乾田直播とそのメリット・デメリットについて

乾田直播とそのメリット・デメリットについて

乾田直播(かんでんちょくは、または、かんでんちょくはん)とは、水を入れていない乾いた状態の田んぼに直接、水稲の種もみをまいて育てる栽培方法です。

一般的な移植栽培では、育苗や田植え、さらには代かきなどの作業が必要になりますが、乾田直播ではそれらの工程を省くことができます。そのため、省力化や作業時間の短縮が可能となり、労働力不足が深刻な地域や大規模経営体から注目を集めています。

 

 

乾田直播の基本

乾田直播とそのメリット・デメリットについて|画像1

 

乾田直播の作業手順は以下の通りです。

  1. まず乾いた田んぼを耕す(「耕起」から始める)
  2. 除草剤の散布
  3. 種もみの播種
  4. その後、苗がある程度まで生長し根づいた段階で田んぼに水を入れる

4.以降は水田の状態にして栽培を継続し、通常の水稲管理と同様の方法で生育を進めていきます。

なお、乾田直播は水稲の収穫後に畑作(麦や大豆など)への転換がしやすいといった点も特徴です。

 

 

メリット・デメリット

乾田直播とそのメリット・デメリットについて|画像2

 

メリット

まず水を張らない乾いた状態の田んぼに直接種もみをまく技術のため、省力化・効率化に優れています。畑状態での耕起作業は水田状態よりも効率的で作業がはかどるため、面積が広いほ場ではとりわけ利点が大きくなります。人手不足への対応策として注目を集める乾田直播は、特に大規模農業経営に適しています。

また、乾田直播は移植栽培と作期をずらすことができるため、農作業のピークを分散する効果があるほか、収穫時期の分散による異常気象リスクの回避が期待されています。

前述した通り、畑作への転換がしやすい点もメリットです。復田のための機械体系にも対応しやすいとされています。

デメリット

一方で、乾田直播にはいくつかの注意すべき欠点もあります。

まず、雑草害について。代かきによる抑草効果が期待できないため、除草剤の適切な使用が必須であり、薬剤が効かない場合には雑草害が深刻化する恐れがあります。

また乾田直播は水持ちの良い土壌が前提となっており、砂質土壌や漏水の多い水田では適さないこともあります。こうした場合は湛水直播など他の技術への転換が必要です。

さらに、種まきから苗の活着までの間に雨が降ると発芽や初期成育に悪影響を与えるため、気象条件によっては導入が難しい地域もあります。実際、比較的雨の少ない瀬戸内海地域以外では普及が進みにくい現状があります。

 

 

乾田直播を成功させるために

乾田直播とそのメリット・デメリットについて|画像3

 

まず、播種前のほ場整備が最も重要です。田面に凹凸があると水深が安定せず生育ムラが起こりやすいため、播種床を均平に整える作業を適切に行う必要があります。

また乾田直播は移植栽培とは水の使用時期が異なるため、水の流入や漏水を防ぐために畦塗り等を徹底する必要があります。

乾田直播栽培の日本全体での導入率はまだ低く、水稲作付面積に対して1%程度にとどまっており、県ごとに導入の進捗にばらつきがあるのが現状です。

とはいえ、北海道岩見沢市にある有限会社新田農場が2017年から水稲栽培をすべて乾田直播に切り替え、小麦や大豆など多様な畑作物との輪作を実践していたり、復興支援で導入された仙台平野沿岸部でも、生産コストを大きく抑えつつ安定的な収穫が可能であることが実証されています。

省力・低コストを実現できる乾田直播の導入にあたっては地域やほ場条件、経営体制に応じた綿密な準備と運用が必要不可欠となりますが、経営の効率化と安定に寄与する乾田直播栽培の今後の広がりが期待されます。

 

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