛味やエグ味が品種改良によって取り除かれました。そのうえ、私達が食べて美味しいと感じる栄養価の高い作物を、病害虫だって狙いに来るのは当たり前と言えます。

私達が厄介だと感じている病害虫も、元々はただの微生物であり、ただの虫です。そのため私達が農作物を収穫する上で害があるからといって捕殺してまわるよりは、病害虫を私達の手で“管理”できることが重要だと言えます。

物理的防除で病害虫から守る方法

病害虫をただの微生物、ただの虫と扱い“管理”するのであれば、農作物への影響も考えると、化学的に防除を行なうよりは、物理的な防除を行なった方が適していると言えるでしょう。

代表的な防除方法に「雨よけ栽培」と呼ばれる方法があります。日本は、四季によって気象変化のある国です。その環境をいかし、作物にとって好ましい状態に管理することで栽培の安定をはかっていました。

「雨よけ防除」も、栽培を安定させる方法のひとつですが、畑にアーチ状の支柱を設置し、天井部だけをビニールで覆って雨をよけるこの栽培法は、夏場の強い光を遮る効果や土壌を保湿・保温し、水分状態を安定させる効果もあります。これらの効果により、水滴によって伝播すると言われる病原菌を防ぐこともできるのです。

また害虫対策には、彼らの“色”に対する特性を活かすのがオススメです。害虫除けだけでなく雑草を生えにくくする効果もあるマルチですが、マルチの色を銀色または白色にすることで、害虫であるアブラムシなどの発生を抑えることができます。虫は植物の黄色や緑色を好み、白色を嫌う特性があります。また銀色のように光を反射し輝く色味に対しては、錯乱を引き起こします。この特性を活かし、農作物に害虫を近づけさせない方法です。

ただし、この色は益虫にとっても好ましくない色であり、農作物の生育に伴い、マルチから大幅に葉が飛び出してはマルチによる防除の意味もなくなってくるので、農作物生育初期段階に活用することをおすすめします。

色を利用した防除方法はまだあります。色のついた粘着質のテープを畑やビニールハウスなどに配置しておく方法です。こちらで利用する色は、虫たちが好む黄色や青色です。色に引き寄せられた虫たちを粘着テープで捕殺する方法です。難点としては、作物が粘着テープについた場合、非常にはがしにくいことと、ほこりがつきやすい、風にとばされやすい点が挙げられます。しかし、ある程度広い敷地での病害虫対策には検討してもよいのでは?と考えています。

植物の自衛力も活用しよう

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先にも紹介しましたが、農作物が病害虫に弱い原因には「自衛力が弱いこと」が挙げられます。彼らが元々備えていた自衛力である辛味や苦味、渋味やエグ味は、私達が食すには少々好ましくない味わいのため、品種改良の過程で、野生の植物と比べ軽減されています。そのため農作物は、野生種と比較すると圧倒的に病害虫への抵抗力がありません。

しかし現在、野生種が本来持っている抵抗性を、育種によって導入する研究も進められています。すでに登場している品種は「抵抗性品種」と呼ばれています。他にも「耐病性」と名付けられた品種もあります。例えば青枯病抵抗性品種のトマトや、べと病抵抗性品種のホウレンソウなどが登場しています。しかし“必ず病害虫に打ち勝つことができる”というワケではありませんので、ご了承ください。

もちろん化学的防除、農薬や除虫剤の利用も反対はしませんが、病気になった後で多用したりすると薬剤抵抗性をもった病害虫が発生することもあり、イタチごっこになってしまうのも現状です。そのため事前に農作物の弱点を知っておくことや、病害虫の予防を物理的に行い、育てている農作物の自衛力をある程度信じて見守ることも、病害虫対策には大切なのではないかと考えています。

“物理的防除”は、農業従事者にとってはごく当たり前に実践している防除方法かもしれませんが、その効果はまだまだ未知数と言われています。ぜひ病害虫対策方法のひとつとして検討してみてください。

 

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