農業用ドローンの用途は散布、センシングだけじゃない!ドローンで受粉をすすめる!?

農業用ドローンの用途は散布、センシングだけじゃない!ドローンで受粉をすすめる!?

農業用ドローンの活用事例として農薬や肥料の散布、圃場センシングなどがよく挙げられますが、農業用ドローンにできることはそれだけではありません。

本記事では農薬・肥料散布、圃場センシング以外の活用事例として、受粉や鳥獣害対策についてご紹介していきます。

 

 

ドローンで受粉をすすめる最新研究について

農業用ドローンの用途は散布、センシングだけじゃない!ドローンで受粉をすすめる!?|画像1

 

2022年7月20日の日本経済新聞の記事には、日本工業大学基幹工学部電子通信工学科の「無線伝送メディア研究室」が開発に取り組む農業用ドローンについて取り上げられています。開発が進められている農業用ドローンの目的は受粉です。

この研究室は、畑を飛行し、受粉が必要な花を見つける「探索用」と、花に触れて受粉をすすめる「受粉用」のシステム開発を進めています。

探索ドローンは人工知能(AI)を搭載しており、それにより花の受粉期を見極めます。受粉が必要な花の情報はWi-Fiを通じて受粉用ドローンに伝えられます。振動子を搭載した受粉用ドローンは、振動子を震わせながら花に触れ、受粉をすすめます。

現時点では、人の手による作業効率との違いはほとんどないといわれており、そのうえドローン導入にかかる費用は花粉交配用ミツバチのおよそ10倍です。ですが、養蜂家の高齢化や天候不順による花粉交配用ミツバチの供給が不安定にあるという背景から、高齢化や人手不足などの課題の解決が期待されています。

受粉を目的としたドローンには、農薬や肥料を散布するように、花粉を液体に溶かして散布するものも挙げられます。

リンゴやナシなどの果樹は自家不和合性(雌雄同株の植物で、自家受粉では受精しない性質|出典元:小学館 デジタル大辞泉)のため、ほかの品種の花粉で受粉を行う必要があり、ミツバチなどを利用した虫媒受粉や人の手による人工受粉が行われます。しかし虫媒受粉の場合は昆虫の活動が天候に左右されてしまうこと、人工授粉の場合は果樹の背丈が高く高所作業の危険性があることや中心花1つ1つに花粉をつける必要があるため作業負担がかかることなどがデメリットとして挙げられます。

ドローンを活用して、農薬を散布するように液体に溶かした花粉を散布することで、作業負担の軽減が期待されています。

ドローンメーカーである東光鉄工株式会社(以下、東光鉄工)と青森県立名久井農業高等学校(以下、名久井農業高校)が、ドローン散布による受粉作業について共同で実験を行っています。2017年5月に初めて行われた実証実験では、ドローンと手作業(ハンドスプレーで散布)で作業時間(1.3アールあたり)と結実率を比較したところ、作業時間はドローンが8分、手作業が3人で65分でしたが、結実率はドローンが40%、手作業が61.6%という結果となりました。

ドローンの結実率が低かった理由には、花粉が粘土状になりノズルの目詰まりを起こしたことや、樹木全体にまんべんなく散布できなかったこと(樹木の中や下部の結実が悪かった)が挙げられています。

しかし東光鉄工と名久井農業高校は、目詰まりが起きないようノズルの吐出口の口径を改良したり、効率的な受粉のためにノズルの向きを調整して吐出角度を変えたり、花粉濃度や受粉を促進するホウ素を配合するなどして、受粉効率をあげています。

農林⽔産省農産局技術普及課の「令和3年度 農業分野におけるドローンの活⽤状況」の資料にも、ナシの溶液受粉の事例が掲載されており、株式会社アグリシップと新潟県燕市の事例によると、令和2年度の着果率は約9割という高い結果が出ています。

 

 

農業用ドローンで鳥獣害対策

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農業用ドローンを使った鳥獣害対策も注目です。

鳥獣対策におけるドローンの役割には、圃場センシングのように搭載されたカメラなどで野生鳥獣を監視や生態調査を行うことが挙げられますが、追い払いや捕獲支援も挙げられます。

野生鳥獣はドローンの飛行する音が近づいてくることやドローンの飛行そのものに警戒心を抱くため、ドローンの飛行そのものが野生鳥獣を追い払うのに役立ちます。追い払いの効果を高めるため、ライトや音響装置などを搭載したドローンもあります。

農林水産省が公開している「スマート農業技術カタログ」にて、イームズロボティクス株式会社の「イノシシ追払いドローン」の技術が公開されています。今後、無人で自律飛行できるドローンにAIで画像認証させ、野生鳥獣を認識して何度も接近することで追い払い効果を高める実験が行われるのだとか。

九州農政局のホームページには、ドローンを活用した鳥獣対策の事例が公開されています。

鳥獣対策:九州農政局

 

 

農林水産省が主なメーカーと連携サービスを紹介

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本記事では受粉と鳥獣害対策に活用される農業用ドローンについて紹介しましたが、農業用ドローンの用途は多岐にわたります。

農林水産省では農業用ドローンの主なメーカーと連携サービスについて情報を公開しています。どのようなドローンがあるのか、価格帯や性能にはどのような違いがあるのかなど気になる方はぜひチェックしてみてください。

農業用ドローン:農林水産省

 

参考文献

  1. 日本工業大学 基幹工学部 ドローンで受粉すすめる
  2. 昆虫や人の代わりにリンゴの受粉をドローンが担う、新たな活用
  3. ドローンによる鳥獣・害獣対策について | DRONE PILOT AGENCY株式会社
  4. 技術(機械)名:ドローンによる害獣追い払い
  5. 農業分野におけるドローンの 現状と今後の展望
  6. 令和3年度 農業分野におけるドローン の活⽤状況

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