農作物はなぜ重金属を吸収する?そもそも重金属とは。作物や人体への影響とは。

農作物はなぜ重金属を吸収する?そもそも重金属とは。作物や人体への影響とは。

農作物は、土壌から水や養分を吸収して生育します。しかし、その過程でカドミウムやヒ素などの人体に有害な元素まで取り込み、体内に蓄積することがあります。

植物はなぜ、生育に必要のない元素を吸収してしまうのでしょうか。本記事では、そもそも重金属とは何か、農作物が重金属を吸収する仕組みや、作物と人への影響について解説します。

 

 

そもそも重金属とは

農作物はなぜ重金属を吸収する?そもそも重金属とは。作物や人体への影響とは。|画像1

 

重金属は、一般には密度の大きい金属元素をまとめた呼び方です。環境や農業の分野では、主に次のような元素が重金属として扱われます。

  • カドミウム
  • 鉛
  • 水銀
  • クロム
  • ニッケル
  • 銅
  • 亜鉛

重金属として扱われるものの中には、人体に有害なものもあれば、必須ミネラルとして生体に必要とされるものもあります。また、ヒ素は厳密には金属ではなく、金属と非金属の両方の性質を持つ「半金属」です。

重金属はすべて有害とは限らない

前述した通り、すべてが有害とは限りません。重金属という言葉には「毒」という印象を覚えるかもしれませんが、すべての重金属が植物に不要なわけではありません。

たとえば、鉄や亜鉛、銅、マンガン、ニッケルなどは、植物が正常に生育するために必要な元素です。鉄は葉緑素の形成などに関わり、亜鉛や銅などは酵素の働きを支えています。

ただし、これらの元素にも適切な濃度があります。不足すれば生育障害が起こりますが、過剰に吸収されても植物に有害です。

一方、カドミウムや鉛などは、植物にとって基本的に必要のない元素です。それでも土壌中に吸収可能な状態で存在すると、根から取り込まれる場合があります。

 

 

農作物はなぜ重金属を吸収するのか

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植物の根は、土壌中の水に溶けている無機成分を吸収します。窒素、リン、カリウムなどの養分だけでなく、さまざまな元素が土壌溶液に含まれているためです。

植物には必要な元素を選んで取り込む仕組みがありますが、不要な元素を完全に排除できるわけではありません。カドミウムなどは、必須元素と化学的な性質が似ていることから、本来は鉄や亜鉛、マンガンなどを取り込むための経路を通って根に吸収されることがあります。

つまり、植物がカドミウムを養分として必要としているわけではなく、植物は土壌中のさまざまな無機物を根から取り込む過程で、重金属をはじめとする土壌汚染物質も一緒に吸収しているのです。

土壌に含まれる全量が吸収されるわけではない

とはいえ、土壌中に重金属が存在していても、そのすべてが作物に吸収されるわけではありません。重要なのは、土壌に含まれる総量だけでなく、その元素が土壌中に溶けやすい状態・移動しやすい状態にあるか、植物に取り込まれやすい状態にあるか、という点です。

農作物への吸収されやすさには、主に次の条件が関係します。

  • 土壌のpH
  • 土壌の酸化・還元状態
  • 有機物や粘土鉱物の性質
  • 競合する養分の量
  • 作物や品種の違い
  • 水管理などの栽培条件

たとえば、土壌が酸性になると、カドミウムなどの一部の金属が溶け出し、作物に吸収されやすくなることがあります。

水田では、水を張った状態と落水した状態で土壌の酸化・還元状態が変わります。一般に、湛水状態ではカドミウムが溶けにくくなり、イネへの吸収が抑えられます。その一方で、ヒ素は湛水によって吸収されやすくなる場合があります。

