土の中に広がる「根」は、作物の生育を支えています。根は水や養分を吸うだけの器官ではなく、植物の体を支え、土の中の微生物と関わり、土の構造そのものに影響を与えるものでもあります。
そこで本記事では、植物の根の基本的な役割について解説していきます。
根の基本的な役割

まずは植物体を支えることです。地上部に茎や葉、花、実が広がるほど、植物は雨や風で倒れやすくなります。根は土の中に張りめぐらされることで植物を地面に固定しています。
次に水と養分を吸収することです。根の先端に近い部分には、細い毛のような「根毛」があります。根毛は根の表面積を広げ、土の中の水分や水に溶けた無機養分を取り込みやすくする役割を持っています。吸収された水や養分は、道管を通って茎や葉へ運ばれます。
根の役割は吸収だけではありません。植物は、光合成によって固定した炭素をもとにつくられた糖、有機酸、アミノ酸など、さまざまな物質を根から土壌中へ放出しています。こうした物質は、まとめて根分泌物などと呼ばれます。
一見すると、せっかく光合成でつくった物質を土中に出してしまうのは無駄に見えるかもしれません。
しかし、根から出る分泌物は、根の周辺に集まる多くの微生物にとって栄養源となります。その結果、根のまわりには微生物の活動が盛んな領域「根圏」がつくられ、そこでは微生物が有機物を分解したり、養分の形を変えたりすることで、植物が養分を利用しやすくなる場合があります。また、根のまわりに多様な微生物が存在することは、特定の病原菌だけが増えすぎるのを抑える方向にはたらくこともあります。
地上部との関係性
根は、植物の種類や土壌条件によって伸び方が異なります。一般的には、地上部が広がる範囲に応じて、根も横方向に広がります。葉や茎が大きく広がる植物ほど、それを支え、水や養分を確保するために、根も広い範囲に伸びる必要があります。
ただし、面白いのが地上部の高さと根の深さが必ず一致するわけではない、という点です。土の下に硬い層がある場合や、地下水位が高い場合、根の伸長は妨げられます。また、樹木のように地上部が非常に高くなる植物では、根が垂直方向だけでなく水平方向にも大きく広がるため、樹高と同じ深さまで根が伸びるとは限りません。
よって、収穫時に見えている野菜の姿だけで根の大きさを判断するのは難しいのです。たとえばキャベツは、収穫時には低い姿をしていますが、本来は花茎を伸ばして開花する植物です。
根は土を耕す
根は土の中を伸びることで物理的にも土に影響を与えます。根が伸びた場所には細いすき間ができます。根が枯れた後も、その跡が水や空気の通り道として残ることがあり、これにより土の中の通気性や排水性が改善される場合があります。
緑肥作物が土づくりに使われる理由のひとつもここにあります。緑肥は地上部をすき込むだけでなく、栽培中に根を伸ばし、土の中に有機物や根の通り道を残します。
また、枯れた根そのものは有機物として微生物に分解され、そのことが土壌の団粒化にもつながります。団粒構造が発達した土は、水もちと水はけのバランスがよく、結果として作物の根が伸びやすい環境になりやすいのです。
根の健全性には酸素も必要
根が呼吸するためには酸素が必要です。そのため、土の中が水で満たされすぎると、空気のすき間が減り、根が酸素不足になります。湿害は、この酸素不足によって起こる代表的な障害です。排水が悪い畑や、長雨のあとに水がたまりやすい場所では、根の呼吸が妨げられ、根腐れや生育不良につながることがあります。
地上部の葉がしおれていると、つい水不足を疑いたくなりますが、実際には根が酸素不足で傷み、水を吸えなくなっている場合もあるのです。
根を健全に保つには、水だけでなく空気の通り道も必要です。土づくりで排水性や通気性が重視されるのは、根が呼吸できる環境を整えるためでもあります。
まとめ

根は、植物の体を支え、水と養分を吸収し、地上部へ運ぶ器官です。しかしそれだけではありません。根は分泌物を出して微生物を集め、土の中にすき間をつくり、枯れたあとには有機物として土に戻ります。
栽培において、目に見える葉や実の状態に注目しがちですが、葉色や草丈だけでなく、根の状態を想像することも大切です。地上部に現れる不調の多くは、土の中の根の状態とつながっています。地上部の調子が悪いとき、原因は肥料不足とは限りません。土が硬くて根が伸びにくい、過湿で酸素が足りない、肥料濃度が高すぎて吸水しにくいなど、根の環境に問題がある場合もあります。
なお、根を根を育てるには、土を過度に締め固めないことも重要です。人や機械が何度も同じ場所を通ると、土が硬くなり、根が伸びにくくなります。畝立て、堆肥や緑肥の活用、排水対策などは、いずれも根が伸びやすい環境をつくるための手段といえます。
参照サイト
- 見えてきた!土の中のミラクルワールド:根圏 ~植物の根と微生物が土の中で繰り広げる営みを観る
- 植物の根毛側面に細胞壁成分を輸送する経路を発見 ~根毛はなぜ細長い形を維持できる?~ – 金沢大学 ナノ生命科学研究所
- プレスリリース 湛水条件下におけるダイズ根への酸素供給機能を解明
- 土づくりと減肥のための緑肥利用マニュアル | 農研機構
- 土着菌根菌を活用することでリン酸肥料を節約できる | 農研機構
- 根の内部構造 Anatomy of root
- 土壌不均一系における水・溶質移動と植物根との相互作用
- Ⅱ 土づくりと施肥改善
- 学位論文題名 樹木の根系の成長に関する基礎的研究
参考文献:涌井義郎「土がよくなりおいしく育つ 不耕起栽培のすすめ」(家の光協会、2015年)










