水質汚染の指標について学ぶ。指標となる項目が示すものとは

水質汚染の指標について学ぶ。指標となる項目が示すものとは

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農業を営む上で、水は切っても切れない関係にあります。
水がなければ、農作物を育てることはできません。

特に日本人の主食であるコメ栽培では、適切な水管理が安定的なコメの生産、品質管理に大きく関わってくると言えます。

そんな農業に大切な水ですが、過去には公害によって水質汚染が生じ、農作物が被害を受けただけでなく、その水で育った食べ物を食べた人や動物に悪影響を及ぼす事故がありました。
この負の経験を教訓に水質汚染の指標を学んでおくことは、農業に悪影響を及ぼす事故があったときに、きっと役に立つはずです。

そこで本記事では、水質汚染の原因や水質汚染を示す指標、用語について解説していきます。

 

水質汚染の原因はさまざま

冒頭でも述べましたが、まずは過去に起こった水質汚染の事例について復習しましょう。

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<イタイイタイ病>
日本国内初の公害と認定された病気です。
金属工場の排水に含まれていた大量のカドミニウムが河川に流れ出したことで生じました。カドミニウムを含んだ水を吸収した農作物や魚にカドミニウムが蓄積し、それを食べた周辺住民が腎臓障害などを引き起こすことになりました。

<水俣病>
熊本県で起こった水銀による水質汚染公害です。
工場排水に含まれていたアルキル水銀が河川や海に流れ込み、その周辺で採れた魚を口にした人や動物に生じた病気です。

<重油>
生態系に影響を与える原因のひとつに重油があります。
これは船の座礁や破損によって、船を動かすエネルギーとして使われている重油が海に漏れ出すと、海にいる魚や海鳥へ甚大なダメージを与えてしまいます。また重油が海流に乗って流されることで、より広範囲の生態系にダメージを与えることになるので、とても厄介なものと言えます。

 

「汚染物質」によって指標項目が異なる

上記で紹介した病気や汚染物質の流入は、環境問題への取り組みが浸透した現代において、起こり得ないはずです。
しかし農業に身近なもの(農薬や化学肥料など)や天候、周辺の環境など、さまざまなものが水質汚染の原因となり得ます。

そこでまずは「水質汚染に係る環境基準」について学び、自分たちの田畑の水環境について関心を抱くところから始めましょう。

環境省から出ている「環境影響評価情報支援ネットワーク、環境アセスメント用語集」から「水質汚濁に係る環境基準」について見ていきます。これは水質保全を目標に、公共用水域や地下水の水質を維持するよう基準を定めたものです。

・人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)
・生活環境の保全に関する環境基準(生活環境項目)

の2つからなり、このうち「生活環境項目」には、以下に示す内容について基準値が設定されています。

・pH(水素イオン度指数:potential Hydrogen)
・BOD(生物化学的酸素要求量:Biochemical Oxygen Demand)
・COD(化学的酸素要求量:Chemical Oxygen Demand)
・SS(浮遊物質量:Suspended solids)
・DO(溶存酸素量:Dissolved Oxygen)
・大腸菌群数
・ノルマルヘキサン抽出物質(油分など)
・全窒素
・全リン
・全亜鉛など

ただし「水の利用目的によって基準値が異なる」ということをお伝えしなければなりません。
人が直接口にする水道水と、農業・工業用水のように間接的に人が触れる場合では、基準値には違いが生じます。今回は“農業”における水質の話のため、記事後半に「公共用水」の基準値についてまとめたものを用意しました。水道水のような、直接人が飲む水については、環境省のホームページをご覧ください。

 

用語解説

<BOD>
最も一般的な水質指標のひとつです。
「有機質汚濁」の指標となります。水中に含まれる有機質などの量を、それを酸化分解するために微生物が必要とする酸素量で示したものです。
特定の物質を示すことはできませんが「BOD値が大きい=水質が悪い」となります。微生物が有機質を分解するためには酸素が必要ですから、「大量の酸素が必要になるぐらい、有機質がたくさんある=水質が悪い」ということです。

<COD>
水中の酸化性物質を、一定の条件下で強力な酸化剤(過マンガン酸カリウムなど)で参加し、その時の消費量を酸素量に換算したものを指します。
酸化される物質には有機物の他、亜硝酸塩や硫化物といった無機物も含まれますが、主に参加されるのは有機物です。そのため、CODもBOD同様、「COD値が高い=有機物量が多い=水質が悪い」となります。

