酒蔵・ワイナリー・そして農の心

酒蔵・ワイナリー・そして農の心

6月に長野原の浅間酒造と勝沼町の丸藤ワイナリーに行く機会があった。浅間酒造には、耕作放棄地を活用して酒米を生産し「八ツ場の風」という酒を造っているとの話が、また、勝沼の丸藤ワイナリーには、オーナーの後輩にあたる若い友人たちが中心となり、『ルバイヤートを楽しみながらワイナリーと消費者を繋ぐ交流の場』を作るとの話があったからだ。

浅間酒造には吾妻線の長野原草津口からタクシーで向かった。タクシーは吾妻川を渡り右折し、しばらく進むと、右側に大きなドライブインが目に入った。浅間酒造観光センターだ。ここで、社長の櫻井武氏に会い「八ツ場の風」の話を聞いた。

武社長は、―酒作りとしてはワインの造り手が葡萄から育てるように、私たちの酒蔵も米から栽培することで“真の地酒”を醸したい。そんな思いから、平成23年に酒米の栽培をスタートしました。さまざまな品種から選んだ「改良信交」は、長野原の土地によく馴染む酒米ですーと語り、この酒米を栽培している中山間の田んぼを案内してくれた。現在、作付している田んぼは、数年間、耕作放棄のままで雑草が生い茂り土地も固くなっていた土地だった。
そこに、重機をいれ、もとの田んぼに戻すところから始めたという。

あぜ道を一緒に歩いていると、武社長は、雑草が生い茂る田んぼを指して、
「この田圃は、わずか2年間で草茫々ですよ。この状態からコメをつくるとなると大変ですよ」と教えてくれた。

耕作放棄地になった田んぼでコメつくりを再開するのは本当に大変なことだと痛感し、もし、中山間を含めた地方でのコメ作りが失くなったら、田んぼに雑草が生い茂るだけでなく、日本人のこころの原風景が失われしまうことを肌で感じた。

翌週の土曜日は、9時に八王子駅に集合し、若い友人の車で勝沼に向かった。この友人たちとは、国内では北海道十勝や九州高千穂に、海外ではベトナムのハロン湾、リオのカーニバルやニューヨークに行った仲間たちだ。11時過ぎに丸藤ワイナリーのオーナーの大村さんと会い、ワイナリーのベランダで、ワインを飲みながら相談した。

その席で、大村氏のワイン造りへの真摯な姿勢と、
―ワインを本当に知るならば、ワイン畑の草取りから始めなければなりませんー
という言葉に共感し、微力ながら丸藤ワイナリーの応援をしようと言うことになった。応援と言っても大きなことはできないので、若い友人たちは、オーナーを中心に「国産ワインの現状とワイン造りの原点」を仲間と共有する企画『ルバイヤートを楽しみながらワイナリーと消費者を繋ぐ交流の場を作る』企画を考えました。

オーナーがセレクトしたワイン6本セットの提供、現地での甲州ワインの仕込み見学、オーナーからのワインよもやま話などを聞くのが企画の内容です。申込み人数は30名前後、具体的な話は整理中ですが、概要は下記の通りとなりますので、興味のある人はご検討ください。

企画名:勝沼のワイン生産地、応援企画
内 容:
①丸藤葡萄酒工業株式会社、大村社長セレクト赤白6本/箱のご案内
②2022年10月頃の甲州ワイン仕込み作業体験及び見学、試飲会等々
③人数によってはバスの手配、宿泊ツアーも検討
なお、会費は20,000円/6本入り箱(送料別途)程度です。

興味のある読者がいれば、稲田の公式HP(http://www.inadasoichiro.com/)にアクセスし、HPの右上のお問い合わせに連絡してください。詳細が決まり次第連絡します。

 

【プロフィール】
稲田宗一郎(いなだ そういちろう)
千葉県生まれ。小説『夕焼け雲』が2015年内田康夫ミステリー大賞、および、小説『したたかな奴』が第15回湯河原文学賞に入選し、小説家としての活動を始める。2016年ルーラル小説『撤退田圃』、2017年ポリティカル小説『したたかな奴』を月刊誌へ連載。小説『錯覚の権力者たちー狙われた農協』、『浮島のオアシス』、『A Stairway to a Dream』、『やさしさの行方』、『防人の詩』他多数発表。2020年から「林に棲む」のエッセイを稲田宗一郎公式HP(http://www.inadasoichiro.com/)で開始する。

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