鳥害獣対策トリ編【後編】。農作物に害を及ぼす代表的な鳥類スズメ、ヒヨドリ、カラスについて

鳥害獣対策トリ編【後編】。農作物に害を及ぼす代表的な鳥類スズメ、ヒヨドリ、カラスについて

鳥類へのよくある対策や防鳥網を使用する際の注意点については前編にて。

後編では、農作物に被害を及ぼす代表的な鳥類であるスズメ、ヒヨドリ、カラスそれぞれの特徴や対策についてご紹介していきます。

 

 

スズメについて

鳥害獣対策トリ編【後編】。農作物に害を及ぼす代表的な鳥類スズメ、ヒヨドリ、カラスについて|画像1

 

スズメは主に種子食で、イネ科、タデ科などの小粒状の乾いた種子を好んで食べます。春から夏にかけては小型の昆虫など、動物食も増えます。

スズメの食害の特徴は籾殻が残る点です。スズメは、ハトやカラスと違い、籾殻を向いて食べます。水田の近くにスズメの退避場所や休息場所となる人家や電線、樹木などがあると、被害が大きくなる傾向があります。また早生の品種が周辺の水田よりも早く登熟すると、その水田にスズメが集中してしまい、大きな被害を出すこともあります。

スズメの対策

基本は防鳥網です

20mm目以下の防鳥網を利用します。絶対に入られたくない場合には、18mm目以下がおすすめです。というのも、「20mm目以下」と表示されたものを実際に測ると20mmより少し大きかったり、使っているうちに網目が広がったりすることがあるからです。例えば山口恭弘、笠原里恵、百瀬浩『スズメの通過できない網目サイズと穴掘りによる侵入行動』(2015 年、 日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌51 巻 4 号 p. 157-163)によると、スズメは21.9mm×21.9mmの網目を体をよじって通り抜けたとあります。

スズメは地面と網の間にできたわずかな隙間から出入りすることがあります。隙間がないように見えても、スズメは頭を差し込んで網をこじ開けたり、くちばしで地面に穴を開けて侵入することがあります。

上記のようなスズメの行動を阻止するため、防鳥網を設置する際は、

  • 網を外側に長く伸ばして侵入しにくくする
  • 地際を支柱などで固定して隙間ができないようにする

のがおすすめです。

またスズメの退避場所や休息場所のない環境を作る、播種時期や登熟期が揃うように播種するなどの対策も効果的です。

 

 

ヒヨドリについて

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ヒヨドリの主な食物は、樹木・草の果実、花や蜜、昆虫です。冬には常緑樹の葉や雑草の葉なども食べます。

北日本や高標高地で繁殖したヒヨドリは越冬のために渡りをしますが、関東以南や低標高地の個体は渡りをしません。季節的な移動を行うことが多い鳥類の「渡り区分」において、ヒヨドリは「留鳥」「漂鳥」、すなわち、基本的には季節的な移動をしない、日本の中で季節的な移動を行う鳥として区分されています。

渡りをしない個体の多い地域の個体数は10月から4月にかけて増加します。この時期は食物の乏しい時期にあたり、農作物への被害が増えることになります。主に果樹や露地野菜に被害が生じます。

ヒヨドリの対策

基本は防鳥網です。

30mm目以下の防鳥網を利用します。ただし、ヒヨドリが防鳥網自体を気にしないことを頭に入れておく必要があります。ヒヨドリが防鳥網の上に乗った時に網がたわんで作物と接したり、網と果樹の距離が近かったりすると、ヒヨドリは網越しに作物を食べてしまいます。

防鳥網の隙間から侵入されないよう、隙間のないよう設置するのはもちろんのこと、防鳥網と作物の距離を十分離すことが重要になります

果樹であれば、前編でご紹介した農研機構が開発した「らくらく設置」の方法で設置するのがおすすめです。畑作物の場合は高さがあまりないので、「らくらく設置」で使用するトンネル栽培用の弾性ポールだけで枠組を作り、網を張るのがおすすめです。

防鳥網の簡易設置マニュアル

ヒヨドリに狙われやすいカンキツ類には、サンテという布製の袋を果実に1個ずつ被せるのも効果的です。

サンテ® 柑橘用|東洋殖産株式会社|TORAY

 

 

カラスについて

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カラスは雑食性でなんでも食べます。自然の木の実や昆虫はもちろん、生ゴミでは油分の多いもの、タンパク質、甘いものを好みます。農作物への被害は広く、

  • 果実全般(ブドウ、ナシ、リンゴ、ミカンなど)
  • 果菜類(トマト、スイカ、トウモロコシなど)

などが挙げられます。キュウリやダイコンといった「甘くない」野菜も被害に遭うことがあります。

カラスの対策

基本は防鳥網です。

75mm目以下の防鳥網を利用します。

カラスの場合は、テグスなど糸を張る対策も有効です。視覚や記憶力のいいカラスの特徴を逆手にとった対策です。カラスは警戒心が高く、羽が傷つくのを嫌がります。テグスのようなよく見えないものに引っかかった時の痛みと、それに対する警戒心により効果が得られます。テグスや糸が目にはっきり見える色だと避けられてしまうので、透明や黒っぽい色など、人にも見えづらいような色の糸を使うのが効果的です。

2012年、農研機構は徳島県と共同で「くぐれんテグス君」というカラス対策技術を開発しました。これは圃場周辺に1m間隔でポールを設置し、側面に防鳥ネットを、上部にテグスを張る方法です。

そして2022年2月、「くぐれんテグス君」の改良版として「くぐれんテグスちゃん」が開発されました。「くぐれんテグスちゃん」は側面に張る防鳥ネットの代わりにテグスを張ります。「くぐれんテグス君」では、防鳥ネットが強風にあおられてしまうことや設置に脚立が必要となり、作業中の落下の危険性などが課題として挙げられていました。「くぐれんテグスちゃん」はこれらの課題を解消した設置方法です。

設置方法はYouTubeでも公開されています。動画による解説はとてもわかりやすいので、興味がある方はぜひ見てみてください。

脚立を使わず簡単・安全に設置できる果樹園のカラス対策「くぐれんテグス ちゃん」設置手順動画 – YouTube

 

参考文献

  1. 江口祐輔『決定版 農作物を守る鳥獣害対策: 動物の行動から考える』(2018年11月、誠文堂新光社)
  2. 山口恭弘、笠原里恵、百瀬浩『スズメの通過できない網目サイズと穴掘りによる侵入行動』(2015 年、 日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌51 巻 4 号 p. 157-163)
  3. ヒヨドリ|日本の鳥百科|サントリーの愛鳥活動
  4. カラス対策の手引き – 長崎県
  5. 「カラス避け」釣り糸と弾性ポールで 安い、強い、設置も簡単 農研機構(日本農業新聞) – Yahoo!ニュース

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