新たな産業となるのか?!世界の昆虫食の現在。

新たな産業となるのか?!世界の昆虫食の現在。

食糧危機の話題で度々「昆虫食」というキーワードを見かけます。

2022年7月11日、国連広報センターは『世界人口推計2022年版』にて、世界人口は2022年11月15日に80億人に達するという予測を発表しました。世界人口が増加する中、食料保障の観点から注目を集めているのが、新たなタンパク供給源として注目される昆虫です。

 

 

昆虫食の重要性

新たな産業となるのか?!世界の昆虫食の現在。|画像1

 

昆虫が注目される理由には、タンパク質、脂質、ビタミンが豊富な食糧でありながら、生産効率が高く、昆虫の飼料に食品廃棄物が活用できるなどのメリットが挙げられます。

すでに飼料用も含む昆虫食(参考文献1.にはこの「昆虫」にはクモ等も含み、昆虫亜門に属する昆虫に限らないという注意書きがある)の市場規模は、2018年に1,000億米ドル(2022年12月12日のレートで日本円にして、約13兆円)に達しています。

「昆虫食」と聞くと、“新たなタンパク供給源”として注目されていることもあり、新しさを感じる人もいるかもしれませんが、国際連合食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization of the United Nations)によると、世界の20億人超が1,900種以上の虫を食料としています。

FAOとオランダ・ヴァーヘニンゲン大学が共同で行った調査研究によると、全世界で甲虫類(コガネムシやカブトムシなど)やケムシ、ミツバチなどのハチおよびアリ、イナゴなどが多く消費されています。

先で紹介した通り、昆虫はタンパク質や脂質、ビタミンなどが豊富です。カルシウムや鉄分、亜鉛の量の豊富さは特徴的で、たとえば鉄分含有量は牛肉が乾燥重量100g当たり6mgなら、イナゴ類には乾燥重量100g当たり8~20mgの鉄分が含まれています。

 

 

昆虫生産の課題

新たな産業となるのか?!世界の昆虫食の現在。|画像2

 

昆虫食といっても、昆虫そのままの形で食用とする場合もあれば、粉末状やのり状にする場合、タンパク質や脂質などの有効成分のみを抽出して食品原料向けに加工するなど、さまざまな方法が挙げられます。いずれにせよ、昆虫食を一般的な食料として提供するには高品質な昆虫が安定供給される必要があります。

しかし昆虫生産には昆虫ならではのデメリットもあります。たとえば家畜に比べ世代交代が短い昆虫は、近交退化(近親交配により個体の近交度(近交係数)が高まると生物としての適応性が低下し、繁殖性、強健性、発育性などの能力が低下する現象|出典元:近交退化-ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA)や飼育密度が高くなることで集団死につながるなどの課題が発生しやすいといわれています。

 

 

世界の昆虫食の現在

新たな産業となるのか?!世界の昆虫食の現在。|画像3

 

生産効率や食品としての安全性など、まだまだ課題はあるものの、世界には昆虫の産業化のために動く企業や教育機関が存在しています。

まず興味深いのがラオス人民民主共和国(以下、ラオス)とタイ王国(以下、タイ)の大学に食用昆虫の養殖を学ぶコースがあることです。ラオスでは国立大学の農学部でコオロギの養殖について講義が行われており、タイでもコンケン大学農学部に「産業昆虫学」が設けられています。

次にオランダの事例を紹介します。オランダでは2008年にオランダ昆虫農家協会(VENIK)が設立されました。VENIKは食用だけでなく飼料や医薬品としての昆虫の役割にも注目し、昆虫利用のための法律や品質基準、市場の開拓に携わっています。すでにHACCP(ハサップ)※基準に準拠した生産ラインが設置されており、イエローミールワーム、レッサーミールワーク、イナゴの3種類の昆虫が食用として生産され、フリーズドライで販売されています。

※HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です(出典元:HACCP(ハサップ)|厚生労働省

オランダのProtifarm社は食用・飼料用昆虫の育成から加工・販売を行っています。2015年にはガイマイゴミムシダマシの幼虫の飼育箱を縦積みし、限られた敷地面積での大量飼育を可能にする「垂直飼育」を開始しました。昆虫の生産は完全自動化され、人件費の削減と生産効率の向上に寄与しています。

2021年4月にはProtifarm社は飼料用食用昆虫を供給するフランスのYnsect社に買収されました。食品・飲料業界に関するメディア「Food navigator Asia」が2022年1月11日に公開した記事によると、Ynsect社は人間の食品やサプリメント、ペットフード、植物肥料などに昆虫を用いています。現在Ynsect社は日本やアメリカでの人間用・動物用栄養事業の拡大を計画しているのだとか。

日本も例外ではありません。日本では無印良品を展開する良品計画がコオロギを利用した商品を販売したことが広く知られています。冷凍食品メーカー大手のニチレイは2022年7月15日に昆虫食のスタートアップ企業「TAKEO」に出資しました。

今後「いなごの佃煮」や「はちのこ」など、すでに地方の食文化として知られている昆虫食に改めて注目が集まる可能性もあるのではないでしょうか。

 

参考文献

  1. 欧米で進む昆虫食の産業化
  2. France’s Ynsect targets food market with Protifarm buy | ロイター
  3. Edible insects: future prospects for food and feed security
  4. 昆虫が新しい寿司になる:Ÿnsect社は日本と韓国をミールワームタンパク質の魅力的な市場として捉える
  5. 【昆虫食EC市場】 ニチレイ、カルビーも参入/大手企業続々と(2022年8月4日号)
  6. 昆虫食のスタートアップ企業「TAKEO」への出資に関するお知らせ | 株式会社ニチレイ

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