ナノバブルが土壌に与える効果とは。ナノバブル活用に期待されること。

ナノバブルが土壌に与える効果とは。ナノバブル活用に期待されること。

近年、農業分野において、環境負荷低減型農業などと関連する言葉として「ナノバブル」の注目が高まっています。本記事では、そもそもナノバブルとは何かを整理し、土壌にどのような影響を与えるのかについて解説していきます。

 

 

そもそもナノバブルとは

ナノバブルが土壌に与える効果とは。ナノバブル活用に期待されること。|画像1

※画像はイメージです。

 

農業分野で耳にする「ナノバブル」とは、簡潔にいえば、とても小さな気泡を水の中に含ませる技術のことです。その気泡は直径が約1マイクロメートル(1μm)未満、数十〜数百ナノメートル(nm)程度の微細なものです。

なお、本記事では表記を「ナノバブル」に統一しますが、学術的・標準的には国際標準化(ISO)に基づき、「ファインバブル」という総称に統一化されています。また、そのうち直径1μm以下のものがウルトラファインバブル(UFB)、1〜100μmのものがマイクロバブルと呼ばれています。本記事のナノバブルは、ウルトラファインバブルを指している、と考えるとわかりやすいです。

ナノバブルの特徴をわかりやすくいうと、通常の気泡、普通の泡はすぐ水面に上がって消えてしまいますが、非常に小さな泡であるナノバブルは長期間水中に存在できるという特性があります。なお、余談ですが、1〜100μmの泡を含む水(上記で示すマイクロバブル)は白っぽく見える一方、1μm以下のもの(UFB)は可視光をほとんど散乱せず、見た目は透明な水に近いとされています。

気泡が小さいほど、同じ体積でも水と接する表面積が大きくなります。その結果、気体と水の接点が増えるため、気体が水に溶けやすくなる、物質の移動が起きやすくなる、といった効果が期待されています。

水耕栽培におけるナノバブル

たとえば、施設栽培や水耕栽培では、溶存酸素濃度の向上が根の健全性や生育促進につながると報告されていることから、酸素を含んだナノバブルが根域への酸素供給を高める技術として注目されています。

先述した通り、ナノバブルは水中で長く留まるため、溶存酸素を効率よく保持できます。一般的な曝気(水を空気にさらし、液体に空気を供給すること、エアレーション)では酸素はすぐに大気中へ放出されますが、ナノバブルの場合、気泡自体が水中に留まり、酸素供給が持続します。これにより、根圏の酸素不足が改善され、根腐れの抑制や根の活性向上が期待されます。

 

 

ナノバブルが土壌に与える影響

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ナノバブルの活用は水耕栽培だけでなく、土耕栽培におけるかん水にも広がりつつあります。ナノバブルは土壌に対し、物理性・化学性・生物性の三側面に影響を及ぼす可能性が示唆されています。

物理性への影響

近年の学術論文では、ナノバブル水を施用することで土壌の団粒構造の安定性が向上する可能性が報告されています。また、土壌硬度の低減が確認された事例もあり、根の伸長がしやすい環境づくりに寄与する可能性があります。これは、ナノバブルが水の表面張力や浸透性に影響を与え、土壌中への水の分布や保持状態を変化させるためと考えられています。

化学性への影響

酸素を含むナノバブルを用いた場合、水耕栽培に活用される場合と同様、根域の溶存酸素濃度が高まるとされ、土壌中の還元状態(酸欠状態)の改善が期待されます。過湿条件では土壌が還元的環境になりやすく、有機物の分解が停滞したり、有害物質が生成されたりといった問題が生じますが、酸素供給が改善されることで、酸素が存在する環境下での微生物による有機物の分解が促進される可能性があります。

土壌微生物相への影響

土壌中の微生物相は酸素条件に大きく左右されます。酸素を含むナノバブルを施用することで、好気性微生物(酸素を利用して呼吸しながら有機物を分解するタイプの微生物)の活性が高まり、硝化作用や有機物の分解が促進される可能性が指摘されています。

土耕栽培で期待されている効果

土耕栽培でナノバブルが注目されているのは、灌水した水に含まれる超微細な泡が、根圏の酸素状態や水のふるまいに影響し、根の働きを助ける可能性があるためです。ナノバブルのブルーベリーへの影響を調べた研究によると、ナノバブル水を灌水することで土壌の溶存酸素濃度が高く維持されることが先行研究として紹介されており、実際に細根量の増加が示唆されています。

また、水稲のポット試験では、土壌の栄養ストレス条件が強いときほど効果が大きく出る可能性が報告されています。ナノバブルは、作物が育つにはやや不利な条件にある圃場での生育を下支えする技術として期待されている面があります。

ナノバブル活用は高温ストレスの軽減に貢献することも期待されています。

千葉県の梨園の事例によると、酸素を含むナノバブル水を用いた灌水が、高温期における樹体のストレス軽減につながる可能性が示されています。

高温期は、土壌温度の上昇により根の呼吸活動が活発になり、酸素要求量が増加します。一方で、土壌中の溶存酸素は不足しやすく、根域が低酸素状態になると、養分吸収の効率が低下し、樹勢の衰えや生理障害が起こりやすくなります。この事例では、酸素を含むナノバブル水を点滴灌水、葉面散布に活用したことで、根域に持続的に酸素が供給され、養分吸収(特に窒素やカルシウムなど)が安定した可能性が示唆されています。

 

 

ナノバブル活用の課題・注意点

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これまで紹介したように、水耕栽培・土耕栽培ともにナノバブル活用には期待できる効果が多々ありますが、ナノバブルの活用と「必ず作物がよく育つ」がイコールになるわけではありません。 ナノバブルによる効果が見られたものもありますが、効果の出方は作物や栽培方法、使う気体の種類、濃度、水質などで変わります。たとえば酸素を含んだナノバブル水の研究において、コマツナで葉数や草丈の改善がみられた一方で、発芽には効果がみられなかったという報告があります。ナノバブルは、万能な資材ではなく、条件が合えば役立つ可能性がある技術として理解するのが正確です。

そのほか、

  • 長期連用時の影響
  • 微生物群集への影響
  • 導入コスト

などの課題も残ります。

ナノバブルによる効果は作物や土壌条件に依存するため、科学的検証と現場適応の両立が不可欠です。科学的エビデンスの蓄積はまだまだ途上段階なナノバブルですが、今後の研究進展と技術改良により、持続可能な農業を支える一技術として期待が高まります。

 

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