農業で、ビジネスと環境保全を両立させることはできるのか

農業で、ビジネスと環境保全を両立させることはできるのか

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昨今、環境保全型農業が注目されています。
農業は私たちが生活するうえで必要な、食料を供給する重要な役割を担っています。しかし化学農薬や肥料を大量に使い生産効率をあげた弊害として、農地の土壌汚染などの問題も挙げられ、加えて食の安心・安全志向の高まりから、自然循環機能を高めた農業への取り組みが注目されているのです。

ただここで、1つの疑問が浮かびました。環境保全型の農業と、ビジネスとしての農業は果たして両立できるのでしょうか。

 

環境保全型農業の現状

日本では、1992年に環境保全型農業の考え方が導入されました。
農薬や肥料の適正使用、家畜排泄物などの有効利用などを増進する施策が行われています。
ただ、1992年以降化学肥料の需要量や化学農薬の出荷量は低減しましたが、使用量は依然として多く、取り組みが認知され広がったとは言え、循環型農業に移管した訳ではない事が伺えます。そのうえ環境保全型農業は労力がかかり、収量や品質の不安定さ、コストがかかるという面から、販売価格に満足していない農家さんも少なくないのです。

消費者の「環境保全」への関心の低さも挙げられます。平成28年農林水産省が発表した「環境保全型農業の推進について」によれば、「環境に配慮した農産物」の購入理由に「安全」という回答が最も多く、「環境保全に貢献したい」という回答は1割にも満たなかったとあります。

 

儲からなければ意味がない?!

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環境保全型農業は長い期間で見ると、とても重要なように思えるのですが、やはり生業として儲からなければ生きていけません。
日本のみならず海外においても、農業における労働者1時間あたりの付加価値は低く、労力に対しての報酬が釣り合わない現状が目につきます。「農業は儲からない」と断言する声があるのも事実です。

 

環境保全と農業経営は両立できるのか。取り組み実施例

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本当に両立事例はないのだろうかと不安になりましたが、環境保全をそのままブランド化するような方法で両立させている事例を見つけました。

たとえば新潟県の佐渡地域は、農薬や化学肥料を削減・豊かな生態系を守る・生きものが暮らしやすい水田環境を作ることを目的とした農法「生きものをはぐくむ農法」とその認証制度を、佐渡ブランドを確立するために推進しています。
環境保全を目的としながら、その活動そのものをブランドとして幅広く認知されるよう取り組んでいるのです。

JA佐渡の齋藤孝夫・経営管理委員会会長のトップアンケートには、「生き物を育て、果実を得るという一連の幸福感は何事にも代えられないものがある。
しかし、生活できる収入が得られなければならない」という農業の担い手にもしっかり寄り添った一文が示されていました。

佐渡農協が平成24年に子会社として立ち上げた株式会社JAファームは、平成27年度に単年度黒字決算見込みにまで到達しています。

また環境保全型農業をうまく利用した企業の事例もあります。「阿波ツクヨミファーム」は野菜の生産・販売、加工品の製造・販売などを手がけています。彼らのつくる農作物は化学農薬、肥料を利用せず、自然の循環を活かしてオーガニック野菜を生産・販売していますが、彼らは野菜そのものだけではなく、いわばその過程や背景もひっくるめて販売しているのです。自然環境への思いや栽培方法についてなど、様々な情報を発信することで価値を高めています。

とにかく「やってみて、発信する」が重要なのかもしれません。
有機農業の町として知られている宮崎県綾町では、農作物の生産量が追いつかないほどの売上だと言います。綾町は、昭和63年に全国初の「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定しています。ただこの頃にはまだ経済を動かすほどの農業にはなっていませんでした。

しかし2015年に“綾の魅力を100年後に伝える” 「aya100」という団体が発足します。ここから「買い手の気持ちになってつくる」を基盤に、美味しい野菜を都内レストランのシェフにつなげ、畑で獲れた野菜の背景を伝えました。取引の決定や「美味しい」という言葉が農家のモチベーションを高め、より良い野菜の生産につながっているのです。

環境保全型の農業と、ビジネスとしての農業は両立できないわけではないと考えます。
しかし現状をみる限り、そもそも「環境保全」に対する生産者・消費者の関心は未だ低いように感じます。ただ環境保全型農業の一環とも言える「有機栽培」の農作物は広く認知されはじめています。

消費者の「環境に配慮した野菜」の購入理由で最も多かった回答は「安全」です。環境保全を大々的なテーマにすると、関心の低さからビジネスとして成り立たなくなる可能性も感じますが、安全・安心志向であれば興味を抱く人もぐっと増えるはずです。

環境保全に興味を抱く人も0ではないでしょうから、結果的に環境保全型農業の取り組みにつながるよう、消費者への安心・安全な野菜の提供をメインにすれば両立しやすくなるのではないでしょうか。
ECサイトなどインターネットを介して販売するなど、農作物の販売方法も1つではありませんから、現代だからこそできる発想で環境保全と経営を両立させてみませんか。

 

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