天敵製剤の効果的な活用法について。導入タイミング、効果的な放ち方、注意点等。

天敵製剤の効果的な活用法について。導入タイミング、効果的な放ち方、注意点等。

天敵製剤(生物農薬とも呼ばれる)とは、害虫防除に利用するために製剤化された天敵生物を指します。害虫に対する天敵の場合、害虫に寄生したり直接捕食したりすることで害虫を死亡させます。また病原菌から植物を守る微生物や、害虫から植物を守る微生物も、天敵製剤として利用されています。

そんな天敵製剤は、以下の理由から活用されています。

  • 薬剤抵抗性を持つ害虫への効果が期待される
  • 化学農薬の使用回数削減(省力化)につながる
  • 環境への負荷低減
  • 安心・安全な農産物生産

そこで本記事では、そんな天敵製剤の効果的な活用法についてご紹介していきます。

 

 

天敵を放てばOK……ではない!?

天敵製剤の効果的な活用法について。導入タイミング、効果的な放ち方、注意点等。|画像1

 

天敵製剤の力を発揮するには、単に天敵を放つだけでなく、IPM(総合的病害虫管理)の考え方に基づき、天敵が定着・増殖しやすい環境を整えることが大切です。

天敵製剤の選択

天敵製剤は害虫の種類に応じて選びます。そのため、まずはどんな害虫が発生しているかを見極める必要があるといえます。代表的な害虫と天敵製剤の組み合わせとして、アザミウマにはスワルスキーカブリダニ、ハダニにはチリカブリダニなどがあげられます。

導入のタイミングに注意

害虫の発生がまだ少ないうちに導入するのがポイントです。天敵の力を借りようにも、害虫が大量発生してからでは間に合いません。圃場内をよく観察し、目視または粘着シートなどに害虫が付いたのを見つけ次第、天敵製剤を導入します。また、害虫の発生を見落としてしまった場合(圃場内に高密度で害虫が発生した場合)には、化学農薬などを使用して一度害虫密度を下げてから放飼する、という方法もあります。

効果的な放飼方法

長期的に天敵の密度を維持するために、一度に大量に放つのではなく、間隔を空けて複数回に分けて放飼してください。また害虫が発生している場所やその周辺に、小分けにして放すことがポイントです。

天敵を定着・増殖させる

まず、害虫の発生条件と同じく、天敵となる昆虫や微生物にも、天敵製剤としての効果を発揮するのに適した環境条件があります。天敵製剤ごとに最適な温度や湿度は異なるので、それぞれに最適な環境条件については、導入した天敵製剤の取扱説明書等をよく読み、記載されている条件に環境を整えてください。

天敵製剤の定着には、「バンカー植物」や「天敵用餌ひも」などの設置が効果的です。

バンカー植物とは、「敵を増やしたり温存する作物・植物のこと」(出典:バンカープランツ_現代農業用語集)。バンカー植物の設置は、天敵製剤の放飼タイミングが難しいという難点を克服する方法の一つでもあります。圃場内にバンカー植物を設置し、天敵を繁殖させることで、害虫の発生前から天敵を継続的に供給しやすくなります。

「天敵用餌ひも」は、端的に言えば天敵の食料です。天敵が害虫を食べ尽くす、あるいは害虫密度が低い場面で導入した際、天敵にとっての餌が不足すると、天敵が圃場内から逃亡したり、共食いをしたりする可能性があります。天敵用の餌を用意しておくことで、逃亡や共食いなどを防止できます。

天敵製剤に加えて化学農薬を利用する際には、天敵に影響の少ない農薬の選定も重要です。特定の害虫だけに効き、天敵に影響しにくい農薬を選んでください。

 

 

複数の成功の鍵を合わせて

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もちろん、害虫を発生させない環境づくりも大切です。害虫の発生源となる雑草をこまめに取り除く、害虫が寄生していると思われる苗は持ち込まないなど、害虫を寄せ付けないようにします。また、害虫防除のみならず、天敵製剤の放飼タイミングを図るのにも役立ちますから、害虫侵入防止用ネットを張ったり、粘着シートを設置したりするのも効果的です。

害虫被害に悩まされている場合には、地域の普及指導センターやJAなど、専門知識を持つ機関の支援・協力を得るのもおすすめです。

最後に、天敵製剤を「放つだけ」にはせず、作物の観察とともに、天敵と害虫の動向も観察し、害虫防除のために天敵を「育てる」感覚を持つことも大切なのではないかと考えます。

 

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