ピーカンナッツとは。国産ピーカンナッツ栽培の現状。

ピーカンナッツとは。国産ピーカンナッツ栽培の現状。

ピーカンナッツは、豊かな風味と栄養価の高さからスイーツや料理に幅広く利用されている北米原産のクルミ科のナッツです。国内ではそのほとんどを輸入に頼ってきましたが、近年、農業の新たな可能性として国産化の動きが始まっています。

 

 

ピーカンナッツとは

ピーカンナッツとは。国産ピーカンナッツ栽培の現状。|画像1

 

北米原産のクルミ科の落葉高木から採れる実です。殻は薄く手で簡単に割ることができ、内部のナッツはクルミよりも甘みがあり、なめらかな食感が特徴です。

日本国内ではまだ知名度は高くありませんが、チョコレートやスイーツなど洋菓子によく使われるピーカンナッツは、栄養価や抗酸化力が高く、健康志向の高まりとともに需要が拡大しており、農業の新たな可能性として注目を集めています。

特徴と栽培について

そんなピーカンナッツは高い収益性と栽培期間の長さから、農業経営の観点で非常に魅力的な作物とされています。ピーカンナッツは成長が早く、6~10年ほどで結実を始め、15〜20年ほどで最盛期を迎えます。

ピーカンナッツは比較的手間のかからない栽培管理が可能とされており、農業従事者の高齢化が進む中での転作作物としても注目されています。

ただし、日本で普及しにくい難点もあります。ピーカンナッツは放っておくと20メートル以上にも成長する高木でもあるため、剪定による樹高のコントロールが欠かせません。また、枝や幹が風で折れやすく、倒木や裂傷を防ぐための支柱設置や補強作業なども必要です。さらに、日本の狭小な農地や気候条件に合わせた栽培法の確立も課題です。栽培ノウハウの蓄積や品種選定、収穫体制の整備が求められています。

 

 

国内栽培の現状

ピーカンナッツとは。国産ピーカンナッツ栽培の現状。|画像2

 

財務省の貿易統計によると、日本におけるピーカンナッツの輸入量は2023年に518トン。一方で東京大学の調査によれば、ピーカンナッツの国内栽培はほとんど行われていないのが現状です。年間約300トンが輸入に頼っているという報告もあります。

このような背景の中、国産ピーカンナッツの生産に乗り出す地域も出始めています。

代表的な取り組みが見られるのが、埼玉県の事例です。2019年から「ペカンナッツ」の名称で栽培を開始。2024年の収穫量は約60キロを見込み、2028年には100キロの生産を目標に掲げています。特に高齢化によって梨の栽培面積が減少する中、管理が比較的容易で高収益が期待できるピーカンナッツに関心が高まっています。

一方、岩手県陸前高田市では、東京大学と製菓会社サロンドロワイヤルが連携し、「農業再生と地方創生プロジェクト」として国産ピーカンナッツの産地化に挑戦しています。無人航空機などを活用した効率的な栽培法の開発や、アリゾナ州の研究機関との連携による適応品種の選定も進められています。市内には加工・販売拠点の設立計画もあり、地域ブランドとしての展開も期待されています。

しかし、前述した通り、国内での栽培には課題もあります。

まず、ピーカンナッツは苗を植えてから実がなるまでに5〜7年かかるため、初期投資の回収までに時間がかかります。また毎年の剪定や倒木や裂傷を防ぐための対策を講じる必要があります。

さらに、陸前高田市では苗木の安定生産が課題となっています。現時点では接ぎ木による苗木の生産試験が継続中で、苗の大量供給体制の確立には至っていません。

とはいえ、地域の期待が高まる作物であることには変わりありません。観光や加工品開発と組み合わせた多角的な展開によって、新たな地場産業として根付く可能性は十分にあるはずです。国産ピーカンナッツは、まだ始まったばかりの取り組みではありますが、遊休農地の活用、高齢化対策など、さまざまな課題解決の糸口になり得ます。今後の技術開発や支援体制の整備とともに、日本産ピーカンナッツのブランド化に向けた取り組みに期待が集まります。

 

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