【農業用ドローンの基礎知識】できること・できないことを正しく知る

【農業用ドローンの基礎知識】できること・できないことを正しく知る

近年、農業現場では「農業用ドローン」の活用が注目されています。人手不足が深刻化する中、農薬や肥料の散布、生育状況の把握などを効率的にこなす農業用ドローンは、これからのスマート農業を支える上で重要なツールといえます。

そこで本記事では、農業用ドローンでできること・できないことを整理し、導入に向けて知っておきたい基礎知識についてご紹介していきます。

 

 

農業用ドローンでできること

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農薬・肥料の空中散布

農業用ドローンは、農薬や液体肥料の散布に最適です。農林水産省によると、2023年度のドローン散布面積は全国でおよそ100万ha規模に達したとされています(農林水産省や各自治体の普及資料による)。

散布性能としては、機種や条件によって差はあるものの、1回のフライトで散布可能な面積は1時間あたり6〜16haとされています。

北海道や関東などで行われた追肥散布との組み合わせ実証では、収量や品質の向上が報告される事例もあります。

農業用ドローンによる農薬・肥料の空中散布に対応する作物は水稲、麦、大豆、茶、キャベツ、果樹など多岐にわたります。ただし、使用農薬の登録内容に依存する点や、農薬散布には農林水産省登録のドローン対応農薬を使用する必要がある、という点に注意が必要です。

播種

ドローンの大型化により積載量が増えたこと、また自動航行等の機能の向上により、水稲直播など、ドローンによる播種も行われています。ドローンの利用は育苗や他植作業の省力化につながります。

受粉

播種では大型化したドローンが活用される一方、受粉には小型ドローンが活躍しています。

受粉作業は蜂を利用したものや人工授粉などが主流となっていますが、近年の気候変動の影響で高温になると蜂の活動量が下がり受粉が行われなかったり、人手不足などの課題があります。

そこで登場するのが小型ドローンです。受粉可能な花を特定する小型ドローンと振動によって受粉を促すドローンによって、媒介昆虫や人が介することなく受粉を行うことができます。

ただし、現時点において受粉ドローンは大学・研究機関での実証報告はあるものの、作物・ハウス条件下での実験的成功報告が中心となっており、広範な実装・標準化は未到達です。とはいえ、今後期待が高まる技術といえます。

作物の生育モニタリング

ドローンに搭載されたカメラやセンサー(NDVIセンサー)を使えば、葉色のムラ、水分不足傾向、病害初期の兆候を早期に検出でき、圃場全体の生育状態を可視化できます。

農産物の運搬

物流分野におけるドローンの利用は、技術やサービスの開発・実証の最中ではありますが、省力化の実現に期待が高まっています。

 

 

農業用ドローンでできないこと

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飛行は法令で制限されている

ドローンは、農業目的であっても「航空法」や「小型無人機飛行禁止法」により多くの制限を受けます。

許可・承認が必要な飛行例には以下のものがあげられます。

  • 空港周辺、緊急用務空域
  • 高度150 m以上の飛行
  • 人口集中地区での飛行
  • 夜間や目視外飛行

違反に対しては、1年以下の懲役または50万円以下の罰金等の罰則が規定されています。

また、農薬散布についても、農薬取締法に基づき、登録薬剤の正しい使用と飛散防止対策が義務付けられています。

完全自動での圃場管理が難しい

自動航行技術は進歩しているものの、以下のような理由で完全自動化は難しいのが現状です。

  • 風や天候変動により飛行が中断されやすい
  • バッテリー切れによる途中帰還や作業中断
  • 地形や障害物が多い現場では誤作動のリスクがある

そのため、安全に運用するには、現地オペレーターの判断や操作能力が不可欠です。

 

 

農業用ドローンを導入する際の注意点

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農業用ドローンは、農作業の省力化や効率化に効果的なツールです。ただし、法令遵守や安全運用のための準備を怠ると、思わぬリスクを伴います。周囲への事前説明や飛行時の立ち入り規制など、安全対策を徹底してください。また、ドローンの墜落事故や薬剤誤散布のリスクに備え、対人・対物保険への加入が推奨されています。

ドローン活用による成果と安全性を両立させるためには、ドローンを使用する目的(農薬散布や生育モニタリングなど)を定め、その目的に応じた機体・機能・運用体制を構築することが大切です。

関連記事:農業用ドローンを導入するまでの流れ。機体登録を忘れずに!

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