今さら聞けない!?キュアリング処理とその効果について。簡易的なキュアリングでも効果はあるのか。

今さら聞けない!?キュアリング処理とその効果について。簡易的なキュアリングでも効果はあるのか。

キュアリング処理とは、サツマイモなどのイモの傷口が自然にコルク化して治る性質を利用した貯蔵のための操作を指します。人為的に適当な温度と湿度を与えることで、イモの傷口や表皮の下にコルク層を作らせて貯蔵中にイモが腐敗するのを防ぎます。

 

 

キュアリングの具体的な方法

今さら聞けない!?キュアリング処理とその効果について。簡易的なキュアリングでも効果はあるのか。|画像1

 

収穫したイモは、できるだけ早く温度30〜35℃、湿度85〜90%の定温庫に入れ、4〜7日静置します。この間、表皮の下にコルク層が5、6層生じます。上記日程でキュアリング処理が終わったら、温度13℃くらいに下げた定温庫で貯蔵します。

キュアリングの効果

キュアリングで生じたコルク層は、貯蔵中の腐敗の原因となる軟腐病や黒斑病などの病原菌が、イモの傷口から侵入するのを防ぎます。

キュアリング処理の効果は、病気への抵抗にとどまりません。寒さにも強くなります。

加えて注目すべきは品質への影響です。キュアリング中にイモのデンプンはデキストリンとショ糖に変化し、これが甘味と粘質の向上につながり、味が良くなります。イモ類は出荷された大部分が貯蔵され、数ヶ月にわたり出荷が続けられるため、貯蔵中の品質保持はとても重要です。

近年、一般消費者向けに焼き芋や干し芋を中心としたサツマイモの静かなブームが続いていること、海外で日本産サツマイモの甘味の強さが人気となり、輸出量が増加傾向で推移していることもあり、求められる品質と輸送中の病気や低温への抵抗力の強化として、キュアリング処理はより欠かせないものになっているといえます。

ちなみに令和4(2022)年のサツマイモの輸出額は27.9億円、輸出量は5,849トンで、野菜の中ではいちごに次いで第2位の主要品目となっています。

簡易的なキュアリングでも効果はあるのか

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北海道旭川市農業センターが公開する「令和3年度 旭川市農業センター試験成績書(概要版)」には、北海道立研究機構発行の「さつまいも栽培マニュアル(2018年版)」で紹介されている簡易的なキュアリング処理が貯蔵期間や品質に与える影響について調べています。

上記調査では‘シルクスイート’と‘ベニアズマ’が用いられ、実験条件は以下の通りです。

  • 調査に使用したイモの条件
    10月8日に収穫したイモ(200〜350g)は洗浄せず、各コンテナに20kgずつ入れた
  • キュアリング処理の条件
    以下の4つの調査区を設定、キュアリング処理と貯蔵を行う
  1. 無処理区
    キュアリング処理:なし
    貯蔵条件:収穫直後から定温庫(13℃)で貯蔵
  2. 無加温簡易処理区
    キュアリング処理:ビニールハウス内に透明ビニールで被覆したコンテナを4日間静置(A)
    貯蔵条件:キュアリング処理後、定温庫(13℃)で貯蔵(B)
  3. 加温簡易処理区
    キュアリング処理:(A)+コンテナの下に30℃に設定した電熱マットを設置
    貯蔵条件:(B)
  4. 通常処理区
    キュアリング処理:定温庫(温度30℃、湿度90%)にコンテナを4日間静置
    貯蔵条件:(B)
  • 調査中の環境変化①
    温度については、無処理区と通常処理区は設定どおりの環境で推移
    加温簡易処理区は気温及び日照の影響で、日中にコンテナ内の温度が40℃を超えることがあった。
    夜間、無加温簡易処理区は12℃程度、加温簡易処理区は16℃程度まで温度が低下することがあった。
  • 調査中の環境変化②
    湿度については、各区画ともに期間を平均して湿度90%程度をおおむね確保できた。
    (無処理区は88%、無加温簡易処理区は85%、加温簡易処理区は87%、通常処理区は88%)

全ての調査区でキュアリング処理直後に腐敗したイモはありませんでした。

‘シルクスイート’では、キュアリング処理によって貯蔵中の腐敗率に低下がみられました(無処理区では46%だったが、無加温簡易処理区では18%、通常処理区では12%だった。加温簡易処理区は記述なし)。また糖度は、キュアリング処理直後、貯蔵36日後、貯蔵69日後にそれぞれ測定したところ、加温処理区が最も高く、次いで通常処理区となりました。

一方で‘ベニアズマ’は無処理区であっても腐敗率が14%と低く、糖度についても各調査日で一定の傾向は見られませんでした。

上記成果報告以外の研究報告でも、品種ごとにキュアリングの効果に差が生じています。

たとえば齋藤泰宏・本多裕司『焼きいもの味質が異なるサツマイモのキュアリングによる澱粉の性質変化』(応用糖質科学 第11巻第2号 p.87-93、2021年)では、加熱調理したサツマイモの主成分であるマルトースの生成に関連した澱粉の糊化がキュアリングでどう変化するかについて調べています。その実験では、焼き芋の味質において粉質系に分類される‘ベニアズマ’と、粘質系の‘べにはるか’、その中間の‘五郎島金時’が用いられ、それぞれ異なる変化を示しています。以下に要旨の一部を引用します。

キュアリング直後の各試料の澱粉の糊化開始温度を比較してみると、各品種ともにキュアリングによって1℃程度低下する傾向がみられた。アミロペクチン鎖長の重合度6~12の存在比を比較してみると、「ベニアズマ」と「べにはるか」由来澱粉はキュアリングによってその含量の割合が増加したが「五郎島金時」由来澱粉はそのような変化がみられなかった。RV(※)の粘度上昇温度を比較してみると、「ベニアズマ」由来澱粉はキュアリングによって約1℃の低下がみられたが,他の澱粉に差異はみられなかった。また、セットバック値を比較してみると、「ベニアズマ」由来澱粉はキュアリング後に30%上昇したが、他の澱粉の値は 20%程度低下していた。

※RVAとは「ラピッド・ビスコ・アナライザー」という水に懸濁させたデンプン等の粘度特性を、パドル(羽根)の回転により測定する装置のこと。

これらのことから、簡易的なキュアリング処理でも十分効果は望めるものの、出荷時期や販売方法(加工の有無なども含め)に応じて、品種ごとに適当なキュアリングを施したり、効果を見極めたうえで処理する必要性が示唆されています。

なお、農業誌「現代農業」のウェブサイトでは、ごく小規模の簡易的なキュアリングが紹介されています。

サツマイモ越冬保存術 車内でお手軽キュアリング、紙袋で簡単保存 – 現代農業WEB

 

参考文献

  1. キュアリング | なるほど園芸用語 | カルチベ – 農耕と園藝ONLINE
  2. サツマイモの成分変化に及ぼすキュアリング処理と貯蔵条 件および加熱処理の影響
  3. かんしょをめぐる状況について
  4. かんしょの需要変化と品種の動向
  5. 4(参考調査)サツマイモのキュアリング処理比較調査
  6. 焼きいもの味質が異なるサツマイモのキュアリングによる 澱粉の性質変化
  7. サツマイモ越冬保存術 車内でお手軽キュアリング、紙袋で簡単保存 – 現代農業WEB

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