環境保全の観点からも注目集まる「自然栽培」。挑戦する際に押さえておきたいポイントとは

環境保全の観点からも注目集まる「自然栽培」。挑戦する際に押さえておきたいポイントとは

「自然栽培」には明確な定義はありませんが、ここでは「有機物由来のものも含め、農薬や肥料を一切使わない栽培方法」とします。環境保全の観点からも注目が集まり、一般にも認知度が高くなってきた印象がありますが、実際に取り組むとなると大変に感じられる部分も多くあります。

そこで本記事では自然栽培に挑戦する際に押さえておきたいポイントをご紹介していきます。

 

 

自然栽培の大変なところ

環境保全の観点からも注目集まる「自然栽培」。挑戦する際に押さえておきたいポイントとは|画像1

 

自然栽培のメリットには、環境に負荷をかけないことだけではなく、農薬や肥料を使わないことで農薬資材の購入費が少なく済むことも挙げられます。しかし「収量の少なさ」や「土づくりなども含む栽培管理の手間」といったデメリットもあります。はじめのうちは、デメリットの部分に苦労して、大変さを味わうことになるかもしれません。

大変なところを把握するからこそできること

環境保全の観点からも注目集まる「自然栽培」。挑戦する際に押さえておきたいポイントとは|画像2

 

ただ、「栽培管理に手間がかかることを理解するからこそ、自然栽培に取り組みやすくなる」といえる面も。

例えば農薬・肥料を用いない自然栽培で育てる作物は、農薬・肥料なしでも育ちやすい作物を選べば良いのです。肥料をあまり必要としない、低窒素な環境でもよく育つトマトやダイズやインゲンなどを選べば、取り組みやすいはずです。

「自然栽培の畑はなんでもつくれるわけではない」という前提を理解することが大事です。自然栽培の場合は、つくりたいものをつくるのではなく、その畑で満足に生産できる作物を育てる感覚で始めるのがよいでしょう。

また、農薬や肥料を与えないからこそ作物の状態をこまめに観察する必要は生じますが、その作物の特性を理解できていれば、よい作物が採れるように生長をコントロールするのは決して難しくないはずです。

例えば『野菜だより 2021 9月[秋号]』(2021年8月3日、株式会社ブティック社)で紹介されていたトマトの自然栽培の事例では、わき芽かきを行うことでトマトの栄養生長と生殖生長をコントロールし、満足できる収穫量につなげていました。

栄養生長と生殖生長の目的は、「個体維持(自分の体をつくる)」と「種族維持(子孫を残す)」です。トマトは生殖生長期に収穫する野菜に分類されます。そのため、トマトが栄養生長に力を使ってしまわないよう、実った後もこまめにわき芽かきを行い、葉が生えすぎないようにするのがポイントです。

関連記事:今さら聞けない、栄養生長と生殖生長について。|農業メディア|Think and Grow Ricci

雑草や害虫はどうすればよいのか気になる方もいるかもしれませんが、それも自然栽培ならではの対策法があります。

例えばクズ小麦マルチとコンパニオンプランツがよい例です。

クズ小麦を利用する理由は、市販のマルチムギに比べて安価に手に入るからです。ムギが雑草よりも早く生育することで、雑草の生育を抑えてくれます。また自然倒伏したムギはそのままマルチとなります。自然倒伏したムギが、育てたい作物の生育を邪魔する可能性がある場合には、倒伏しない大麦を使うのも良いでしょう。

それからコンパニオンプランツ。混植することで病害虫予防や生長促進に役立ちます。

関連記事:コンパニオンプランツのススメ。コンパニオンプランツが役立つのは家庭菜園だけじゃない|農業メディア|Think and Grow Ricci

作物ごとに合った栽培体系を確立できれば、作物は健全に育ちます。大変に感じられることもあるかもしれませんが、ぜひ挑戦してみてください。

 

参考文献

  1. 自然栽培とは_自然栽培全国普及会
  2. 家庭菜園誌 野菜だより 2021 9月[秋号]、2021年8月3日、株式会社ブティック社
  3. 農文協/編『農家が教える 自然農法: 肥料や農薬、耕うんをやめたらどうなるか』(2017年、農山漁村文化協会)

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