自家採種は難しい?自家採種の難易度まとめ。採りやすいタネから始めれば難しくない!

自家採種は難しい?自家採種の難易度まとめ。採りやすいタネから始めれば難しくない!

種子法廃止や種苗法の問題などで注目が集まっている野菜のタネ。最近では「農家の自家増殖原則禁止」の禁止品目から外れている「固定種」の自家採種を積極的に行い、固定種や在来野菜を守ろうという動きもあります。

ただ、「自家採種は難しい」「自家採種は面倒」という印象があるのも事実。

そこで本記事では自家採種の難易度について紹介していきます。

 

 

F1種と固定種の違いについて

自家採種は難しい?自家採種の難易度まとめ。採りやすいタネから始めれば難しくない!|画像1

 

自家採種についてご紹介する前に、一般的に流通している野菜のタネと固定種について補足説明をさせてください。

一般的に流通している野菜のタネは「F1種」と呼ばれる、異なる親の交配によって生まれた種です。「優性の法則※」が働いた結果で得られるF1種は「一定の収量が安定的に得られる」のが最大のメリットです。


ある形質について、優性遺伝子のみをもった純系の親と、劣性遺伝子のみをもった純系の親を交配させてできた雑種第一代は、優性の形質のみを発現すること。
引用元:三省堂 大辞林第三版

ただし、親の良い特徴を受け継ぐのはF1種一代のみ。F1種の次世代、すなわちF2種にはある一定数、F1種の特徴を受け継がないものが表れます。これがF1種のデメリットです。

F1種で安定した生産を行いたい場合には、F1種からタネを採るのではなく、毎年F1種を購入する必要があります。

一方、固定種は自家採種をする手間はかかりますが、代々同じ形質が受け継がれていきます。F1種に比べると、発芽や生育の揃いが悪いというデメリットがありますが、F1種に比べ、環境適応能力に優れています。

とはいえ、固定種は気候変動による影響が収量や形質に及んでしまうこともあり、安定供給には向いておらず、大きな市場からは姿を消していました。しかし近年、地産地消の流れや無形文化遺産となった和食の存在、また日本古来の種を守ろうという流れから再度注目を集めつつあります。

そんな固定種の自家採種をおすすめしていきたいのですが、まずは難易度の低い野菜から始めてみましょう。

 

 

自家採種の難易度

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難易度が低い野菜とは

自家採種を初めて行う場合には、収穫物がそのまま種苗となるような野菜(ジャガイモやニンニク、ショウガなど)、またはトマトやキュウリなどの「夏野菜」がタネ採りしやすいのでおすすめです。

例えばトマトの場合、完熟果からタネを採り出すだけでタネ採りができます。タネの周りについているゼリー状の部分ごと取り出したら、水で洗ってゼリー状の部分を取り除きます。

この際、タネとゼリー状の部分をビニール袋に入れ、1日発酵させるとタネとゼリーをラクに分離できるだけでなく、そのまま洗うよりカビが生えにくくなったり、タネが原因の病気を出にくくする効果があります。発酵させたタネとゼリーをザルに入れ水洗いすると、そのまま洗い流すより簡単にタネを採り出すことができますよ。

キュウリやナスの場合は、生育がよく、形や色つやがいい株を選び、収穫せずに完熟させてタネを採ります。

採り出したタネは天日干しでよく乾燥させます。

難易度がやや高い野菜とは

ウリ科(キュウリやカボチャなど)はタネ採り自体はやりやすいのですが、異なる品種間で交雑しやすいため、難易度がやや高いと言えます。

アブラナ科(ダイコンやハクサイなど)も交雑しやすい植物です。交雑しやすいもの、しにくいものとありますが、いずれにせよ、ある程度育ってからではないと交雑したかどうかはわからないため、あらかじめ交雑を防ぐ工夫をしなければなりません。

人工授粉を行い、他の花粉が入らないよう雌花に袋をかける、採種株をハウス内などに隔離して育てる、採種株以外の花を開花する前にとってしまうなどの方法が挙げられます。あまり手間がかけられない場合には、一つの畑で1品種のみを栽培するのがおすすめです。

根菜類は手間がかかる

根菜類は採種株の選抜に一手間かかります。採種株に適した形質を確認するためには、収穫前に一度掘り出し、植え替えなければならないからです。

また断面の色が特徴的な品種を選ぶ場合、断面の色を確認するために切る…というわけにはいきません。農家さんによっては薄く切った表面やひげ根を切った時の断面で判断しているようですが、選抜にかかる時間や手間から、難易度が高いと言えます。

マメ科はカビやすいので注意

タネ採りのしやすさの説明で、ダイズ・サトイモなどの「穀類・栄養繁殖の野菜(タネや種イモを食べる野菜)」は比較的難易度が低いと書きましたが、ダイズやエンドウ豆、ソラ豆といったマメ科の植物は収穫時期が遅れるとカビがつきやすいので注意が必要です。

例えば、ソラ豆は多湿を嫌う植物です。梅雨の時期に雨が長期間続くとカビによる病気が発生しやすくなります。そのため梅雨の時期は水やりを控えるなど、カビによる被害が生じないよう工夫する必要があります。

また収穫時期がバラけると、マメが未熟だったり熟しすぎたりと、質にばらつきが生じます。全ての株が枯れるまで待つのではなく、こまめに様子を見て、完熟したものから収穫するようにしましょう。

 

参考文献

  1. 三浦伸章監修, 『三浦伸章 ガッテン農法』, 2017年3月14日, 学研プラス
  2. 『現代農業2月号』, 2019年2月1日, 一般社団法人 農山漁村文化協会
  3. エンドウ・ソラマメの自家採種 無農薬・自然菜園(自然農法・自然農)で、自給自足Life。~持続可能で豊かで自然な暮らしの分かち合い~
  4. エンドウ豆の種取りが、カビでできない 自然農・いのちのことわり~田畑における具体的問題と解決~
  5. マメ科作物の種採りについて 黒大根くん2.0

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