高需要作物で稼ぐ。パプリカの広がる需給ギャップと国産化への挑戦

高需要作物で稼ぐ。パプリカの広がる需給ギャップと国産化への挑戦

食卓を彩る鮮やかなパプリカは、サラダや炒め物、惣菜などに欠かせない存在です。日本国内では、そんなパプリカの多くを海外からの輸入に頼っています。独立行政法人農畜産業振興機構などの情報によると、日本のパプリカ輸入量は、1993年にオランダから初めて輸入されて以来流通量が増加しました。年度によって差はありますが、近年の国内流通量の大半は輸入品が占めており、特に近年は韓国産の占める割合が高くなっています。2022年には韓国が輸入先全体の約93%を占めています。

しかし、輸入依存度の高さは、為替や国際情勢にも左右されやすいリスクをはらみます。近年の円安や燃料高騰によって輸入コストが上昇し、スーパー店頭での販売価格も不安定になりました。

一方で、近年の年度ベースでは国産品が流通量の約2割程度を占める年があり、輸入品に比べると供給量はまだ少数派です。国産品への注目度の高さはパプリカに限りませんが、農林水産省が実施した「アフターコロナを見据えた野菜・果物の消費動向調査」(令和4年度)には国産品に対する要望・意見が見られます(以下、一部引用)。

  • 国産の冷凍野菜がほしい
  • 売り場に国産の野菜がもっと並ぶようにしてほしい
  • 可能な範囲で国産野菜を増やしてほしい
  • 安心して食べられる国産野菜を、小人数でも食べやすいように少量パックや一本、一個売りを増やしてほしい
  • 多少高くても国産野菜を希望

国産品は品質の高さや安心感といった点で人気も高いのですが、供給量が追いついていません。その背景には、国内生産コストの高さ、施設整備への投資負担、周年出荷の難しさなど、複数の要因が横たわっています。

 

 

国産パプリカの拡大が難しい理由

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第一にあげられるのがコスト面の課題です。

パプリカは高温多湿に弱く、国内では施設園芸での栽培が中心になります。高品質な実を安定して収穫するためには、温度・湿度・光量などを精密に制御する必要があり、ハウス設備や暖房・冷房の導入コストが高額になります。加えて、国内では人件費やエネルギーコストも高く、韓国などの大規模輸出国と比べると単価面での競争力が劣るのが現状です。

たとえば、韓国では2000年代初頭から政府主導でパプリカの輸出向け生産が進められ、ICTを活用した統合環境制御や、労働分業の効率化が進みました。その結果、韓国の単位面積当たり収量が日本より高い傾向にあるとされています。

国内でも一部の自治体ではハイテク温室の導入が進んでいますが、初期投資の大きさから参入は容易ではありません。特に中小規模の農家にとって、年間通しての安定出荷を目指すための設備投資は大きな負担になります。

 

 

国産化を後押しするのは何か

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それでも、国産パプリカの生産拡大をめざす動きは全国で着実に広がっています。

近年注目されているのが、ICTやAIを活用した「スマート温室」の導入です。たとえば、センサーによる環境データの収集と自動制御システムを組み合わせ、光合成効率を最適化することで生産性と品質の両立を実現する、という仕組み。こうした仕組みにより、従来よりも人手をかけずに収量を確保できるようになります。

広がる販路と可能性

販路の多様化も、国産化を後押しする要素です。

従来は大手スーパーや量販店が中心でしたが、近年はオンライン販売や地域直売所、契約栽培など、柔軟な販売モデルが増えています。環境負荷の少ない国産パプリカを求めるレストランや給食事業者・食品メーカーとつながることができれば、直接取引もできるかもしれません。

また、加工用パプリカの需要も拡大しています。先述した「アフターコロナを見据えた野菜・果物の消費動向調査」の国産品に対する要望・意見にもあるように、冷凍食品やレトルト惣菜向けに、色鮮やかで傷みにくい国産品のニーズもあります。生食用、加工用ともに安定的に供給体制を整えることができれば、販路拡大の可能性があります。

 

 

需給ギャップを埋めるには

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パプリカの国産化には、もちろん栽培も重要ですが、「どう流通させるか」「どう売るか」も鍵といえます。そこで大事になるのが以下の3つの視点です。

  • 省力化・効率化の推進:スマート農業技術の導入により、限られた人手でも安定的に生産できる体制を整えること。
  • 流通・販路の再構築:地域単位での共同出荷や契約栽培の拡充、地産地消型の販売ネットワークなど、販路を広げること。
  • ブランド化:「国産パプリカ=高品質・安心」という価値を明確に伝えること。

パプリカは今後も需要の拡大が見込まれます。輸入依存度の高さから脱却できれば国内農業の新しい柱にもなり得ます。実際、農畜産業振興機構の調査では、国産パプリカの生産量はここ10年程度で約8割増加しています。

国産品の需給ギャップを埋める取り組みは、単なる数量の問題ではありません。日本の農業を持続可能にすることそのものともいえるのではないでしょうか。

 

参照元ウェブサイト

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