農業現場から見たクマ出没急増の実像。

農業現場から見たクマ出没急増の実像。

近年、クマの出没は山奥だけの話ではなくなっています。草刈り中、見回り中、収穫作業中など、日常の農作業そのものがリスクを伴う状況が各地で報告されています。

農業者にとって深刻なのは、単なる作物被害だけではありません。

 

 

クマ出没急増の背景が農地に及ぼす影響

農業現場から見たクマ出没急増の実像。|画像1

 

クマ出没の直接要因としてよく挙げられるのが、ブナやミズナラなど堅果類の不作です。堅果類が不足すると、クマは栄養価の高い食物を求め、人里や農地へ移動します。

農業現場では、

  • 収穫前の果樹
  • 放置された柿・栗
  • 飼料作物や残渣

が「代替食料」となりやすい状況にあります。

さらに近年は、冬眠入りや冬眠明けの時期が気温の影響を受けることが報告されており、暖かい年には行動時期が前後する可能性があります。クマの活動期間が長期化している、ともいえます。

これにより、

  • 春の作業開始時期
  • 秋の収穫後の管理期間

とクマの活動期が重なり、人とクマの接触リスクが年間を通じて高まっています。

人口減少や耕作放棄地の拡大、誘引物の増加など構造的な要因も指摘されていることから、単年の現象として片づけず、継続的な備えが求められます。

クマが入り込みやすい農地

農地周辺の環境変化も見逃せません。

かつては、

  • 下草刈り
  • 山際の見通し確保
  • 人の出入り

が自然と行われていました。しかし現在は、高齢化や人手不足により、山林と農地の境界が曖昧になっていたり、耕作放棄地が緩衝帯として機能しなくなっていたり、といった状態が広がっています。

地域によっては、個々の農家の努力だけでは維持できない段階に入っている場所も少なくありません。

出没数・人身被害データが示す現場リスク

環境省の集計ではクマ類による人身被害が増加局面にあり、農業現場でも収穫期などに向けた注意喚起が強められています。

特に多いのが、

  • 早朝・夕方の単独作業
  • 草刈りや見回り
  • 収穫後の片付け作業

です。

また、捕獲数が増えたとしても、

  • 餌環境
  • 人里の構造

が変わらなければ、クマは再び出没します。

現状、捕獲(個体管理)のみならず、誘引物の管理や侵入経路の遮断など、生活圏側の環境管理を組み合わせた総合対策が不可欠とされています。

 

 

農業経営・地域づくりの観点で考えるクマ対策

農業現場から見たクマ出没急増の実像。|画像2

 

クマ被害は、直接的な農作物被害や人身事故にとどまりません。農作業への不安が高まれば、作付けを控える、山際の圃場を放棄するといった判断につながり、さらに里山の空洞化が進むという悪循環を生みます。

農業経営の視点では、クマ対策は地域全体で取り組む経営環境の課題と捉える必要が生じています。電気柵の設置や見回り体制の整備、情報共有の仕組みづくりなど、個別対策を点で終わらせず、面として機能させることが重要です。

また、若手就農者や新規参入者にとって、クマ被害は参入障壁にもなり得ます。安全に農業を続けられる環境づくりは、地域の持続性そのものに関わる課題といえます。

政策・地域レベルで検討すべきクマ対策は、大きく三つの視点で整理できます。

第一に「個体管理」、すなわち捕獲やモニタリングです。

第二に「環境管理」、里山や農地周辺の管理を通じて、クマを人里に近づけにくくすること。

第三に「住民参画」、地域住民や農業者が主体的に関わる体制づくりです。

行政、猟友会、農業者、地域住民が役割を分担し、情報を共有する仕組みが不可欠です。もはやクマ問題は、生態系管理と地域社会の再設計を同時に求める課題といえそうです。

 

参照元ウェブサイト

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