海水から肥料を作る!?海水を利用した農業最新研究まとめ

海水から肥料を作る!?海水を利用した農業最新研究まとめ

水は農業に欠かせないものです。しかし、世界の人口増加や気候変動が進むなか、水不足や農地の塩類化、肥料原料の安定確保が大きな課題となっています。そこで注目されているのが、海水を農業資源として活用する取り組みです。

 

 

海水から肥料を作る

海水から肥料を作る!?海水を利用した農業最新研究まとめ|画像1

 

農林水産省が毎年選定している「農業技術10大ニュース」、その2025年版に、海水を利用した研究成果が報告されています。開発されたのは、肥料原料となるカリウムを海水から効率よく回収する技術です。これにより、肥料原料を国内で生産できることが期待されています。

カリウムは窒素、リンと並ぶ肥料の三大要素ですが、日本はそのほとんどを輸入に依存しています。そのため、国際情勢による供給不足や価格高騰への備えとして、国内資源からカリウムを確保する技術が求められています。

海水には大量のカリウムが存在するものの、濃度は約0.04%と低く、性質の似たナトリウムイオンが重量比で約25倍含まれています。このため、海水からカリウムだけを高純度で取り出すことは困難でした。

「2025年農業技術10大ニュース」に掲載された産業技術総合研究所(以下、産総研)が開発した、海水に含まれるカリウムイオンを選択的に回収する技術が実用化されれば、海水から肥料原料を直接かつ安定的に回収し、カリウム肥料の国産化と食料安全保障の強化につながる可能性があります。

 

 

海水農業という農業の形

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海水農業とは、海水を利用して、塩分に強い作物を陸上や海面で栽培する農業です。

食用野菜のほか、油料、飼料、医薬品原料などに利用できる植物が栽培対象となります。また、海水をそのまま作物に与える方法だけでなく、海水を温室の冷却や淡水の製造に利用する取り組みも広い意味での海水利用型農業といえます。

日本の事例

佐賀県太良町の社会福祉法人佐賀西部コロニーでは、有明海の干潟の土を肥料として使う伝統的な農法をヒントに、ミカンやサツマイモの栽培へ海水を取り入れてきました。ミカンには、果実が直径約3センチになった頃から、塩分濃度を調整した海水を収穫までに4~5回散布します。サツマイモでは、植え付け前に海水を土壌へ散布し、生育後は20~30倍に薄めて根元や葉に与えています。

三重県志摩市では、農業ベンチャーのカルティベラが、雨水で薄めた海水を使ってトマトを育てています。海面上昇や塩水の侵入などによって淡水を確保しにくくなる地域でも栽培できる技術を目指した取り組みです。

世界の事例

英国のSeawater Solutionsは、海水と塩分に強い「塩生植物」を利用する農業を提案しています。

同社によると、英国で農地に海水を導入し、湿地環境を再生しながら塩生植物を栽培する取り組みを進めています。主な作物は、海岸や塩性湿地に自生するサンファイア(シーアスパラガス)などの、海水や塩分を含んだ土壌で育つ野菜です。
前述したように、「海水農業」を広い意味で捉えると、海水をそのまま作物に与える方法だけが海水農業ではありません。たとえば、海水と太陽光を利用して、乾燥地で作物を育てる技術もまた、海水を利用した農業といえます。
世界では人口増加に伴って食料需要が拡大する一方、耕作可能な土地の減少や土壌劣化、水不足、気候変動が農業を圧迫しています。農業は世界の淡水使用量の約70%を占めるため、従来の方法のまま生産量を増やせば、水資源への負担も大きくなります。

ヨルダン南部の砂漠で進められた「サハラ・フォレスト・プロジェクト」では、紅海から引いた海水と太陽光発電を組み合わせ、野菜の栽培に取り組んでいます。海水をしみ込ませた壁に外気を通し、水分を蒸発させることで、温室内を涼しく湿った環境にします。これにより作物から失われる水分を抑え、淡水の使用量を減らせます。海水を直接作物に与えるのではなく、蒸発と凝縮によって得た淡水を栽培に利用する仕組みです。温室の外では、塩分に耐えられる植物も育てられています。
同様の技術はオーストラリア南部でも商業化されました。サンドロップ・ファームズでは、海水を淡水化し、太陽熱を利用して大規模な温室でトマトを生産しています。乾燥地でも地下水や化石燃料への依存を減らしながら農業を行える可能性を示しました。

もちろん課題も

サンドロップ・ファームズの事例では、海水を利用した施設の建設費が高く、当初の計画どおりに再生可能エネルギーだけで運営する難しさも明らかになっています。

「海水農業の発展:気候変動への政策的選択肢」(原題:The development of seawater agriculture: Policy options for a changing climate)という論文では、海水農業を行う農家の利益が、どのような条件によって左右されるかを経済モデルで分析しており、その中で、海水農業を広げるには、耐塩性品種や栽培設備といった技術だけでなく、市場を意識した経営や現代的な管理手法も必要だと指摘しています。また、すべての耐塩性作物が商品として採算を取れるとは限りません。

さらに、沿岸地域では台風、高潮、海洋汚染などの被害を受けやすいため、災害基金や農業保険による安全網も欠かせません。同論文は、海水農業には大きな可能性がある一方、無条件に大規模化するのではなく、環境への影響、商品の品質、市場性を見極めながら進めるべきだと結論づけています。

とはいえ、海水が実用的に利用できるようになれば、海岸に近く、日射量が多く、淡水に乏しい地域において、食料生産のほか緑化、水資源の確保を同時に進められる有力な選択肢になり得るはずです。

 

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