バイオロジカルファーミング(Biological Farming、生態調和型農業)とは何か。

バイオロジカルファーミング(Biological Farming、生態調和型農業)とは何か。

バイオロジカルファーミングは、日本語で生態調和型農業とも訳されます。アメリカの肥料製造・販売会社Midwestern BioAgによると、バイオロジカルファーミングとは、持続可能で収益性の高い農業生産システムを表しています。

 

 

バイオロジカルファーミングの概要

バイオロジカルファーミング(Biological Farming、生態調和型農業)とは何か。|画像1

 

従来型農業と有機農法の中間

Midwestern BioAgのウェブサイトでは、バイオロジカルファーミングは自然と連携して行われる農法であり、土壌のバランスを整え、化学物質の使用を減らしながら、健康で害虫や病気に強い作物を生産する、と説明しています。

アリゾナ州立大学のウェブサイトで、Midwestern BioAgのCEOに就任したアンソニー・マイケルズ博士は、バイオロジカルファーミングは従来型農業と有機農法の中間である、と述べています。同氏は、バイオロジカルファーミングは農業における生物学的および化学的なアプローチをすべて使用できるが、農業生産システム全体で化学物質や可溶性肥料への依存を減らすことを優先する必要がある、とも述べています。

化学物質は使用しないという定義も

一方で、オーストラリアの農業関連製品製造会社GroundGrocerのウェブサイトでは、持続可能性と収益性の高い農業生産システムであることに違いはないものの、その方法として「微生物の改善に焦点を当てた化学物質を使用しない農業方法」として紹介されています。

GroundGrocerによれば、有機農業、バイオダイナミック農法、持続可能な農業、ナチュラルシーケンスファーミング(自然継承型農業)がバイオロジカルファーミングに含まれるとしています。ただし、これら4つの農法に限定されるものではない、とも説明します。

 

 

バイオロジカルファーミングが求められる背景

バイオロジカルファーミング(Biological Farming、生態調和型農業)とは何か。|画像2

 

現在の栽培管理における殺虫剤や除草剤、人工肥料などへの依存度の高まりがあげられます。

生産性が高く、持続可能な農業生産を維持するためには、土壌中における「肥料の三要素」やミネラルの利用可能性や活発で多様な土壌生態系の存在が必要不可欠です。しかし従来の慣行農業で行われてきた連作や、殺虫剤や除草剤への過度な依存、肥料の過度な適用などは、植物が土壌中の栄養素を利用するのを妨げ、土壌生態系の多様性に悪影響を及ぼします。

またこれらの問題は環境面だけでなく、原料の物価高など費用面にも影響を及ぼします。

このような背景から、従来の農法の代替手段の1つとして表れたのがバイオロジカルファーミングです。

 

 

バイオロジカルファーミングの目的

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従来の栽培管理では、栽培を害する昆虫や病気、雑草などが生じた場合には、殺虫剤や農薬を使用して除去する必要がありました。しかしバイオロジカルファーミングは、土壌環境、特に土壌微生物が農業生産システムの基礎であるという認識で行われるため、病害虫や雑草といった問題の「症状」ではなく「原因」に対処することを目的としています。

バイオロジカルファーミングが重視する土壌

バイオロジカルファーミングでは、土壌の生態系や栄養のバランスを整えることを重視します。では、持続可能で収益性の高い農業生産システムとして機能するためにはどのような流れが必要になるのでしょうか。

まず大切なのは土壌の状態を把握することです。土壌の分析を行い、土壌の栄養バランスを確認します。バランスがとれるよう、従来の肥料として標準的な窒素、リン、カリウム、ミネラルを適用します。

次に、化学的に合成された「炭素」の投入に変わる手段として、堆肥や緑肥、家畜糞尿や作物残渣などの活用、輪作やカバークロップの使用があげられます。土壌の健康状態や微量ミネラルの利用可能性を改善すること、殺虫剤や殺菌剤の使用量を減らすことができるとされています。

圃場においては以下のような土壌改善策がとられます。

  • 微生物の活動について検査と分析を行い、土壌ミネラルのバランスをとる
  • 土壌物理性(団粒構造など)、土壌生物性(微生物など)、土壌化学性(栄養など)が植物に有益になるよう、土壌改良剤を適用する
  • 栽培効率と根の成長の改善のため、従来の肥料にフミン酸(腐食物質の1つで、土壌の保肥性をよくする)を加える
  • 発芽を最適化するため、栄養学的および生物学的種子粉衣を適用する
  • 土壌炭素と利用可能な栄養素を得るために、特定の微生物を植物残渣に適用する

それから殺虫剤や除草剤の使用は、必要な場合のみに限定します。

アリゾナ州立大学のウェブサイトでマイケルズ博士は、自然連携して行われる農法であるバイオロジカルファーミングは、二酸化炭素排出量の大幅な削減や干ばつ耐性の向上、水利用の改善、養分流出の削減などに役立ち、環境上の利点は計り知れない、と述べています。

最後に、Midwestern BioAgのウェブサイトで紹介されている、バイオロジカルファーミング6つの原則を記します。

  1. 土壌を検査し、作物にバランスの取れた栄養を与える
  2. 土壌と植物の根に対するダメージを最小限に抑える肥料を使用する
  3. 殺虫剤と除草剤を使用する際は、植物が遺伝的に持っている抵抗性を最大限に引き出すため、土壌や植物の状態に合わせた栽培管理法に沿い責任を持って使用する
  4. 緑肥作物や輪作によって、植物の多様性を最大限に高める
  5. 有機物の発酵と、土壌、空気、水のバランスを管理する
  6. 堆肥、緑肥、家畜糞尿、作物残渣からの炭素を土壌に与える栄養として活用する

参考文献

  1. About Biological Farming
  2. Biological Farming.
  3. Sustainable Agriculture: The Future is Biological

(上記2024年1月9日閲覧)

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