害虫対策の定番「粘着板」活用法。最新研究でわかった捕虫に効果的な模様とは!?

害虫対策の定番「粘着板」活用法。最新研究でわかった捕虫に効果的な模様とは!?

農業の大敵ともいえる「害虫」の存在。害虫を適切に防除するためには「圃場に入れない」「数を増やさせない」ことが重要です。そして、これらを叶えるためには物理的、生物的、化学的な方法を組み合わせることがとても重要です。

本記事では、まず第一段階である「入れない」に役立つ物理的防除のひとつ「粘着板」に着目します。

 

 

物理的防除のひとつ「粘着板」の効果

害虫対策の定番「粘着板」活用法。最新研究でわかった捕虫に効果的な模様とは!?|画像1

 

物理的な防除方法

害虫を「圃場に入れない」ためには、物理的に害虫が侵入しにくい環境をつくることが大切です。例えば「防虫ネット」を使えば、作物そのものやハウスの開口部を覆うことで、害虫の飛来・侵入を防ぐことができます。紫外線を反射する素材を使ったネットや不織布、また反射光で虫を寄せ付けないシルバーマルチなども、物理的防除として効果的です。

粘着板の効果

本記事で紹介する「粘着板」もまた、物理的防除として効果的です。虫が特定の色に誘引される習性を利用した粘着板には、黄色や青色など特徴的な色がついています。また粘着板の中には虫のフェロモンによる誘引を利用して、フェロモンが塗布されたものもあります。

いずれの場合も、粘着板に誘引された虫が、粘着面によって身動きが取れなくなったところを捕獲・駆除します。

粘着板の難点は、定期的な交換を必要とするところです。虫を捕まえれば捕まえるほど効果が薄くなります。虫が多い時期には、どうしても交換頻度が高くなります。ただ、ハウス開口部などに設置した粘着板を定期的に観察することで、害虫の飛来時期を知ることができるという利点もあります。

粘着板で捕虫できる害虫

「虫が何色に誘引されるか」という実験において、以下の害虫が捕虫されました。

  • チョウ目
  • コウチュウ目
  • カメムシ目
  • アザミウマ目
  • ハチ目
  • ハエ目
  • その他

この実験では、「虫の誘引数は色ごとに異なる」という記述のみであり、どの色にどの虫がつきやすいかは記述されていません。そこで補足として、ケミカルランプと蛍光黄色粘着シートを用いた捕虫器『Luics C』のパンフレットに記載された、蛍光黄色で誘引しやすい虫を以下に記載します。

<補虫しやすい>

  • ユスリカ
  • ヒメヨコバイ
  • カスミカメムシ
  • アザミウマ目

<やや補虫しやすい>

  • グンバイムシ
  • コバチ上科
  • ハナカメムシ
  • その他

「△」と表記されているものにはハエ(ハヤトビバエ、ハモグリバエ、イエバエなど)が挙げられていました。

市販されている粘着板には、色やフェロモンなど、製品ごとに誘引特徴が異なります。そのため、害虫の存在を見つけたら、その虫の種類に合わせた粘着板を活用するのが効果的です

 

 

粘着板最新研究!色だけでなく、模様で捕虫力アップ?!

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「粘着板」の興味深い研究結果が報告されました。兵庫県立農林水産技術総合センターなどの研究グループが、トマトの害虫・コナジラミ類を誘引する技術を開発しました。

研究グループが開発したのは、黄色の粘着板に植物の葉を思わせるひし形模様をつけた粘着板です。このひし形模様は、コナジラミ類がトマトの葉の裏に付きやすいという特徴を利用し、葉の表と裏を再現するように濃淡がつけられています。

研究グループによれば、コナジラミ類は色の境目を目印にして粘着板に接近するとのこと。そのため従来の粘着板の場合には、粘着板の端の部分にコナジラミが集中していました。しかしひし形模様をつけたことで、模様が色の境目となり、補虫率が高まりました。単色の粘着板と違い、模様が色の境目になることで、天候による明度差の影響も受けにくいといいます。

紙製の粘着板の廃棄しやすさをそのままに、模様をつけることだけで補虫率を高めたというのは驚きです。

こんな捕虫器も!

いわゆる紙製の「粘着板」ではありませんが、インドネシアの害虫対策市場に参入した日本企業「ルーチ」が開発した、手のひらサイズの補虫器が注目されています。農業従事者向けというよりは、飲食店市場で利用されている補虫器ですが、ハガキサイズでとても軽量です。紫外線の光に向かっていく習性を利用し、光と緑色の粘着シートで捉えます。

原点回帰?!粘着板の色に着目した自作の捕虫器

手軽に購入、設置できる粘着板を活用する人は多いと思いますが、粘着板が手元からなくなってしまったときのために、手軽にできる誘引方法を覚えておきましょう!

必要なのは

  • 黄色い容器

の2つだけです。

黄色くて水を張れる容器であれば、子供用のおもちゃバケツでもなんでもOKです。市販の粘着板を参考に、黄色みの強いもの(蛍光イエローなど)を選ぶことをおすすめします。

色に誘引された虫が水の張られたバケツに飛び込み、そのまま飛び立てなくなるのを利用して捕まえます。補虫力をアップさせたい人は、水に少量の「中性洗剤」を加えましょう。表面に油分が浮き、その油分で虫は水から逃れられなくなります。

ただし、容器に張った水をそのままにしすぎると、蚊の幼虫・ボウフラがわくことがあるので、水はこまめに変えましょう。

 

参考文献:

  1. 電撃殺虫器・捕虫器の仕組み 電気設備の知識と技術
  2. 虫は何色に誘引されるか? 株式会社大成イーアンドエル
  3. Luics Cシリーズ SHIMADA
  4. コナジラミ 粘着板に模様で捕虫性アップ 色の境目に誘引 効果1・6倍  兵庫県 日本農業新聞
  5. 虫の侵攻を食い止めろ! 世界を救う害虫対策:未来世紀ジパング
  6. ルーチ・虫とら
  7. 家庭菜園の病気と害虫・見分け方と防ぎ方(農文協)/野菜だより2010年新春号・家庭菜園アイデアグッズ集(学研)

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