<SS>
水中に溶解していない、浮遊している物質量の総称です。
不溶性の浮遊物が多いということは、それだけ水が濁るということです。水が濁ると太陽光が遮られてしまうため、水中の植物(藻類など)の光合成が阻害されてしまいます。
また浮遊物の分解に酸素が消費されてしまうため、浮遊物が多いと水中の生物に悪影響を及ぼします。

<DO>
水中に溶存している酸素の量を示します。
こちらは「DO値が低いほど水質が悪い」となります。酸素を必要とする「好気性生物」にとって、DO値はとても重要です。

 

農業用水の汚染状況調査

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紹介した指標だけでなく、採取した水試料から得られる“微生物”の種類を調べることでも、水質汚染を確認することができます。
農林水産省が平成29年4月に発表した「平成22年度、農業用水および河川水の有害微生物の汚染状況調査」について紹介します。この調査では、国内7河川を水源とする農業用水路、農業用水を得るための河川上流の計27地点で試料を採取し、以下の微生物が検出されるか否かを調べました。

・腸管出血性大腸菌(O157及びO26)
・サルモネラ
・リステリア・モノサイトジェネス
・カンピロバクター

結果は以下の通りです。

・腸管出血性大腸菌O157 検出なし
・腸管出血性大腸菌O26 0.2%検出
・サルモネラ 0.6%検出
・リステリア・モノサイトジェネス 5%検出
・カンピロバクター 2%検出

今回調査対象となった7河川27地点のうち、6河川の17地点の試料から有害微生物が検出されています。
もちろん調査対象が限られているので、全国すべての農業用水の汚染状況が示されているわけではありません。

しかしこの結果により、農業用水も有害微生物が検出される可能性があるということが示されました。野菜栽培に使われている農業用水も、水質汚染が生じる可能性は十分あるのです。

そのため農業従事者は、汚染可能性があることをふまえて農業用水を使わなければなりません。
例えば、「消費者が汚染可能性のある農業用水に触れないよう、野菜の可食部位にはかけない」などです。野菜を洗浄する際には、水道水や保健所等が「飲用」と認めた水を使うようにしましょう。

公共用水域における生活環境項目の基準値

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註:

<MPN>
大腸菌数を表す指標です。「Most Probable Number(最確数)」という意味です。
大腸菌の検出を行う際、平板培地法と呼ばれる方法で検出します(↓)。

1. 大腸菌群数を測定したい水を用意
2.1を培養皿に取る
3.水中の大腸菌を培養する
4.培養したらコロニー(集落)数を数える

MPNは、このコロニー数を“確率として統計学的に表したもの”を指します。
わかりやすく説明すると、大腸菌群数の基準値が50MPN/100mL以下の場合、水試料100mLで培養したとき、コロニーが50個できるという意味です。
もちろん厳密にはさまざまな条件が付随するためもう少し複雑ですが、まずは「MPN=コロニー数」と考えましょう。

<ノニルフェノール>
工業的に合成された生成物。
エチレンオキシドと反応させて生成されるノニルフェノールエトキシレートは「非イオン系界面活性剤」で工業用の洗浄剤、分散剤としてゴム・プラスチック・繊維工業、機械・金属工業、農薬工業などで使われています。

<直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)>
これは家庭用洗濯洗剤や業務用洗剤、農薬乳化剤などに使われています。
生活する上でよく使われている物質ではありますが、魚やミジンコ、藻類を用いた毒性試験において、比較的低濃度であっても毒性を示し、繁殖や遊泳へ悪影響を及ぼすことが確認されているため、水生生物にとっては有害な物質です。

 

指標の理解と対策で、水質汚染予防は可能

有害微生物による水質汚染の場合、微生物は土壌中にも水中にも数え切れないほどの種が存在し、全てが有害なわけでも、有益なわけでもありません。
しかし水質汚染で生じる害を消費者に与えないことが最優先ですから、この場合には「汚染可能性のある農業用水を可食部位にはかけない」ということを意識すれば問題ないでしょう。

また化学物質の水への残留が気になる場合には、今一度「農薬使用基準」を見直すことをおすすめします。

農薬には、農薬使用者が守らなければならない項目が定められています。
適用作物や使用回数などを確認しておきましょう。もちろん水質汚濁が生じる恐れのある農薬においては、あらかじめ「水質汚濁性農薬」として使用制限がかかっています。現在登録されている水質汚濁性農薬には

・ベンゾエピン
・ロテノン
・シマジン

が指定されています。もちろん使用制限がかかっているだけで、使うのが全面的にNGというわけではありません。

しかし消費者の安全・安心を守るためにも、水質汚染を招くような事態が発生しないよう、常に意識しておくことは大切なのではないでしょうか。

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