農業に役立つカビの力。土壌環境の改善や生分解性プラスチックの分解、新たな農薬開発にも期待大なカビの力とは!?

農業に役立つカビの力。土壌環境の改善や生分解性プラスチックの分解、新たな農薬開発にも期待大なカビの力とは!?

カビと聞くと、植物病害の原因として農作物に害を及ぼすものといった印象を抱く人は少なくないはずです。確かにカビの中には、植物に害を及ぼすものも存在しますが、味噌や醤油などの発酵食品にも活用されるような有益なものも存在します。

本記事では、農業に役立つカビの力に着目していきます。

 

 

土壌環境改善効果

農業に役立つカビの力。土壌環境の改善や生分解性プラスチックの分解、新たな農薬開発にも期待大なカビの力とは!?|画像1

 

一般社団法人農山漁村文化協会が発行する農業誌『現代農業』でも度々取り上げられているのが土壌環境を改善する効果です。

さまざまな微生物の働きが土壌改善に役立っているため、カビ単体の力によるものではありませんが、カビも重要な役割を担います。

古い記事にはなりますが、『現代農業』2000年10月号に掲載された「農文協の主張」では、米ぬかや発酵肥料などをふった畑や温室に白いカビが生え、そのカビや米ぬか等の散布で増えた微生物が、病害虫を抑制することが記されています。

米ぬかなどをエサにして繁殖する微生物の生成物が、土壌の肥沃化や土の団粒化を進め、土壌環境を改善していきます。上記記事では、味噌や醤油などの発酵食品作りに利用されるカビ、こうじ菌の効果に着目しています。

米ぬかを散布すると、空気中に浮遊していたこうじ菌が米ぬかに定着し、デンプンを糖に変えます。糖を生成する発酵のしくみは、発酵食品の製造過程と原理的には同じです。こうじ菌が生成した糖をもとに、さまざまな微生物、たとえば稲わらを分解する納豆菌などが繁殖していきます。

土壌中には病原菌や雑菌と呼ばれる、農業に害を及ぼす微生物も多く存在します。微生物の力を借りようと、いきなり大量の米ぬかを散布すると、有害な微生物を増やす恐れも生じます。そのような土壌では、あらかじめカビを増殖させた発酵肥料を併用したり、有用微生物の繁殖を補助するような資材を加えたりすることで、土壌環境改善に近づけることができます。

カビと作物の共生関係で土壌改善

サンリット・シードリングス株式会社は、カビと作物の共生関係に着目した土壌改善技術を提供しています。

土壌改善に役立つ微生物は少なくありませんが、土壌環境によっては効果を発揮できない、という場合もあります。

サンリット・シードリングス株式会社は、圃場にはどんな微生物がいて、どんな働きをしているかを調べ、最適な共生関係にある微生物と土壌環境を改善するノウハウを提供しています。

 

 

生分解性プラスチックの分解

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生分解性プラスチックとは、カビなどの微生物によって分解される素材を指します。農業資材ではマルチなどに用いられており、使い終えた後、回収する必要がなく、そのまま土の中の微生物によって分解されるのがウリです。

ただし、この生分解性プラスチックは、分解されやすいと栽培中になくなってしまい、マルチとしての効果が発揮されませんし、分解されにくくしてしまうと使い終えてもマルチが分解されず、圃場にいつまでも残ってしまうことになります。

そこで役立つのがカビの力です。

オオムギなどの植物に生息するカビ(パラフォーマ(Paraphoma)属)の酵素は、生分解性シートを強力に分解します。このカビの酵素を散布することができれば、生分解性プラスチック製のマルチを使い終わった後に、分解することが容易になります。

なお、2023年7月3日に公開されている農研機構の研究成果にはカビではなく、イネの葉や籾に常在する酵母菌(シュードザイマ(Pseudozyma)属)の酵素もまた、生分解性プラスチックを分解するのに役立てられることが記されています。

 

 

新たな農薬開発に期待大

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摂南大学や筑波大学などの共同研究グループが、カビの生産する二次代謝物に、昆虫の発育に必要とされる酵素を阻害する力があることを発見しました。

一般的に害虫対策には化学合成された農薬が使用されています。しかし同一の農薬を散布し続けることで、農薬への耐性を持った害虫の存在が近年問題となっています。上記研究で見つかった二次代謝物は昆虫の発育を阻害することから、害虫だけに作用する農薬になるのではと期待が高まっています。

 

参考文献

  1. 21世紀の直前に広がった「米ヌカ農法」の価値――“土ごと発酵”方式でつくる豊かな農村空間|農文協の主張 2000年10月号
  2. 【カビの言い分】カビが地球を救う!?食べ物をおいしくする?薬になる!? – ヴィランの言い分 – NHK
  3. 嫌われ者のカビが農作物を救う⁉ 京大発バイオベンチャーの挑戦【#1】|マイナビ農業
  4. Sunliy Seedlings
  5. 真菌の二次代謝物に殺虫作用 環境に優しい昆虫制御型農薬へ期待 摂南大学|JAcom 農業協同組合新聞
  6. cis-Decalin-containing tetramic acids as inhibitors of insect steroidogenic glutathione S-transferase Noppera-bo | PLOS ONE

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