農作物の高温障害、なりやすい野菜と予防策とは。異常気象対策を今から!

農作物の高温障害、なりやすい野菜と予防策とは。異常気象対策を今から!

昨今、異常気象が日常となりつつあるように思えます。昨年は集中豪雨や41.1度という歴代最高気温を記録した猛暑が印象に残っています。中でも猛暑など高温状態が続くことが原因で農作物に「高温障害」が生じることがあります。

そこで本記事では、高温障害になりやすい野菜と予防策をご紹介します。今のうちから、異常気象対策を心がけておきましょう。

 

 

高温障害とは

農作物の高温障害、なりやすい野菜と予防策とは。異常気象対策を今から!|画像1

 

高温障害とは、気温の高さによって農作物の生育に悪影響が及ぶことを指します。高温障害によって、農作物の品質や収量低下が起こることも多々あります。具体的な障害としては、

  • 結球性の農作物の小型化
  • 肥大不足
  • 糖度不足
  • 短茎
  • 花の奇形化
  • 花色不良

などが挙げられます。

高温によって障害が発生するメカニズムには、まだまだ不明な点が多いのが現状です。また品質や収量の低下には、高温によって生じる病虫害の発生や地温上昇、土壌の水分不足なども関連するため、様々な要因が絡み合って障害を引き起こしていると推測されています。

考えられているメカニズム例

  • 高温により光合成能力が低下する
  • 高温により呼吸量が増加する
  • 代謝異常や消耗が多くなる

 

 

高温障害になりやすい農作物

農作物の高温障害、なりやすい野菜と予防策とは。異常気象対策を今から!|画像2

 

高温障害になりやすい農作物の代表例が稲です。高温により起こる影響には

  • 生育の前進
    →追肥時期や病害虫防除時期を逃す可能性あり
  • 出穂期〜20日間の平均気温が27度を超えると、白未熟粒(本来細胞にデンプンが詰まっていくはずなのに、デンプンが詰まりきる前に登熟してしまう)等が発生しやすくなる
  • 35度以上の高温が続くことで不稔(種子ができなくなる)が発生しやすくなる

また高温状態が続き、雨が少ないなどの条件により病害虫被害も増加します。

大豆

高温による起こる影響は以下の通りです。

  • 生育が早まる
  • 茎葉が萎えてしぼんでしまう
  • 開花期周辺に高温が続くと、開花数の減少や落花が多くなる

葉茎菜類(キャベツ、ブロッコリー、ホウレンソウ等)

育苗期の場合には、

  • 発芽不良
  • 生育が遅れる
  • しおれる
  • 葉焼け

などが生じます。

生育中には、

  • 生育が遅れる
  • 結球性の植物の変形
  • 芯腐れ
  • 高温による病害の発生(軟腐病、立枯病、根茎腐敗病など)
  • 高温による害虫の発生

が挙げられます。

果菜類(キュウリ、トマト、ナス等)

高温による起こる影響は以下の通りです

  • 害虫の発生が増える(ハダニ類、オオタバコガ等)
  • 発芽率の低下
  • しおれ
  • 葉焼け
  • 着果不良

などが挙げられます。

根菜類(ヤマトイモ、サトイモ、ダイコン等)

高温による起こる影響は以下の通りです

  • 発芽不良
  • 害虫の発生
  • 高温で土壌が乾燥することによる収量や品質低下

などが挙げられます。

 

 

高温障害予防策

農作物の高温障害、なりやすい野菜と予防策とは。異常気象対策を今から!|画像3

 

一番は水の管理です。

生育の様子をよく観察し、状態に応じてかん水等水の管理を行います。穂ばらみ期(幼い穂が急激に成長して、他の穂と同じくらいになる時期)以降で高温が続くようなら、飽水管理を行います。土が常に湿っている状態を保つために、かん水し、足跡に水が残るぐらいまで水が減ったら再びかん水を実施します。

また根を活性化させるために、出穂前30~50日には追肥を行いたいところです。ケイ酸カリ等を使って施肥を行いましょう。

なお高温により発生しやすい病害虫に関しては、動向に十分注意して、普段通り防除に努めましょう。

大豆

高温により茎葉に萎えしぼんだ様子が見られた場合には、日中以外の時間で畦間にかん水しましょう。

病害虫に対しては動向に注意し、普段通り防除に努めます。アブラムシ等、発生しやすい病害虫はある程度決まっていますから、彼らの苦手とする環境になるよう、できる防除法をあらかじめ施しておくことをおすすめします。

野菜

簡単に予防策を紹介していきます。

  • 遮光資材を利用する
  • 地温上昇抑制資材を利用する
  • かん水で土壌水分量を調整する
  • 肥料等を施し、地力を向上させる
  • あらかじめ、ハウス等の温度環境を整えておく

まず、遮光資材等を活用することをおすすめします。遮光資材によってハウスの温度や葉の温度などが上昇するのを抑えましょう。

ただし、遮光により光量が極端に低下してしまうと、それが品質や収量の低下を招くことがあります。野菜それぞれに必要な光量や生育適温をあらかじめ調べておき、それに適した遮光を行いましょう。

地温上昇抑制資材にはわらなども効果的です。土壌表面の温度上昇を抑制することができれば、同時に土壌の水分量低下を抑えることができます。

高温な状態下では、蒸散量が増えます。朝・夕にかん水を行い、土壌の水分管理を徹底しましょう。特に曇りがちな天気で雨が降った後などに晴れ上がる場合には、葉や茎が萎えやすいので、早めにかん水を行いましょう。葉っぱに霧吹きなどを用いて水を吹きかけるのも効果的です。

高温な時期がくる前に、冷房を導入したり強制換気ができるようにしたりと、ハウス等の設備を整えておくのも効果的です。

 

参考文献

  1. 高温障害-ルーラル電子図書館-
  2. 群馬県-高温に対する農作物への影響と技術対策 
  3. 高温に対する農作物管理について 平成27年8月5日岐阜県農政部農業経営課

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