今更聞けない「特別栽培農産物」とは。農産物の表示について徹底解説

今更聞けない「特別栽培農産物」とは。農産物の表示について徹底解説

世の中に出回るすべての「商品」は、含まれている原材料や商品特性を消費者に的確に伝えるため「表示」が義務付けられています。6次産業に携わる人であれば、加工した農産物や食品に「食品表示」などが身近な表示になるのではないでしょうか。農産物においては、どのような製法で農作物がつくられたのかを示す表示も必要です。

そんな中、自然環境に配慮した生産への関心や消費者の食に対する安全・安心志向の高まりから「有機」に注目が集まっています。有機農法でつくられたことをアピールするためには、第三者機関の認証を受け「有機JASマーク」を表示しなければなりません。

しかし、環境への配慮や消費者の食に対する安全・安心志向に対応した農法は「有機農法」以外にもあります。

本記事で着目するのは「特別栽培農産物」

「有機」と「特別栽培」の違い、わかりますか?

 

 

特別栽培農産物とは

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農林水産省で定められている「特別栽培農産物」の定義は、

その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下、で栽培された農産物

引用元:特別栽培農産物に係る表示ガイドライン 農林水産省

とあります。

有機栽培とは

一方、有機栽培は

化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう

引用元:【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~ 農林水産省

と定義されています。

原則として、化学農薬・化学肥料を3年以上使用していないことが挙げられます。

有機栽培と特別栽培の違い

「有機栽培」は化学農薬・化学肥料を使用しないことが原則として挙げられていますが、「特別栽培」の場合は、化学農薬・化学肥料を減らすことが目的となっています

また「有機栽培」はCODEX(国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)合同の食品企画委員会)の表示に基づいた原則や、認証システムが組まれていますが、「特別栽培」には国際的な取り組みがありません。

IP(Integrated Product)と呼ばれる似たような取り組みはあるものの、それらのテーマは農薬の削減と労働力を減らすことであり、遺伝子組み換え技術の利用が選択肢として加えられているため、日本でいう「特別栽培」とは少々意味合いが違います。

また日本で「特別栽培農産物」と呼ばれるものは、かつては以下のように細かく区分されていました。

  • 無農薬栽培農産物
    →栽培期間中、農薬を使用しない
  • 無化学肥料栽培農産物
    →化学肥料を使用しない
  • 減農薬栽培農産物
    →化学合成農薬の使用回数をその地域で使われている回数の5割以下に削減して栽培
  • 減化学肥料栽培農産物
    →化学肥料の使用回数をその地域で使われている量の5割以下に削減して栽培

なので、「特別栽培農産物」と挙げられるものの中には、消費者からの関心が高まっている「農薬を使わずに育てた野菜」も加わります。ただし「特別栽培農産物」に含まれる栽培方法は、表示方法に注意しなければなりません

「無農薬」表示はNG!

マルシェなどで「無農薬野菜」や「無農薬栽培」といった言葉を目にすることがあります。ですが、「無農薬」という表記は、農林水産省が定めた「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」では表示禁止事項、すなわち原則表示してはならない言葉として定められているのをご存知でしょうか。

表示のルールは、消費者に誤解や混乱を招かないために定められています。「無農薬」という表記には、消費者への優良誤認(「〜より優れている」といった誤った認識)を招く可能性があります。また、どんなにその畑で農薬を使わないよう徹底していたとしても、周囲の畑で農薬を使用していた場合、その影響を受ける可能性があります。

消費者に

  • 「登録認証の厳しい“有機栽培”よりも良い」
  • 「無農薬と書かれているもの以外は悪い」

と思い込ませないために「無農薬」表記は禁止されています。

また土壌中に農薬が残っていたり、周辺から農薬が流入、飛散する可能性から、「無農薬」という表記は適さないのです。

とはいえ、「農薬を使っていないこと」を一切謳えない訳ではありません。「農薬:栽培期間中不使用」の表示が推奨されていたり、ガイドラインに沿った表示を行うことが前提ですが、

  • 農薬未使用
  • 農薬を使っていません

などの表示をすることはできます。

なお「無農薬」という表記をしてしまうことに対する罰則はありませんが、JAS(日本農林規格)法による指導が入ったり、公正取引委員会による指導が入り、排除などの処分が下される場合も考えられます。

 

 

「特別栽培農産物」と表示するためには

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「特別栽培農産物」は“その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下、で栽培された農産物”です。

そのため表示をしたい場合には、表示したい作物の植え付け前から収穫までの間に、その作物が栽培された地域で通常使用されている量の半分以下の

  • 農薬使用回数
  • 化学肥料の使用量

であれば、表示できます。

表示のルール

表示する際に必要な表示事項は以下の通りです。

  • 特別栽培農産物であることを示す
  • 農薬、化学肥料をどの程度減らしたかを記載する
    または、どの程度使用していないかを記載する
  • 責任者情報を記載する
    (栽培責任者の氏名・住所・連絡先、確認責任者の氏名・住所・連絡先)
    (米の栽培の場合には、精米確認者の氏名・住所・連絡先)
    (輸入品の場合には、輸入業者の氏名・住所・連絡先)

表示事項はひとつの枠内に表示時する必要があり、「特別栽培農産物」を定義づける農薬、化学肥料の使用については、表現方法も決まっています。

<農薬・化学肥料を使用していない>

  • 農薬:栽培期間中不使用
  • 節減対象農薬:栽培期間中不使用
  • 化学肥料(窒素成分):栽培期間中不使用

<農薬・化学肥料の使用量を減らした>

  • 節減対象農薬:当地比 ○割減
  • 節減対象農薬:○○地域比 ○割減
  • 化学肥料(窒素成分):当地比 〇割減
  • 化学肥料(窒素成分):〇〇地域比 〇割減」

加えて、節減対象農薬を使用した場合には、節減対象農薬の

  • 名称
  • 用途
  • 使用回数

を記載する必要があります。ひとつの枠内におさめなければなりませんが、スペースの都合で記載ができないこともあります。そのような場合には、消費者が内容を確認できるよう、ホームページ等問い合わせ先を記載しましょう。

 

参考文献

  1. 特別栽培農産物に係る表示ガイドライン 農林水産省
  2. 【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~ 農林水産省
  3. 有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン
  4. 「無農薬」と「特別栽培農産物」は何が違う?正しい農産物の表示とは。 SMART AGRI
  5. 減農薬の方法論

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