農産物は個人で輸出できる?やり方、リスク、税金等は?

農産物は個人で輸出できる?やり方、リスク、税金等は?

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昨今、日米間で協議されているFTAの問題など、農作物の輸出入についての話題が注目を集めています。

東日本大震災があった年には、原発事故の影響で風評被害が起き、食品の輸出量が落ち込んだ日本ですが、円安や世界的に和食がブームとなった背景から、徐々に回復傾向にあります。そのような背景から、海外に日本の農作物を輸出することについて興味関心を抱いている農業従事者もいることでしょう。

また「6次産業化」の推進もあり、自身で栽培した農作物を加工し販売することが決して珍しいことではないように思えます。そこで本記事では、農産物を個人で輸出できるのか、その方法や考えられるリスクなどについてご紹介していきます。

 

輸出の流れについて

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まずは輸出の大まかな流れについてご紹介します。
なお「個人で輸出できるのか」という点に関する回答は「可能」です。ただし一般的には日本の商社を介した取引か、現地の専門業者と取引を行うことになりますし、「検疫」や「通関」といった輸出入ならではの手続きが必要となります。そのため、輸出の手続きまで手が回らない場合には、専門業者に代行してもらうなどの方法をおすすめします。ただし、一連の流れについて頭に入れておいたほうが理解は深まりますよ!

<例:食品輸出手続き>

1,事業パートナーと商談し、契約を結ぶ※
2,輸出港を決定する
3,輸出向商品の手配し、輸出書類を作成する
4,港へ搬入
5,国内輸出検疫・通関
6,仕向地での検疫・通関
7,配送

※商談前に、徹底した市場調査や輸出先の国の検疫条件、関税などの確認を行うこと

輸出のルートには、商社や貿易会社を通じて行う「間接輸出」と、契約から検疫、通関などの手続きも自分で行う「直接輸出」が挙げられます。が、直接輸出を行う場合には、輸出入に関する専門的な知識や言葉について理解していなければなりません。「直接輸出に挑戦したい!」という人は、

・貿易に関するセミナーへの参加
・貿易に関する専門家からのアドバイスを受ける
・輸出実務に特化した担当者を用意する

などをおすすめします。JETRO(日本貿易振興機構)では輸出に関する相談を受け付けていますから、輸出について疑問点がある場合には、「海外コーディネーターによる輸出支援相談サービス」をチェックしてみてくださいね。

<検疫と通関>

先で輸出の手続きについてご紹介しましたが、国内の流通の流れと全く違うわけではありません。国内とは違い、「検疫」と「通関」があるだけです。

「検疫」は、国外からの病原菌、害虫の侵入を防ぐために行われる検査です。検疫は徹底して行われます。まず輸出前に、国内で検疫が行われます。ここで合格した輸出物には合格証明書が発行されます。そして輸出先でその国の検疫が行われます。ここで不合格となった場合には、積荷はその場で廃棄されるか送り返されます。

「通関」は税関に通すことを指します。税関を通すためには申請書や手数料が必要となり、手続きが必須となります。相手国に輸出品が到着した場合も税関を通しますが、この際「関税」が発生します。関税を設けている国にとって、関税の目的は「国内産業を守るため」です。輸入品に関税をかけることで、国内商品と、それよりも安い外国産の商品との価格差を広げないようにしています。

<価格、費用面>

専門的な知識や言葉さえクリアすれば、そこまでハードルが高くないように感じる「輸出」ですが、一連の流れを見ていただけると勘付く方もいるかと思います。輸出には手間と費用がかかるんですよね。検疫や関税、また流通させるために必要な費用などが発生するため、小売価格は上がってしまいます。ただ日本の商品は世界的に、「美味しい」「安全」などの評価もあるからか、「日本産は値段が高いもの」という印象を与えていると言えます。輸出にかかる手間と費用に頭を悩ませないためには、高品質・高価格という世界的なイメージを裏切らない商品力も必要と言えそうです。

 

 

一番シンプルな個人輸出の方法!?

ここで紹介するシンプルな個人輸出の方法は、決して大規模ではありません。
しかし「少量多品目栽培」や小さな区画で必要十分な取引先と農作物のやりとりを行なっている人にとっては、興味深い輸出方法かもしれません。
その方法とはEMS(国際宅配便サービス)を活用した方法です。郵便局から発送されるこのサービスを使えば、個人であっても、世界中の相手とやりとりを行うことができます。ただしEMSで送ることができる食品には、

・発送が完全に禁止されているもの
・一定の基準を満たすと発送できるもの

がありますから、事前にその農作物がその国に送ることができるのかを確認する必要はあります。確認する場合には「植物検疫早見表」を確認しましょう。なお一連の流れとしては、

1,植物防疫所で「植物検査」について申し込む
2,検疫所にて検査を受ける
3,「植物検疫証明書」の交付を受ける
4,交付された証明書をもって、クールEMS対応の郵便局にて発送

 

 

輸出の際の税金について

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先でも紹介しましたが、国内の流通とは違い「検疫」と「通関」の手続きが生じるのが輸出の特徴です。「通関」手続きの際、生じる関税ですが、関税の目的は「国内産業を守るため」。輸入品に関税をかけることで、国内商品とそれよりも安い外国産の商品との価格差を広げないようにしています。これは原則的に「商品を輸入する人が支払う税金」のため、輸出者に発生するものではありません。農作物を輸出する場合には、税関に対して「〇〇(農作物の種類)を〇〇(輸出国名)へ輸出します」という申告でOKということです。
ただし、輸出者側が関税を支払うことになる場合もあります。インターコムズ(貿易条件)を取り決める際、DDP(関税持ち込み渡し)と呼ばれる条件の場合には、費用の大半を輸出者が負担することになります。インコタームズの条件には、

・船賃はどちらが負担するのか
・海上保険の手配はどちらが行うのか
・どこで商品引き渡しを行うのか
・どこまでを輸出者の責任範囲とするのか
・関税や消費税はどうするのか

といったことが挙げられますが、DDPという条件の場合には、通関費用、関税、商品引き渡し場所までの輸送費などを輸出側が負担することとなります。

そのため税金に関しては、基本的には発生しないものの、支払う場合もあることを忘れないようにしましょう。

 

 

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