タバコの新たな使い道!?タバコ天然成分による害虫防除

タバコの新たな使い道!?タバコ天然成分による害虫防除

日本では、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が成立し、2019年7月1日から保育所や幼稚園、学校や病院、行政機関の庁舎などを「屋内全面禁煙」となりました。東京オリンピック・パラリンピックに先立ち、2020年4月1日からは飲食店やホテルのロビーなども原則禁煙となります。

世界ではさまざまなタバコ規制・対策が実施されていますが、日本のタバコ対策は世界から見ると「最低レベル」に位置しています。そのため2020年に間に合わせるかのようにして、タバコ規制・対策が続けられています。

「健康を害するもの」というイメージの強いタバコですが、農業界においては、その新たな使い道が注目されています。

 

 

タバコ天然成分が注目を集めている

タバコの新たな使い道!?タバコ天然成分による害虫防除|画像1

 

ロリオライドとは

タバコに含まれる天然成分ロリオライドが今注目を集めています。ロリオライドとは、カロテノイドと呼ばれる天然色素の一種です。カロテノイドはニンジンの色素としておなじみのカロテンを含む、微生物や動植物に存在する天然色素です。ロリオライドは、そのカロテンが分解されるときに生じるものだと考えられています。

そんなロリオライドには、ミカンキイロアザミウマやナミハダニといった害虫被害を抑制する効果があることがわかりました。農研機構の報告によると、ロリオライドをトマトに与えたところ、トマトのもつ害虫抵抗性が高まりました。

ロリオライドの効果

害虫は、同じ種類の殺虫剤で防除され続けると、その殺虫剤が聞きにくくなる薬剤抵抗性が現れることがあります。

ロリオライドそのものには殺虫効果がありません。ロリオライドは「プラントアクティベーター」と呼ばれる、植物がもつ害虫抵抗性を高めることで害虫被害や病害を防ぐ薬剤として機能します。ロリオライドがプラントアクティベーターとして機能すれば、殺虫剤を使用せずに済み、虫が薬剤抵抗性をもつ可能性を減らすことができます。

実験では、トマトの葉にロリオライドを与えたあと、害虫であるナミハダニの雌を放飼し、ロリオライドを与えた葉とロリオライドの溶剤だけの区の生存率と産卵数の低下を比較しました。その結果、ロリオライドの溶剤だけの区では8割以上あった生存率が、ロリオライドを与えた葉の区域では5割程度に低下。産卵数も半分になりました。これはロリオライドによって、トマトの害虫抵抗性が高まったことを示しています。

プラントアクティベーターが注目される理由

植物にもともと備わっている害虫抵抗性、耐病性を高める効果のあるプラントアクティベーター。植物の機能を高める力があることから、薬剤耐性のついた虫や菌が発生することを抑止することができます。また殺虫剤、殺菌剤の使用量、使用頻度を減らすことができますから、持続可能な農業に役立ちます。

現時点では、農薬として登録されているプラントアクティベーターはイネいもち病等の病害に有効なものだけで、害虫用で登録されているものはありません。タバコに含まれるロリオライドが登録されれば、新たな害虫防除剤として注目を集めることでしょう。

 

 

まだある!注目の防除方法

タバコの新たな使い道!?タバコ天然成分による害虫防除|画像2

 

細菌エンドファイト

「エンドファイト」とは、植物共生菌(植物内部に共生する微生物)の総称です。
エンドファイトのタイプは大きく分けて

  • カビ(糸状菌)
  • バクテリア(細菌)

の2種類あります。

例えばカビであれば、植物内部でつくられたカビの毒素によって、植物を害虫から守ることができます。動物がその植物を食べると消化不良などを起こすため、カビタイプのエンドファイトは比較的よく知られていました。

一方、近年注目されているのは「毒素をつくらない」細菌エンドファイトです。研究されている細菌エンドファイトには、毒素をつくらずに

  • 植物の免疫力を高める
  • 植物の生育を促進する
  • 高温や乾燥などの環境ストレス耐性を高める

などの働きをする菌がいます。

毒素をつくらない細菌エンドファイトの力を利用すれば、病害虫から農作物を守りながら、それを食べることができるわけです。

細菌エンドファイトの力で病害虫から農作物を防除することができれば、農薬や化学肥料を減らすことにもつながります。近年の農薬や化学肥料には毒性のないものも多く開発されており、「人の口に入る」という観点からは、不安は少なくなりつつあります。しかし時に農薬は、病害虫だけでなく益虫や土壌に最適な微生物まで殺してしまうため、生態系を維持するという観点からは、あまり好ましいものではありません。

細菌エンドファイトは、プラントアクティベーター同様、植物本来がもつ害虫抵抗性、病害耐性を高める力があるため、生態系の保持にもつながり、環境に優しい農業が実現できると期待されています。

生物農薬

生物農薬は、有害生物の防除に利用される微生物や昆虫のことを指します。テントウムシがわかりやすい例です。テントウムシは害虫であるアブラムシの天敵であり、アブラムシを捕食する昆虫です。農作物には影響を及ぼさないため、「益虫」として扱われています。

生物農薬は、

  • 天敵昆虫(捕食性昆虫や寄生性昆虫など)
  • 天敵線虫(昆虫寄生性線虫など)
  • 微生物(細菌、糸状菌、ウイルスなど)

に分類され、日本では100を超える品目が「農薬」として登録されています。

 

参考文献

  1. わが国のたばこ規制・対策の現状 e-ヘルスネット
  2. 学校・病院・行政機関、19年7月から屋内全面禁煙 日本経済新聞
  3. タバコ天然成分ロリオライド トマトの抵抗性を高め 複数害虫防ぐ 農研機構 日本農業新聞
  4. 害虫抵抗性誘導物質としてのロリオライドの発見と害虫に対するその防除効果 農研機構
  5. (研究成果)トマトなどの虫害を天然物質で予防 農研機構
  6. トマトなどの虫害を天然物質で予防
  7. イネの病害抵抗性を活性化させる環境に優しい農薬の開発 岡山大学大学院 
  8. 3分でわかる技術の超キホン イネいもち病とは②
  9. 微生物の力で、植物の免疫力を増強し、環境保全型の作物栽培を可能に。
  10. 生物農薬とはどんなものですか。 農薬工業会

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