吸収された重金属はどこに蓄積するのか

根から吸収された元素の一部は根にとどまり、別の一部は茎や葉、子実などへ運ばれます。どこに蓄積しやすいかは、元素と植物の組み合わせによって異なります。

たとえば、カドミウムは根から地上部へ移動し、コメやダイズなどの子実に蓄積する場合があります。一方、鉛は比較的根にとどまりやすいとされています。また、葉物野菜では根からの吸収だけでなく、土壌粒子や粉じんが葉の表面に付着する可能性も考える必要があります。

早稲田大学の研究紹介では、カドミウムを蓄積するタバコやハクサンハタザオを調査したところ、葉の表面にある毛状の組織にカドミウムが蓄積していたことが紹介されています。植物は、有害元素を特定の組織や細胞に隔離したり、別の物質と結合させたりすることで、その毒性を弱める場合があります。

 

 

農作物への影響は?

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重金属類・有害元素を過剰に吸収すると、植物では次のような障害が起こる可能性があります。

  • 発芽や初期生育が悪くなる
  • 根の伸長が抑えられる
  • 葉が黄化する
  • 光合成が妨げられる
  • 水や養分を吸収しにくくなる
  • 生育量や収量が低下する
  • 枯死する

有害元素は、植物体内の酵素の働きを妨げたり、活性酸素の発生を通じて細胞を傷つけたりします。また、必要な元素の吸収や代謝を妨げることもあります。

とはいえ、カドミウムや鉛、ヒ素などは、自然界にもともと存在する元素です。そのため、一般的な圃場にも微量に含まれています。土壌から重金属が検出されたからといって、そこが「汚染された圃場」である、あるいは収穫物が危険であるという意味ではありません。実際に問題となるかどうかは、土壌中の濃度や作物への移行しやすさ、可食部の濃度などによって判断されます。

たとえば、食品を通じて摂取したカドミウムの一部は体内に吸収され、主に腎臓に蓄積します。カドミウム濃度の高い食品を長期間摂取した場合には、腎機能障害を引き起こす可能性がありますが、食品にカドミウムがわずかに含まれているだけで、直ちに健康被害が起こるという意味ではありません。

また、厚生労働省「米に含まれるカドミウム」に関するQ&Aによると、日本産の米1kgには平均して0.06mgのカドミウムが含まれているとありますが、毎日お米を食べてもカドミウム摂取量の実態は耐容週間摂取量※より低いレベルにあり、“一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられる”と示されています。

※毒性試験などに基づくリスク評価により、人が一生涯、毎日摂取したとしても健康に悪影響を与えない量として推定されたものです。(引用元:健康・医療カドミウム基準値を超えるコメの流通について)

対策に役立つ!?重金属を蓄積しても生育できる植物

一般的な植物は、重金属濃度が高い土壌では生育を阻害されます。一方、特定の金属を高濃度に蓄積しながら生育できる植物も存在します。また、こうした植物が蓄積した元素が動物による食害を防ぐ役割を果たす可能性も研究されています。

こうした性質を利用し、汚染土壌から有害元素を植物に吸収させ、収穫によって除去する方法が「ファイトレメディエーション」です。重金属を多く吸収する性質は土壌浄化では役立つ可能性があると期待されています。

気になる場合は自治体などに相談を

国内で健康や作物の生育に影響するほどの汚染が確認された農用地は、農地全体から見れば限定的です。鉱山や精錬所、工場跡地の周辺ではなく、汚染水の流入や由来の不明な資材の投入といった心当たりもなければ、必要以上に神経質になる必要はないと思われます。日頃は通常の土壌診断を行い、土壌pHや施肥量を適正に管理することが基本です。

一方、圃場の来歴や周辺環境、過去に使用した資材などから重金属の蓄積が気になる場合は、自治体の農政・環境部門、普及指導センター、農業試験場などに相談してください。一般的な土壌診断には重金属が測定項目として含まれないことが多いため、必要な元素を指定した専門分析を行います。食品としての安全性を詳しく確認したい場合には、土壌だけでなく収穫物の可食部を分析することも有効です。

 

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